
地経学:米国の戦略転換と日本の勝機
地経学が示す2026年国際秩序の行方
地政学と並び、現代の国際関係を読み解く上で不可欠な概念が「地経学」である。これは軍事力だけでなく、経済的影響力を外交の武器とする考え方だ。国家間の力関係が経済の攻防によって大きく左右される今、2026年を見据え、変わりゆく世界情勢と日本の取るべき戦略を探る。

Q. 地経学とは何か、従来の地政学とどう異なるか?
地経学とは、経済を国家間の駆け引きや影響力行使の手段と捉える視点である。伝統的な地政学が軍事力や地理的条件に注目するのに対し、地経学は経済的威圧、制裁、輸出規制などが国際関係を形成すると考える。例えば、トランプ大統領の関税政策や中国のレアアース輸出規制などは、まさに地経学的なパワーの行使と言える。経済安全保障は自国の脆弱性を守る「防御」の側面が強いが、地経学はその攻防全体、すなわち「攻め」と「守り」両方を含む包括的な概念だ。

Q. 米中関係は「停戦状態」に向かっているが、その背景に何があるか?
2025年は、米国が中国に対し、先端半導体の一部の輸出を許可する動きを見せた。これは、米国がレアアース供給などで中国に経済的な脆弱性を握られている事実を認め、これ以上の対立を避けるため、「1年間の停戦」状態に入ろうとしている兆候だ。かつて「アメリカ・アローン」を掲げた米国が、今や自国の弱さを自覚し、同盟国との「団体戦」で中国に対抗する必要性を認識している。2026年11月のAPECまでにこの脆弱性を解消できるかが、その後の米中関係を左右するだろう。
Q. 冷え込む日中関係は今後どう推移するか?
現在の日中関係は言葉の上では厳しさを増しているが、具体的な経済的被害は限定的である。中国の対日姿勢は、日本の世論や政府の動きを注視し、国際社会で自国の立場を正当化しようとする「認知戦」の側面が強い。特に、これまで日本の防衛政策の「ブレーキ役」と見られていた公明党の連立離脱が中国の警戒感を高め、日本の安全保障政策の自由度が高まることを懸念しているためだ。中国は、日本への圧力を通じて米国がどこまで日米関係を優先するかを見極め、将来的な台湾有事の際の米国の対応を探る「テスト」を行っている可能性もある。

Q. アメリカが同盟国に協力を求める中で、日本の取るべき役割とは?
米国が単独での対応から同盟国との連携を重視する「団体戦」へと戦略を転換した今、日本には「恩を売れる」好機が訪れている。日本は2010年のレアアース輸出規制の経験から、脱中国依存の供給網構築に関するノウハウを持つ。また、ラピダスでの先端半導体開発、高度な造船技術、SMR(小型モジュール炉)の開発など、多くの分野で米国の弱点を補い、支援する能力がある。日本はこの機会を逃さず、日米関係を強化し、不可欠な同盟国としての存在感を示す戦略的な外交を展開すべきだ。
Q. 半導体とAIを巡る覇権争いはどう進展するか?
米国からの先端半導体供給により、中国のAI開発は新たな局面を迎えるだろう。これまで限られたリソースの中で効率的なAI構築を目指してきた中国が、計算能力の向上によって開発戦略を変える可能性が注目される。一方、AIの急速な進化は、ディープフェイクなどの偽情報拡散や、自律型兵器への転用といった倫理的・安全保障上の課題を突きつけている。各国でAI規制の議論が進むが、技術の進歩に追いつくのは難しく、未だ模索が続いている。兵器転用については「人間の最終判断」の必要性がコンセンサスとなりつつあるが、具体的な規制の確立は遠い。

Q. その他、2026年以降注目すべき国際トレンドには何があるか?
脱炭素政策は今後も国際社会の主要なテーマだが、欧州の脱炭素推進が中国のEV産業などを利する結果となり、自国産業保護と環境保護の間でジレンマが生じている点に注目したい。これは、各国の経済実情が環境政策の転換点となる可能性を示唆する。また、日本の宇宙開発予算が近年で倍増し約8000億円に達している。これは、民間主導の米国とは異なる、国家が主導する日本の宇宙開発の本格化を意味しており、その動向は新たな産業創出や安全保障に大きく寄与するだろう。
