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学びをやめない生き方入門
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2025年12月21日

今、学ばない大人が増えている。会社内で学ぶ行動をすると転職するのではないかと勘違いされてしまう。 学びの行動を見直すことで自分に起こる変化はあるのか?今後、学びが会社・個人の成長に繋がる? 人材開発・組織開発を専門分野として研究している立教大学教授の中原 淳氏に聞いた。 ▼プロフィール 中原淳|立...
「なぜ日本人は学ばない?」無意識のバイアスを乗り越える「学び方」入門
衝撃的な調査結果がある。日本人の社会人の過半数、実に52.6%が、職場外での学習や自己啓発に全く取り組んでいないという事実だ。これは諸外国と比較して突出した数字であり、多くの人々が学びから遠ざかっている現状を浮き彫りにする。
本稿では、この「学び離れ」の背景に潜む日本独特のバイアスを解き明かす。私たちはなぜ学ぶことの意義を見失い、そしてどうすれば自らの学習意欲を取り戻し、より充実した人生を送れるのか。立教大学経営学部の中原淳教授が提唱する「学びを止めない生き方」のヒントを探る。

Q. なぜ日本人はこれほど学びの意識が低いのか?
海外と比較し、日本の社会人の学習意欲の低さは際立っている。52.6%が社外での学習・自己啓発を行っておらず、さらに42%もの人々が今後も自己投資の予定はないと回答している。この背景には、海外と異なる日本独特の「学び」に対する意識があるとされる。
多くの日本人は小・中・高・大と、その学費を親や国が負担する環境で育つ。そのため、「学びはお金を出して提供されるもの」という意識が無意識のうちに根付いている場合が多い。自分から学びにお金を払うことへの抵抗感やハードルが高い状態である点が指摘される。この「与えられる学び」という文化が、自発的な学習意欲を阻害する一因となっている。

Q. 学びが私たちの人生を豊かにするのはなぜか?
データは明確な事実を示している。「学びを止めない大人」の65.4%が仕事を通じて幸せを感じているのに対し、「学ばない大人」で幸せを感じているのは36%に過ぎない。この約30ポイントの差は、学びが幸福度に直結することを示唆する。学ぶことは新たな出会いを創出し、知的好奇心を満たすだけではなく、自身の成長実感を高める。
人は常に変化し、新しい知識やスキルを習得する中で「自分もできる」という自信を育む。この成長体験は孤独感を軽減し、人との連帯感をもたらす。昨日よりも変化している自分に気づくことは、日々のマンネリや仕事への停滞感を打破し、活動的な感情と高められたモチベーションへと繋がる。学びを通じて自身の世界を広げることが、結果として豊かな人生を築く上で重要な要素となる。
Q. あなたを無意識に縛る「学びの7つのバイアス」とは何か?
学びたいのに一歩が踏み出せないのは、多くの場合、無意識に囚われている「学びに対する思い込み(バイアス)」が原因だ。このバイアスには「新人バイアス」(学びは若者のもの)、「学校バイアス」(学校に行かないと学べない)、「現場バイアス」(座学は無駄)、「地頭バイアス」(自分は頭が悪いから無理)、「自信の欠如バイアス」(学んでもどうせ生かせない)、「現状維持バイアス」(今のままで十分)、「タイパバイアス」(手っ取り早く結果が欲しい)の7種類がある。これらは学びのハードルを不必要に上げてしまう。

これらのバイアスは年代によっても異なる傾向を見せる。20代から30代は「地頭バイアス」や「タイパバイアス」が強く、学生時代の学力競争が影響している可能性がある。40代では「学校バイアス」や「自信の欠如バイアス」が目立ち、資格取得や専門職大学院への意識が高まる傾向にある。50代から60代では「新人バイアス」と「現状維持バイアス」が顕著となり、「今さら学ぶ必要はない」という心理が働く。まず自身のバイアスを客観的に認識することが、学びの解放に向けた最初の一歩となる。
Q. どのようにすれば学びを行動や成果に繋げられるのか?
学ぶ環境、特に職場の雰囲気も個人の学習意欲に大きな影響を与える。上司や同僚から「無駄なことはせずに仕事しろ」と言われたり、「転職を考えているのか」と勘繰られたりする職場では、人は学びを行動に移しづらくなる。このような「学んでいますと言えない空気」を打破し、学びを行動と成果に結びつけるためには、意識的な行動が必要だ。
学びの継続に重要なのは「ゆるく続ける」ことである。高い目標を設定して挫折を繰り返すのではなく、赤ちゃんが階段を登るように、ハードルを極限まで下げた「ベビーステップ」で始めるべきだ。成功体験を積み重ね、「自分にもできる」という感覚を養うことが継続に繋がる。また、「ミーハーする」ことも有効な手段である。新しい技術や情報に対し、説明書を読み込むのではなく、まず触れて試行錯誤(ティンカリング)することで、能動的な学びが生まれる。そして困難や失敗を「逆境」として捉え、そこから学ぶ姿勢も成長には欠かせない。過去の経験から「これはやってはいけない」と学んだ教訓は、将来の成功への糧となる。

さらに重要なのは、「学びを結ぶ」という概念だ。イノベーションとは既存の要素と要素を掛け合わせる「新結合」である。自分の得意分野や過去の経験に新しい学びを「掛け算」することで、全く新しい価値や発見が生まれる。過去を捨てるのではなく、それらを土台として新しい要素と結びつけることで、知の世界は大きく広がる。例えば、今まで自分が学んできたスポーツと、新しく触れる心理学を掛け合わせ、「スポーツ×心理学」の視点で物事を捉えることで、新たな解釈やアイデアが生まれるかもしれない。まずは自身を知り、その上で自ら行動し、学びと学びを結びつける思考を実践することが求められる。
Q. 「ひょんなこと」から始まる学びの具体的な道筋は?
人生を変えるような学びは、往々にして些細なきっかけ、つまり「ひょんなこと」から始まる。例えば、塾の先生の勧めで参加したワークショップが起業へと繋がり、友人の就活自殺という社会課題を知ったことがきっかけで、自ら事業を立ち上げた人物もいる。また、震災ボランティアで70代の漁師との対話に心を揺さぶられ、就職先の内定を辞退し、気仙沼へ移住して地域のために奔走する人もいる。そして自身のアイデンティティに悩み、災害経験から「人を助けたい」と看護師を目指した結果、医療現場の課題に直面し起業に至った事例もある。
これらの具体例に共通するのは、完璧な計画や壮大な志からではなく、身近な出来事や他者の苦悩という「他者貢献」の視点が行動の源になっていることである。何を学べば良いか分からない時には、「自分が貢献したい誰か」をイメージすると良い。その貢献の先に感謝され、それが自身のモチベーションへと繋がる。さらに、失敗を恐れず挑戦し、そこから得られた教訓や知識を次へと活かす姿勢も重要である。失敗を恐れ立ち止まるのではなく、それ自体を貴重な学びの機会と捉えることで、自らの世界を広げていける。
Q. 学び続けるための最初の一歩は何から始めるべきか?
あなたは、すでに学んでいる。日々の仕事や人との出会いを通じて、私たちは常に何かしらの新しい情報や経験に触れている。だが、「学びはこうあるべきだ」という思い込みやバイアスに囚われ、その学びのプロセスに自覚的でない場合が多い。重要なのは、学ばなければならないという強迫観念から自らを解放し、すでに学んでいる自分を発見することだ。
全ての自己啓発書が共通して語る金言は「行動せよ」である。プラン(Plan)ではなく、まずはアクション(Action)から始めるのだ。小さな一歩でも良い、ハードルを徹底的に下げて何かを始める。その最初のアクションこそが、あなたの学びと人生の連鎖を活性化させ、世界を広げる強力な推進力となるだろう。