
日本の成長戦略:玉木雄一郎×小林鷹之×斎藤アレックス
日本経済の未来を拓くには?アントレプレナー政治家3名が語る成長戦略
日本経済が新たな成長軌道を描くため、今、何が求められているのだろうか。今回はアントレプレナー精神を持つ政治家3名が登壇し、日本の成長を支える領域、雇用・労働市場改革、スタートアップ政策について議論した。富の国外流出を防ぐ国家戦略、ロボティクスによる生産性向上、人手不足の解消など、喫緊の課題に対し、彼らが描く未来とは何か。
本記事では、激動する社会でリスクを恐れず決断を下してきた政治家たちの提言を通じて、日本経済を活性化させるための具体的なアプローチを探る。民間企業には挑戦への積極性を求め、政府はその挑戦を支えるセーフティネットの役割を果たす。この議論から、日本の経営者、そして社会全体への力強いメッセージが届けられる。

Q. アントレプレナー精神を持つ政治家たちは、今年どのような決断をしたのか?
登壇者それぞれが、政治家として下した「今年最大の決断」について語った。彼らの決断の背景には、リスクを恐れずに挑む強い意志があった。
**玉木氏:参院選東京2議席獲得** 党の存続をかけた大勝負である。共倒れのリスクがあるにもかかわらず、参議院選挙東京選挙区に2名の候補者を擁立し、見事に両名を当選させた。もし通らなかったら代表を辞める覚悟で臨んだ、まさに「共倒れ」覚悟の挑戦であったと彼は述べている。
**小林氏:2度目の総裁選出馬** 党内での支持獲得が厳しい状況の中で、2度目の総裁選出馬を決断した。周囲からの推薦よりも自身の意思を重んじた行動だ。彼は、勝ち負け以上に「良い日本を作る」という思いを共有する仲間と挑戦できたことが、大きな財産になったと語る。
**斎藤氏:与党入りの舞台裏** これまで二大政党制を志向してきた彼にとって、日本維新の会が自民党との連立を組むことは、心の葛藤を伴う決断だったという。しかし、自公連立の終焉による政治の流動化を「30年分の仕事ができる好機」と捉え、信念を超えて党として与党入りする決断をしたと明かした。
Q. 日本の未来を担う主要な成長領域は何か?
日本の成長を牽引する中核分野について、各政治家が異なる視点から提言を行った。既存の課題解決だけでなく、未来を創造する視点での議論が展開された。
まず斎藤氏は、介護・医療分野のデジタル化と生産性向上を挙げた。労働集約型で生産性が低いこの分野が、今後も多くの労働力を吸収すると予測されているからだ。ロボット化やデジタル化に集中投資し、生産性を飛躍的に高めることが日本経済全体の回復に不可欠である。
小林氏は、情報通信とフュージョンエネルギーを国家戦略の柱に据えるべきだと主張した。エネルギーの面では、これまでの資源輸入国から、フュージョンエネルギーのような技術で輸出国へと転換し、エネルギー覇権を資源保有国から技術保有国へと移す必要性があるという。国は民間企業の特定の選定ではなく、国家目標を設定し、フェアな競争環境を提供することが重要だとしている。
玉木氏は、富の国外流出を防ぐ観点から、原子力技術とライフサイエンスを強調した。年間30兆円に及ぶエネルギー輸入費の削減のため、世界的に優位性を持つ原子力技術、特にSMR(小型モジュール炉)や洋上原発の国内活用を訴えた。また、国家予算の約半分を占める社会保障分野でのイノベーション創出も重要であり、国や自治体がスタートアップの製品・サービスを積極的に購入することで、産業成長を後押しすべきだと提言している。

Q. 成長を阻む「人手不足」問題、特に「年収の壁」はどう解決すべきか?
日本の成長にとって最大の障壁は「人手不足」である。この問題の解決策、特に「年収の壁」への対応が急務だと議論された。
玉木氏は、政府がやるべきことは、民間の活動を「邪魔しない」ことだと力説する。特に「年収の壁」に代表される税制や社会保険料の壁が、働きたい人の意欲を削ぎ、労働供給を抑制している現状を問題視した。働ける人がもっと働き、稼ぎたい人がもっと稼げるよう、制度上の障害を徹底的に取り除くことが、政府の最優先事項だと主張している。
小林氏も同意見であり、自身の経験から、働き方改革は「働かせすぎ」との批判を恐れず、「働きたい人」の選択肢を増やす方向で見直すべきだと述べた。「年収の壁」については、高所得者も恩恵を受ける基礎控除の一律引き上げではなく、給与所得控除の柔軟な設計など、きめ細やかな制度改正が必要だと指摘した。与野党が協力し、この「関所」を乗り越えるという強い決意を表明している。
さらに、専業主婦を優遇する「第3号被保険者」制度のような、夫が働き妻が専業主婦という旧時代の前提で作られた社会保障制度そのものが、現代の共働き世帯が7~8割を占める状況に合致しないという指摘があった。微修正に留まらず、現代社会に合わせた抜本的な制度改革が不可欠であるとの認識で、登壇者全員が一致している。個別事情には税制などで対応しつつ、旧態依然とした制度設計そのものを見直すべきだとした。
Q. スタートアップが飛躍的に成長するために何が必要か?
日本のスタートアップ政策は、企業の「裾野」は広がったものの、ユニコーンのような突出した企業が生まれにくいという課題を抱えている。この「高さ」不足を解消するための処方箋が議論された。
小林氏は、ディープテック分野におけるレイターステージへの資金供給の課題と、海外からの資金流入の少なさを指摘した。その解決策として、NASAがSpaceXを誕生させた「COTS」モデルの日本版導入を提言している。政府が明確な目標を設定し、それを最も早く達成した民間企業から積極的に調達する仕組みを導入することで、公正な競争が促進され、スタートアップが成長する機会が創出されるとした。これは単なる補助金ではなく、政府自身がイノベーションの「買い手」となる姿勢を示すことが、スタートアップ支援の本気度を示すことになる。
斎藤氏は、株式市場の機能不全を指摘した。数十兆円規模の株主還元がある一方で、新規の資金調達はわずか1兆円程度と、本来の市場機能が果たされていないという。スタートアップが上場や融資で資金を調達しやすい環境を整備する必要性を訴えた。
さらに斎藤氏は、地域に権限を委譲する「複都構想」を提示した。全国一律での規制緩和が難しい場合でも、特定の地域で先行的にライドシェアのような新しいサービスを展開できるような特区を設け、スタートアップがより自由に活動できる「実験場」を日本国内に創出することが有効だという見解を示した。

Q. 政治家たちは経営者に対してどのような期待を抱いているか?
最後に、日本の経済を牽引する経営者たちに対し、3名の政治家から叱咤激励のメッセージが送られた。
斎藤氏は、新しいベンチャーや産業の誕生なくして日本経済の強化はないとし、経営者が積極的にチャンスを掴むべきだと訴えた。そのための必要な政策や制度改正は、政治が責任を持って全力で支援することを約束している。
小林氏から大企業へは「もっとリスクを取ってほしい」というメッセージがあった。M&Aやスタートアップ任せにせず、豊富な資源を活用して自ら研究開発に挑戦し、新しい価値を創造すべきだと指摘した。スタートアップに対しては、目の前のアプリ開発に留まらず、日本初のプラットフォームを世界規模で構築するような大きな野望を持つべきだと激励した。国際標準を意識した事業展開が、日本経済をさらに面白くすると期待を寄せた。
玉木氏は、大企業には自社株買いに偏重せず、人的投資に注力すべきだと主張した。人的投資が株価にプラスの相関を持つことが実証されていることから、これを企業の社会的責任と位置付けた。ベンチャーやスタートアップには「世界標準」で勝負することを促し、挑戦への「アニマルスピリッツ」を期待している。政治は、経済発展を促す「破壊的イノベーション」に伴う失業や生活の不安定化に対し、セーフティネットを提供することで、挑戦者を全力で支援すると結んだ。
