2026超予測
【2026年超予測:キャリア】ホワイトカラー消滅は要時間/「とりあえずコンサル」の復活/大企業転職特需のラストイヤー
(1140)
9,949回視聴
2025年12月25日

2026年のキャリアと雇用にはどんな変化が生まれるのか?オープンワークの大澤陽樹CEOと雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏に超予測してもらった。 ▼プロフィール 海老原嗣生|雇用ジャーナリスト 大手メーカーからリクルートエイブリックに入社し、新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リ...
キャリアと雇用はどうなる?2026年の職場を予測する四つの重要トレンド
予測困難な時代、多くのビジネスパーソンは自身のキャリアと今後の雇用環境に漠然とした不安を抱いている。リモートワークの行方、AIの進化がもたらす影響、大手企業の転職事情、そしてスキルの価値変化といった喫緊の課題に対し、私たちはどのように向き合えばよいのか。OpenWork社長の大澤陽樹氏と、雇用分野のカリスマである海老原嗣生氏による対談から、2026年に向けたキャリアと雇用の未来を読み解く。デスクワーカーの働き方に焦点を当て、不確実性の時代を生き抜くための具体的な指針を探ろう。

Q. 2026年のキャリアと雇用分野において、どのような変化が予測されるのか?
2026年に向けてキャリアと雇用環境は多岐にわたり変化を遂げる。OpenWork社長の大澤氏が提示する予測は主に以下の四つだ。第一に「リモートデスマッチ」、すなわちリモートワーク求人の争奪戦が激化し、企業と労働者間のミスマッチが拡大するというものだ。第二に「AI不安」、AIによる仕事の変革が多くのキャリア不安を引き起こすが、皮肉にもその解決策として「とりあえずコンサル(トリコン)」の需要が復活する可能性がある。第三は「大手転職特需の終わり」。これまで盛んだった大手企業へのキャリア採用が減少し、転職の門戸が狭まることが予測される。そして第四の「Skills as Currency」、スキルそのものが通貨のように価値を持つ時代が来るという、現状では大穴とされる予測も含まれる。これらはデスクワーカーを中心に、これからの働き方を大きく左右するトレンドと言えるだろう。

Q. リモートワークを巡る労働者と企業間のミスマッチは今後どのように展開するのか?
リモートワークを巡る企業と労働者間のミスマッチは2026年に激化し、求人の「デスマッチ」を引き起こす見込みだ。OpenWorkのデータによれば、労働者の3〜4割がリモートワークを希望しているが、実際の企業のリモート実施率は3割を下回る状況にある。公には言わずとも、求職者の多くがリモートワークの可否を重視しており、口コミ検索においても「リモート」というキーワードが急増していることからも明らかである。
この背景には、共働き世代の増加、育児や介護といったライフイベントに伴う働き方の柔軟性への需要の高まりがある。しかし、多くの企業が出社回帰を推し進め、「毎日会社に来てしっかり働け」という画一的な方針を取るため、優秀ながらも特定の事情を抱える労働者が働く場所を失う可能性が高まる。結果として、数少ないリモートワークが可能なポジションを巡っての奪い合いが生じる構図だ。
このミスマッチ解消に向け、海老原氏は企業に対し、画一的な制度を改め、複数の働き方を選択できるようにすることを提唱する。「猛烈に働いて出世したい層」と「報酬は上がらずとも柔軟に働きたい層」で人事制度を明確に分けるべきだという。また、個人も「高成長・高報酬」か「柔軟な働き方」か、どちらを優先するかの選択を迫られることになる。高成長や高報酬を求めつつ柔軟な働き方も得られる企業は限られ、報酬水準が同程度でも柔軟性のある働き方を提示する企業に優秀な人材が集まる傾向が加速するだろう。個人は自らのキャリアに対する優先順位を明確にし、早めに行動を起こす必要が生じていると言えよう。
Q. AIへの漠然とした不安が高まる中、「とりあえずコンサル(トリコン)」は復活するのか?
AI技術の急速な発展は、多くのビジネスパーソンに漠然としたキャリア不安をもたらしている。OpenWorkの検索データでもAI関連の仕事に対するクエリが急増し、メディアがAIによる雇用の脅威を煽る一方、職場のデジタル化が遅れている現実とのギャップが、中堅層を中心に「キャリア迷子」を生み出している。IT化の遅れが退職理由となるケースも増加傾向だ。

こうした不安感の受け皿として、一度は下火になった「とりあえずコンサル(トリコン)」が2026年に復活する可能性がある。マッキンゼーやアクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームで人員削減の報道が見られる一方で、日本ではDXやAI関連の支援にビジネスを転換したコンサルティング会社が積極的に採用を続けている。特にアクセンチュア・ジャパンでは、AI関連売上が全体の4割を占めるまでになり、新社長も採用への意欲を見せる。この現状が、「AIを使った仕事をしたいが、何をすればいいか分からない」と悩む学生や若手にとって、AIスキルを学べる最前線の場としてコンサル業界を魅力的に映す要因となる。結果として、コンサル業界への志望者が増加し、一時的な「トリコン」ブームが再燃すると予測されている。
海老原氏によれば、米国ではコンサルティングファームが大量の新卒を採用し、実践を通じて育成する慣習があるという。AIの進化により、コンサルタントの単純なリサーチや資料作成などの「泥臭い作業」は効率化され、結果的にコンサル業界の労働環境が「ホワイト化」し、さらなる魅力向上につながる可能性がある。ただし、AIが代替できない「業界固有の深い専門性」や顧客との信頼関係構築といった「人間ならではの価値」を持つコンサルタントのみが生き残る時代へと移行していく。単にフレームワークを適用するだけでなく、深い業界知識に裏打ちされた戦略的な提案ができる人材が不可欠となるだろう。
Q. 長く続いた大手企業への転職特需は本当に終焉を迎えるのか?
数年にわたって続いた大手企業への転職特需は、2026年には終焉を迎えるという予測がされている。ホンダや三井物産など、かつてキャリア採用比率が大幅に増加した大手企業でも、専門職の採用枠は埋まりつつある。OpenWork社長の大澤氏は、サントリーの採用ページで多くの専門職求人が既にクローズされていることを例に挙げ、一度埋まったポストは離職率の低さから再募集されにくくなっている現状を指摘する。結果として「キャリア採用総合職」といった曖昧な求人も減少し、大手企業への門戸は急速に狭まっている。
しかし、大手企業への転職の道が完全に閉ざされるわけではない。今後、主に二つのルートが残ると考えられる。一つは「第二新卒」による特定職種の採用である。アシックスの事例のように、新卒採用で充足しなかった営業職や特定の専門職を、他社で数年経験を積んだ若手で補う動きが見られる。これは大手企業が「なんちゃって職種別採用」を進める中で、特定職種の確保が難しくなったことが背景にある。もう一つは、海老原氏が指摘するように「同一業界・同一職種の即戦力採用」だ。大手企業の低離職率をもってしても、年間2〜3%の退職者は発生するため、特に30代の脂の乗った即戦力人材の需要は存在する。しかし、こうした欠員補充は公募されにくく、転職エージェント経由での非公開求人が中心となるため、個人が独自で機会を見つけることは非常に困難になるだろう。未経験の業界への大手転職は、一層ハードルが高くなることが予測される。
Q. スキルを「通貨」と見なす「Skills as Currency」は、日本でも普及するのだろうか?
自身のスキルを貨幣のように扱い、客観的に評価し流通させる「Skills as Currency」という考え方は、古くから存在し、IBMなどの海外企業では先行して議論されてきた。職種を「プロダクトマネージャー」のような包括的な名称ではなく、「ロードマップ策定能力レベル3」「ユーザーリサーチスキル」のように具体的なスキルとレベルで定義することで、より明確な人材評価とマッチングを目指すものだ。これまで日本では、企業にぶら下がり「社内通貨」(社内政治力や人脈)が通用してきたこと、また個人のスキルを客観的に鑑定・評価するコストが高いことから、この概念はなかなか普及してこなかった。

しかし、生成AIの登場がこの状況を変える可能性がある。AIが職務経歴書などからスキルタグを自動生成できるようになり、従来高コストであったスキル鑑定のプロセスが劇的に効率化されるため、普及のハードルが下がった。企業内のタレントマネジメントシステムでも、AIを活用して社員のスキルを可視化し、社内での適切な人材配置に役立てる試みも進んでいる。
それでも、海老原氏は2026年にこの概念が本格的に普及する可能性は低いと見ている。AIはあくまで表層的なスキルや言語を分析するに過ぎず、転職の成否を左右する仕事の「構造」まで深く理解することはできないためだ。例えば、同じ「営業」という職種でも、法人か個人か、売り切りか継続的取引か、短期的なものか長期的なものかといった構造の一致こそが、異業界への転職成功の鍵を握る。しかし、この「仕事の構造化」は転職エージェントの長年の経験と暗黙知に支えられており、AIがその領域に踏み込むのは現状では難しい。さらに、日本の雇用規制や依然として存在する企業への依存体質も、個々人が自身のスキルを意識し、言語化する文化の醸成を妨げている。そのため、スキルへの意識を持つことは個人にとって重要であるものの、2026年までに日本全体で「Skills as Currency」が本格的に定着するには至らない可能性が高いと言えよう。