2026超予測
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2025年12月24日

2025年に4000万人突破が見込まれるインバウンド。この勢いは2026年も続くのかインバウンド経済をさらに盛り上げるために、どんな経営努力が求められているのか?インバウンド・地方創生をテーマに、同分野の専門家である永谷亜矢子氏と木下斉氏に超予測してもらった。 ▼プロフィール 永谷 亜矢子|立教大...
日本の観光産業と地方経済は、今、かつてない大きな変革期に直面している。長年の慣習や固定観念が通用しない新たな時代において、未来を予測し、戦略的に行動することが求められる。本稿では、今後の日本の観光と地方再生を巡る主要な変化の兆しと、それに伴う新たな主役の台頭について深く掘り下げる。


若年層(ミレニアル・Z世代)の旅行意欲は高く、84%が「来年ももっと旅行したい」と考えている。彼らは単なるモノの消費ではなく、その時期、その場所でしか体験できない「コト・トキ消費」を強く求めている。早朝の伊勢神宮参拝や旬の食材を現地で食すことなど、時間や季節に紐づく限定的な体験が、リピーター獲得の鍵となる。
しかし、一部の観光地ではオーバーツーリズムが深刻化しており、ルーヴル美術館の事例のように、敢えて価格を上げて入場者数を制限し、文化財保護と体験価値の維持を図る動きもある。日本の富士山有料化もその一例だ。安価で画一的なサービス提供ではなく、質の高い体験のために、時には「二重価格」の導入も議論すべき時期が来ていると言えるだろう。外国人観光客は新しい施設よりも、古い歴史ある建物の価値を求める傾向も明らかである。
多くの一次産業が抱える担い手不足の根本原因は「儲からない」ことである。この課題解決には、「一次産業の観光化」が有効な戦略となる。単に農産物や海産物を販売するだけでなく、それに体験を付加することで、高収益化と後継者の確保を図ることができる。
例えば、通常のいちご狩り(1人1800円程度)に、採れたてのいちごを使った「パフェ作り体験」を組み合わせると、インスタ映えも相まって5000~6000円での提供が可能となる。この僅かな工夫で単価を大きく引き上げられるのだ。また、嬉野茶の例では、茶畑での飲茶体験を提供し、地域のブランド価値を向上させた結果、都内の高級ホテルへの販路も開拓した。このように観光をマーケティングツールとして活用することで、本業の付加価値そのものを高めることができる。
さらに、北海道猿払村のホタテ漁師は、加工品を世界に輸出することで年間数千万円を稼ぎ、後継者不足とは無縁だ。これは観光に依存せずとも、高付加価値化と海外展開で収益性を高められる強力な地域産業が存在することを示す。地方創生は、それぞれの地域が持つユニークな資源の価値を見出し、収益に繋がる形で再構築していく「ディレクター」的視点が必要である。
現在の建設費と金利の高騰は、大規模な新築再開発プロジェクトを「無理ゲー」と化させている。計画段階の見直しだけでなく、着工後に想定外の追加コスト(高松のマンダリン オリエンタル誘致で90億円不足の例)が発生し、計画が頓挫するケースが続出している。この傾向は地方だけでなく、東京や仙台といった都市圏でも見られる。

日本ではバブル崩壊後、土地や建設費が安く、人手も豊富であったため「壊して建て替える」方が効率的という時代が長らく続いた。しかし、その時代は終わり、経済合理性から見ても既存建物を活かす「リノベーション」や「再生」が必然の流れとなる。世界では台湾の古い問屋街や北京の工場跡地が人気商業施設へと転換した例が15年以上前から存在し、新しいものにはない「歴史」や「物語」が価値を生むことを証明してきた。海外からの観光客も、新築の商業施設よりも、古民家を改装したカフェなど、歴史ある趣のある場所を求めている。このニーズに応えるためには、「壊して建てる」発想から「今あるものを活かす」発想へと、早期の転換が必要だ。
建設業における職人不足も深刻化しており、今後は欧州のように、個人のDIYスキルが日常生活で必須となる社会へと移行する可能性がある。専門の職人に家の修繕を依頼できるのは富裕層のみとなり、一般の消費者は自らメンテナンスを行うことで住環境を維持するようになるかもしれない。これは、建築リソースの限界を示す、社会構造の変化の一端である。
地方創生、特に観光分野において、これまでとは異なる「異業種からの参入」が活発化している。これまでの観光業が抱える課題(低所得、人材不足、古いマーケティング手法)を認識した企業が、M&Aなどを通じて新たな価値創造を目指す。
例えば、西武ホールディングスやゴールドウィンといった大手企業が、旅行業や体験ツアー企業を買収し、観光分野に乗り出している。これらの企業は、自社が持つ富裕層顧客リストを観光と結びつけ、物販だけでなく高付加価値な旅行体験を提供する。デベロッパーや鉄道会社でさえ、いまだにインバウンド需要を十分に把握できていない現状を考えると、異業種が持つ高度なマーケティング手法と顧客データを活用した事業展開は、これからの地方観光に大きな影響を与えるだろう。彼らは自社単独での旅行業登録の障壁を乗り越えるため、買収による「内製化」を戦略的に進めている。

来年、銀行法および民法の大幅改正が控えており、地方銀行の役割は大きく変わる。従来の土地などを担保とする融資から、企業の将来的な成長性や事業性を評価する融資(事業性担保融資)への転換が進む。この変化によって、地域経済は「攻め」の姿勢で融資を行う銀行が存在する地域と、「守り」の姿勢で保守的な融資に留まる銀行が存在する地域とで、盛衰が二極化する可能性が高い。
特筆すべきは、事業会社が地方銀行に出資する「逆転現象」が始まっていることである。例えば、ホテルやレストランの運営実績が豊富なPlan・Do・Seeが富山銀行に出資した事例だ。これは、運営ノウハウを持つ事業会社が、地銀が持つ地域の中小企業や優良物件のネットワークといった「資産」に目をつけ、資本提携を通じて地方再生を効率的に進める新しいモデルと言える。地銀は融資だけでなく、集客や事業戦略にまでコミットすることで、Win-Winの関係を築くことができる。
山口銀行と長門湯本温泉の再生事例も好例である。山口銀行は子会社を通じて計画策定に深く関与し、星野リゾートの誘致や共同浴場の民営化を主導、街全体の価値向上に貢献した。地域の成功には、常に積極的な地方金融機関の存在が不可欠である。さらにSBIは、オンラインバンキングシステム提供を足がかりに地方銀行への資本介入を積極的に進め、一大地銀連合の形成を画策している。これは単に資金の効率化だけでなく、地銀が持つ地域への広範な影響力(名士、メディアとの関係)を統合する壮大な戦略であり、地銀の役割そのものが大きく変容するだろう。
今後、地銀の再編・統合が進むことで、融資判断が地元の目線から、より広域のフィナンシャルグループ本社の視点で行われるようになる。これにより、地元への思いだけでは採算の合わない事業への融資が難しくなる一方、選ばれた成長地域には集中投資が行われることとなり、地域間の格差がさらに広がる可能性が高い。