2026超予測
2026年超予測:世界の自動車マーケット
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2025年12月22日

20205年はトランプ関税などで揺れた世界の自動車マーケット。2026年はどう推移するのか?コロナ前のトレンドに戻るのか?主要市場とポテンシャル市場の動きを、フォーインの安藤久史アナリストに予測してもらった。 <ゲスト> 安藤久史|フォーイン アナリスト ソウル大学大学院修士課程修了後、共同通信 ...
世界の自動車市場、2026年の超予測:日本メーカーが直面する三重苦と新たな覇権争い
世界の自動車市場は、コロナ禍による変革を経て、かつての急成長軌道を完全に外れ、新たな時代を迎えている。一時は「1億台超え」も目前とされた市場は足踏み状態が続き、各国の状況も大きく異なる様相を呈しているのだ。特に日本メーカーにとっては、2026年が将来を左右する重要な岐路となり、これまで練ってきた戦略を実行に移す正念場となる。本稿では、今後の市場動向を巡るリスクとポテンシャルを深く分析し、日本メーカーがこの激動の時代をいかに生き抜くべきかを探る。

Q. 世界の自動車市場はコロナ禍以降、どのように推移しているのか?
世界の自動車販売台数は、コロナ禍前までは数年ごとに1,000万台規模で急成長し、2017年には過去最高の9,664万台を記録した。当初は2025年に1億1,000万台到達と予測されていたが、コロナ禍によりこの成長は失速する。2020年には7,900万台まで落ち込み、その後回復基調にあるものの、2025年の見通しは9,411万台と、未だ2017年の過去最高水準には及んでいないのが現状である。
過去最高の更新は2029年ごろと見られており、市場はかつてのような右肩上がりの成長ではなく、停滞期に入ったとの見方も強い。現在の市場回復は、特に中国の買い替え支援策に大きく依存している側面が大きく、市場の構造変化を示唆している。
Q. 成長が鈍化する中、主要各国の市場動向はどうなっているのか?
国別の販売台数を見ると、2025年予測では中国が約3,000万台と圧倒的な世界一で、世界の自動車市場の約3割を占める。しかし、この中国市場の伸びの約7割は、政府による買い替え支援策という外的な要因に支えられたものであり、真の実力値とは言えない可能性がある。次にアメリカが1,670万台、そしてインドが500万台超で3位に浮上し、日本を抜いた。インドは人口増と経済成長を背景にした純粋な需要増であり、将来の有望市場としての地位を固めていると言える。

その他、トルコのようにインフレと通貨安が進む国では、現金よりもモノである自動車を持つことで資産を守ろうとする動きが見られる。ただし、この種の購入は実体経済の好調さを示すものではなく、特殊事情によるものだ。このように、世界の自動車市場は上位16カ国で全体の8割を占める寡占状態であり、特に中国の動向が市場全体に与える影響は計り知れない。
Q. 先進国市場のシェアが減少している背景には何があるのか?
先進国市場、特に北米や西欧のシェア低下には複数の構造的な要因が存在する。
価値観の変化: 昔はお金があれば車を買う流れがあったが、近年はスマートフォンやIT関連サービスへの支出が増加し、車の優先順位が低下している。これは、人々が「モノ」よりも「体験」に価値を見出す傾向の表れだ。
中古車市場の台頭と品質向上: 自動車の性能が大幅に向上したことで、10年落ちの中古車でも十分乗れるようになっている。「新車である必要はない」と考える層が増え、新車市場が浸食されている。
人口構造の変化: 日本や西欧では高齢化が進み、車の運転をやめたり免許を返納する人が増加。自動車を運転する絶対人口が減少していることが市場の縮小に直結する。
また、かつて期待されたシェアモビリティ(カーシェアリングなど)は、利用者が「乗りたい時に近くに車がない」といった利便性の問題や、衛生面・所有欲を満たせないといった心理的な側面から普及には至らなかった。自家用車を持つことによる自由な移動体験という根本的な価値が揺るがなかったことが要因だ。

しかし、自動運転のロボタクシーなど、利便性を追求したサービスは今後の普及の可能性がある。これもまた、従来の自動車購入モデルを変える潜在的な要因となり得る。
Q. 2026年の自動車業界にとって最大のリスク要因とは何か?
2026年の自動車業界にとって最大の不確実要素であり、リスクは「日中関係の悪化」である。日本の部品サプライヤーは、世界中の自動車メーカーに部品を供給するグローバルサプライチェーンの中核を担っており、その重要性は極めて高い。仮に中国が何らかの規制を発動し、日本の部品供給が滞れば、影響は日本メーカーに留まらず、世界の自動車生産に甚大な被害が及ぶ可能性が指摘されている。
最悪のシナリオでは、世界の自動車生産がコロナ禍を上回る最大1,400万台減少する恐れもある。この影響は米中対立よりも深刻だという見方があり、自動車メーカーの業績予想にはまだ十分に織り込まれていない「時限爆弾」とも言えるだろう。
これに加え、北米市場では2026年7月のUSMCA(北米自由貿易協定)の見直しが控えている。合意が先延ばしされる可能性が高く、この不透明感から日本企業は投資判断が困難になる事態も想定される。さらに、日米の金融政策の転換による円高リスクが加わり、日本メーカーは「三重苦」に直面する可能性がある。
Q. 将来的な市場拡大が期待される「ポテンシャル市場」はどこに存在するのか?
今後の自動車市場の大きな成長を牽引するのは、現在の自動車普及率が極端に低い「ポテンシャル市場」だ。特に、人口が多く、千人当たりの新車販売台数が数台に留まる国々(インドネシア、パキスタン、ナイジェリアなど)が注目される。試算によると、これらの国々で新車販売台数がわずか5台/千人増えるだけで、世界全体で1,800万台もの新たな市場が創出される計算となる。
その背景には、先進国でのEVシフトが挙げられる。これまでは、先進国から高品質で安価な中古ガソリン車が途上国に流入し、需要を満たしていた。しかし、先進国でのEVへの移行が進めば、中古ガソリン車の供給は枯渇し、これらの国々は必然的に新車を求めることになるのだ。

この巨大な新たな市場を巡り、安価な自動車を供給できる中国メーカーと、スズキのように安価な新車で市場開拓を目指す日本メーカーの間で、未来の自動車業界の覇権をかけた激しい戦いが繰り広げられると予測される。
Q. 日本メーカーは、この激動の時代にどのような戦略を求められているのか?
日本メーカーにとって2026年は、単に市場動向を予測するだけでなく、具体的な「戦略を実行する年」となる。トランプ関税や日中関係悪化といった二重の圧力は、もはや座して待つことのできない状況に追い込んでいる。最も喫緊の課題は、中国への依存リスクを低減するための「グローバルサプライチェーンの再編」である。これは部品供給の分散化、生産拠点の多角化を意味し、従来の効率性を重視したサプライチェーンから、リスク耐性を高めたものへと変革を断行しなければならない。
また、体力の違いから、トヨタのような大企業と、マツダや日産のような比較的経営が厳しい企業では、取れる戦略に大きな差が出てくるだろう。体力のある企業は大規模な投資でサプライチェーン再編や新市場開拓を進める一方、体力のない企業は選択と集中を迫られることになる。この変革の度合いが、今後の自動車業界における「勝ち組と負け組」を明確に分けることとなる。