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2026年 世界情勢を読み解く注目キーワード
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2025年12月22日

【Sponsored by 日本経済新聞社】 注目イシューについてラウンドテーブル形式で議論する番組「& ISSUE」。今回は「世界情勢を読み解く3つの変化 2026年のターニングポイント」をテーマに、慶應義塾大学教授 鶴岡路人さん、東京大学准教授 小泉悠さん、中央大学教授 中北浩爾さんの3名が議論...
2026年、世界と情報の未来を読み解く:ビジネスパーソン必見のQ&A
2026年に向け、世界は劇的な変化の渦中にいる。トランプ政権の動向、日本の国家安全保障戦略の改定、そしてデジタル社会における情報の扱いは、ビジネスパーソンが注視すべき重要な要素だ。混迷を深める国際情勢や加速する情報社会において、私たちは何を「見極め」、いかに「情報と向き合う」べきか。本稿では、今後の世界と日本、現代の情報環境における喫緊の課題について、専門家による洞察をQ&A形式で解説する。

Q. 2026年にトランプ政権がもたらす世界情勢の不確実性とは何か?
2026年は、再任されたトランプ大統領の政策、特に同盟関係に対する真の姿勢が明らかになる「答え合わせ」の年となろう。日米同盟やNATOといった従来の同盟国は、その動向を戦々恐々と見守る立場だ。トランプ大統領は価値観を共有する同盟国との関係よりも、ロシアや中国といった権威主義国家との二国間「ディール」を重視する傾向があるため、従来の同盟体制の根幹が揺らぐ可能性をはらむだろう。
トランプ大統領は選挙公約を着実に実行する一貫性を持つものの、その手法は同盟国にも大きな打撃を与えることがある。関税問題はその一例で、潜在的敵国よりも同盟国に厳しい対応を示す場合も少なくないため、「同盟国とそうでない国」の境界線が曖昧になることが懸念される。自由や民主主義といった普遍的価値を共有する国々との関係性さえも問い直される局面となるのだ。

現在、日米同盟やNATO各国が国防費増額のコミットメントを示すことで一時的に小康状態を保つが、これが続く保証はない。2026年の中間選挙の結果は、トランプ政権の政策遂行能力を大きく左右する要因となろう。民主党が議会の多数を占めれば、大統領の政策実行力は制限され、政権後半の失速につながる可能性もあるため、その動向を注意深く見守る必要がある。
Q. 高市政権下で改定される国家安全保障戦略「NSS 2026」のポイントは何か?
日本は、急速な国際情勢の変化に対応するため、2026年中に国家安全保障戦略(NSS)の改定を進める。NSSは日本の安全保障政策の根幹をなし、行政が政策を実行する上での重要な根拠となるため、その内容は極めて重要だ。短期間での再改定は、現在の日本を取り巻く情勢がいかに流動的であるかを如実に物語るものである。
今回の改定では、ロシア、中国、北朝鮮といった周辺国の日本に対する脅威評価、そしてこれらに対する日本自身の対処方針が主要な焦点となろう。加えて、自衛隊の将来的なあり方も議論の対象だ。特に、2022年版NSSで初めて明記された「認知領域」における安全保障、すなわち偽情報対策などが、さらに具体的にどのように強化されるかにも注目すべきである。認知領域は、外交や軍事に並ぶ新たな柱として確立されようとしている。
日本はもはや、世界情勢にただ振り回される存在ではない。主体的に自国の安全保障のビジョンを示し、世界に対して発信するべき存在なのだ。NSSの改定は、日本がどのような政策を打ち出し、世界の枠組みをどのように形作るかに直結する。したがって、この議論への積極的な関与と国民全体の意思決定が強く求められる。
Q. なぜ防衛費の増額には国民の「負担」を巡る正直な議論が不可欠なのか?
日本の防衛力強化は喫緊の課題であり、そのためには膨大な財源が必要だ。「負担なき増額」という表現は政治的に耳触りが良いが、現実的にあり得ない。政府与党が掲げる5年間で43兆円という大規模な防衛費の増額には、何らかの国民負担が必至である。政治家は増税などの選択肢も含め、この財源問題を国民に正直に語り、真摯な議論を尽くす責任があるだろう。曖昧な説明では、国民の理解は深まらない。

ドイツの事例は日本にとって示唆に富む。ウクライナ侵攻後、ドイツは国防費の大幅増額に踏み切り、GDP比2%超の目標を前倒しで達成しようとしている。これはアメリカの関与を引き止める狙いと、アメリカに頼れない状況を想定した自主防衛力強化という双方の意図が背景にある。日本もただアメリカに頼るだけでなく、自国の防衛力を主体的に整備し、国際社会での発言力を高める必要があるのだ。
防衛力強化は財源確保だけでなく、少子化が進む日本において自衛官をはじめとする人材の確保も課題となる。予算増強と並行し、優秀な人材を安定的に確保する仕組みを構築せねばならない。「負担もなく、人材も自動的に増強される」という幻想を捨て、国家の安全保障に関する全体的な議論の中で、優先順位を明確化することが求められる。国民の理解と覚悟を促す政治のリーダーシップが不可欠である。
Q. SNSとデジタルデモクラシーは、民主主義社会にどのような課題を投げかけているのか?
SNSは投票率向上や政治参加促進といったプラス面を持つが、民主主義に深刻な課題を突きつけている。フェイクニュースの拡散や過激な言説が、ポピュリスト的な勢力を台頭させ、社会の分断を加速させるのだ。特に、外国からの影響力行使や、誤情報操作のリスクは常に意識する必要がある。
ネットメディアの収益構造は、この問題に拍車をかける。コンテンツ制作者はPV(ページビュー)を稼ぐために「炎上」や扇情的なタイトル、過激な内容に走りやすい。高品質なコンテンツに対する報酬が低い現状では、真面目な記事よりも耳目を集める「炎上狙い」が最適解となり、言論空間全体の質を低下させる悪循環に陥る。この現状を社会全体で認識し、新たな解決策を模索せねばならない。
SNSを健全な民主主義の力に変えていくことは、2026年以降の重要な課題である。政治的なSNS利用は避けられないにしても、リベラルデモクラシーの持続可能性のためには、SNSを建設的な議論や熟議に活用できるよう、環境を整備する必要がある。このためには国民全体のデジタルリテラシー向上と、良質なコンテンツ制作者が正当に評価される仕組みの構築が急務である。
Q. 情報過多の時代に、信頼できる情報を得るためにビジネスパーソンは何をすべきか?
情報が洪水のように押し寄せる現代において、信頼できる情報を得るための最重要課題は、情報源の「多角化」である。特定のメディアに依存せず、意図的に複数の視点から情報を収集する姿勢が不可欠だ。これは国内メディアに留まらず、欧米やアジア諸国といった海外の報道にも目を向け、翻訳機能を活用して積極的にクロスチェックを行うことを意味する。多様な情報に触れることで、エコチェンバーに陥ることなく、バランスの取れた見識を養えるだろう。
テクノロジーの進化は、一般人も専門性の高いデータにアクセス可能にした。商業衛星画像(CAI)などの利用はその好例だ。各国政府の発表や報道内容を客観的に検証する手段が増え、このような技術を積極的に利用した情報収集と分析は、情報リテラシーに差を生むだろう。情報の正確性や多面性を評価するための、より主体的な行動が今、求められているのだ。

もう一つの重要な意識改革は、「情報はタダではない」という認識だ。インターネット普及で情報が無料で手に入る感覚が蔓延したが、新聞記者が時間と労力をかけ取材・編集する一次情報は、それに見合うコストと価値がある。質の高い情報に対価を支払う意識が、結果的に健全で信頼性の高い言論空間を維持する。無料情報のみに頼ることは、情報操作や低品質コンテンツに囲まれるリスクを高める。
情報収集において、「効率性」と「セレンディピティ(偶然の発見)」の両方を追求することが賢明だ。検索性に優れ、過去記事に容易にアクセスできる電子版を活用し、自身の興味分野を深掘りする。一方で、紙媒体の新聞には、自身の専門外や関心の薄い記事、広告に至るまで、多様な情報が「偶発的に目に入る」独自の価値がある。このランダムな情報接触は視野を広げ、新たな気づきをもたらす効果があるだろう。電子版と紙媒体を組み合わせることで、情報リテラシーはさらに高まるに違いない。