
JリーグMVP、早川友基が語る「最強GK論」
5,093回視聴
2025年12月21日
ゴールキーパーとして鹿島アントラーズを優勝に導き、自身もMVPを獲得した早川友基選手。世界最強のGK、日本代表とW杯、今後のキャリアをテーマに80分インタビューした。 <ゲスト> 早川友基|鹿島アントラーズ GK 横浜F・マリノスアカデミー、桐蔭学園高を経て明治大へ。大学No.1GKとして多数のタ...
JリーグMVP早川友基が語る「最強GK論」とキャリア設計:挫折と成長、そして世界への道筋
2023シーズンのJリーグ最優秀選手賞(MVP)に輝いた鹿島アントラーズの守護神、早川友基は、その名声に違わず冷静かつ深い思考を持つゴールキーパーだ。彼のサッカー人生はエリート街道に見えながらも、知られざる挫折と、そこから這い上がった強靭な精神によって形成された。試合に出られない苦境から「考える力」と「向上心」を育み、世界トップレベルのGKを徹底的に分析することで、現代フットボールに求められる高次元のGK像を追求している。本稿では、早川が語る「最強GK論」、自身の強み、世界との違い、そしてセカンドキャリアも見据えた独自のアプローチに迫る。

Q. サッカー人生で最も成長した時期はどこか?
最も成長したのは、皮肉にも試合に出られなかった大学2年生の時期である。1年時に出場機会を得ながら、2年ではセカンドチームでのプレーが主であった。しかし、この屈辱をバネに、自分に足りないものと向き合い、どうすれば試合に出られるか、何をすべきかを徹底的に逆算して考え抜いた。この期間にメンタル面だけでなく、セービングやキックなどプレーのあらゆるバランスを向上させる必要性を痛感し、自ら探求する力を養った。明治大学の栗田監督からはサッカー技術以上に人間教育を重視され、「当たり前のことを当たり前にやる」厳しさを叩き込まれたという。これらの経験が思考力と向上心を飛躍的に高め、現在の土台を築き上げた。
Q. 世界最強ゴールキーパー像をどのように描くか?
特定のGKを最強と定義するのではなく、各分野で抜きん出た選手の長所を分析し、自身に取り入れている。彼の「分野別最強GK論」は以下の通りである。セービングはゾマー、そのしなやかさと一度飛び切った後にもう一段階伸びるような動作を評価する。クロス対応はドンナルンマで、身体能力の高さと到達点の速さに着目。フィジカル面で劣る自分は、勢いのあるジャンプとタイミングでそれを補う。1対1はアリソン、相手がシュートを打つ前にポジショニングと間合いで選択肢を消し、自分の土俵に引きずり込む技術を絶賛。フィード(配球)はエーデルソンとライアを挙げ、エーデルソンの飛距離と質、ライアのスペースにボールを置いて味方を合流させる戦術眼を参考にしている。メンタル面ではマルティネス、時に「演技」と表現されるような駆け引きも参考になるという。

Q. MVP GKの「神セーブ」と「ビルドアップ」の秘訣は何か?
セーブの秘訣は「先に動かない」メンタルと技術にある。鹿島の曽ヶ端コーチから「どんな近いシュートでも先に動かず、反応で止められる」と指導された。シュートの瞬間までニュートラルな体勢を保つことで、最大出力を発揮できると自身で発見した。大迫勇也選手との1対1で左足一本でセーブした場面も、ニアを切りながらファーで勝負するという駆け引きと、とっさの身体の反応が組み合わさったものだと語る。
ビルドアップでは、「ボールを受ける前の準備」が最も重要であると強調する。味方や相手の状況を事前に把握し、相手のプレスを予測した上で、両足で蹴れるようボールを中央に置くといった工夫を行う。また、パスコースの選択においてはまず遠くを見ることで相手ディフェンダーを後退させ、結果的に近くのパスコースを開くことを意識する。代表戦での緊張状態でもハーフタイムに映像で自身のプレーを客観的に確認し、修正する姿勢が成長を加速させている。

Q. 日本代表としてプレーする中で、世界との違いをどのように感じるか?
海外でプレーする仲間から聞く最大の差は「シュートの質」である。Jリーグでは経験できないスピード、シュートレンジ(距離)、タイミングのボールが次々に飛んでくると言う。この差を埋める唯一の方法は「場慣れ」であると断言した。日本代表の活動を通して、継続的にハイレベルな環境でプレーすることで、身体がそのクオリティを記憶し、自然と対応できるようになる。実際に代表招集から戻ると、Jリーグでのプレーに余裕を感じるようになったと言う。
森保監督については、選手とフランクに話せる関係性を築いてくれること、そして練習中の些細なミスや気の緩みをも見逃さない観察眼に敬服する。PK戦への備えについては、代表で常に行われている練習と、スカウティングで相手キッカーの癖を頭に入れつつも、最終的には「自分を信じる」ことが最も重要であるとした。
Q. サッカー選手としてのキャリアと、並行して取り組むビジネスへの思いとは?
サッカー選手のキャリアは最大でも20年程度と限られているため、引退後の生活を見据え、現役中からビジネスにも積極的に挑戦している。現在脱毛サロンのオーナーを務めるなど、複数の分野にアンテナを張る。サッカーで培った「課題設定→実行→評価→改善」というPDCAサイクルはビジネスにもそのまま応用できると感じており、これが自身を成長させる原動力だと言う。

海外挑戦については、まず自身のプレースタイルとチームの戦術が合うかを最優先する。GKが多く、Jリーグのスタイルと似ているという点でイタリア(セリエA)への関心が高い。身体能力で劣る分、キックの精度やゲームの安定感といった自身の強みで勝負したいと語った。
2026年ワールドカップに向けては、「満足することなく成長し続ける」ことが自身のモットーであり目標である。ワールドカップ出場を目指す上ではまだ実力不足だと自覚し、残された期間で持てるものすべてをぶつける覚悟を示した。