
リセールバリューが高い駅ランキング
都心マンションはなぜ高騰し続けるのか?専門家が語る驚愕の市場の今
東京都心におけるマンション価格の異常な高騰は、多くの人々が肌で感じている現状だろう。新築はもちろん、中古市場までもが高値を更新し続けるこの状況は、もはやバブル期をも彷彿とさせる様相を呈している。しかし、この価格高騰の背景には何があるのか、そしてこの市場は今後どこへ向かうのか。
本稿では、不動産調査会社東京カンテイの常席主任研究員である高橋雅之氏の解説をもとに、都心マンション市場の「現在地」をデータとともに徹底解明する。市場に何が起こり、誰が購入し、そして私たちはどのようにこの変動期に立ち向かうべきか、その本質を探る。

Q. 都心マンション市場でいま何が起こっているのか?
都心マンション市場は今、かつてない高騰期を迎えている。新築マンションの平均坪単価は高騰を極め、手の届きにくい存在となっているだけでなく、中古マンションの坪単価までもが上昇を続け、一部では新築価格を凌駕する「逆転現象」さえ発生している。特に注目すべきは2025年のデータであり、この現象は中古市場における流動性の高い人気物件が取引の中心となっているためと考えられている。このような異常な高値は、市場が過熱期にあることを明確に示している。坪単価がかつて「高い」とされていた400万円を平均で大きく超える状況は、わずか10年で市場の常識が完全に変わってしまったことを意味する。不動産の価値評価も大きく変動しており、既存の枠組みでは捉えきれない新しい指標が求められる状況になっていると言えるだろう。

Q. なぜ新築マンションの供給が絞られ、大手デベロッパーが力を持っているのか?
新築マンションの供給戸数は、過去5年間で顕著な減少を見せている。2019年と比較して供給戸数はほぼ半減しており、デベロッパー各社が「数を売る」戦略から「少数高額」戦略へと舵を切った結果と分析される。価格が高騰し続ける中で、購入できる層が限定されるため、売れ残りのリスクを避けるべく、特定の富裕層ターゲットに特化した高価格帯の物件を絞って供給しているのが実態だ。供給戸数が半減しても、単価が2倍以上であれば事業規模を維持できるという計算がある。これにより、市場全体では大手デベロッパーのシェアが拡大し、以前の30%弱から40%近くまで上昇している。大手による寡占化は、彼らが市場での価格決定の主導権を握ることを意味し、これが更なる価格高騰を生み出す要因ともなっている。
なお、2020年のコロナ禍では大手のシェアが一時的に急落したことがあるが、これは販売自粛要請やモデルルーム閉鎖といった国の緊急事態宣言による一時的なものだった。大手は市場の動向を見極めながら供給を調整する余力があることが窺える。
Q. マンション価格高騰の裏に隠されたカラクリとは?
都心マンション価格高騰の背景には、いくつかの複合的な要因がある。第一に、高騰マンションを購入する層が従来の一般所得者層から富裕層へと完全にシフトした点だ。株高で資産を増やした国内の富裕層や経営者が市場を牽引しており、今や「パワーカップル」(世帯年収1500万円以上)でさえ購入が難しいケースも出てきたことから、世帯年収2000万円以上とされる「スーパーパワーカップル」や「パワーファミリー」といった、さらにアッパーな層が新たなターゲットとなっている。山手線内側の物件では、年収2000万円が最低ラインとの認識さえある。
第二に、急激な円安の進行が挙げられる。これにより日本の不動産が海外投資家にとって割安となり、コロナ後の経済活動再開とともに海外からの資金流入が再び活発化している。海外投資家が市場を買い占めているわけではないが、その購入行動が市場全体を活性化させ、これに追随する国内の富裕層や投資家が増加。これにより価格上昇のトレンドが加速している。さらに、コロナ禍における現物資産の価値上昇、世界的な物価高、輸入建材や資材の高騰、そして建設費における人件費の上昇なども価格に上乗せされ、現在の価格水準を形成していると言える。短期間で物件を転売する目的の購入者、つまり「住まないで売りに出す」層も一部存在すると見られるなど、市場の多様化が加速している。

Q. 投資を考える上で、「儲かる街」や「価値が上がりやすい物件」にはどんな共通点があるのか?
将来的に価値が上がるマンションを選ぶ上で、いくつかの共通点が見出される。まず、新築購入に必要な世帯年収の高さを示すランキングを見ると、白金高輪では4233万円、表参道では4020万円という驚愕の数字が示された。これらは上位の駅に集中しており、特定のアッパー層向けの物件であることを物語る。一方でリセールバリュー(再販価値)のランキングでは、半蔵門が337.9%、六本木一丁目が315.7%と、購入時から3倍を超える値上がりを記録しているケースがある。
これらのリセール上位の物件に共通するのは、千代田区や港区といった山手線内側の南部に集中している点、駅直結のタワーマンションや高級レジデンスなど「物件スペック」の高さ、そして周辺の大規模な「再開発」プロジェクトが絡んでいる点だ。麻布台ヒルズの開発のように、街全体のポテンシャルが向上することで、不動産の資産価値が大きく引き上げられる。

特異な例として、湾岸エリアの東雲や豊洲などが挙げられる。これらは分譲当初の坪単価が安価であったが、街の成熟とともにそのポテンシャルが「お化け」し、リセール上昇率では都心一等地を上回るケースも生まれている。つまり、「立地」の良さだけでなく、「将来性」や「再開発計画の有無」が資産価値を大きく左右する重要な判断材料となっている。
さらに、専門家はリセールバリューと「賃料水準」に強い正の相関があることを指摘する。複数の候補地で迷った場合、賃料水準が高いエリアは将来的なリセール価値も高い傾向にあるため、重要な比較指標となるだろう。しかし、築30年超などの古い物件は、割安に見えても、大規模修繕費用や耐震性、新旧住民間での意見の相違といったリスクが存在するため、慎重な検討が必要である。
Q. 今後も都心マンションの価格は上がり続けるのか?購入を検討すべきタイミングとは?
現在の都心マンションの価格高騰は、一過性のものではない可能性が高いと専門家は予測する。その背景には構造的な要因がある。
土地価格:今後も上がる可能性が高く、下がる兆候は見られない。
建材費:世界的な物価高や円安の影響で高騰が続き、下がる要素に乏しい。
人件費:少子高齢化による労働人口減少は建設業界も例外ではなく、賃金上昇は不可避であり、それが物件価格に上乗せされる。
これらのコスト要因から、マンション価格が大幅に下がる構造は非常に見えにくい。さらに、海外富裕層や国内の富裕層といった高額購入者層が定着しており、彼らの購買意欲が衰えない限り、需要が大きく減少するとは考えにくい。このため、専門家からの共通のメッセージは、「無理をしない範囲で、買えるのであれば待つより今買うべきだ」というものだ。価格の下落を期待して購入を遅らせることは、むしろ「高掴み」のリスクを高める結果に繋がる可能性がある。融資面でも、50年ローンなどの長期間返済を可能にする商品が登場するなど、購買を後押しする動きがある。

購入を検討する際には、エリアに対する既存の「先入観」を一度捨てる視点も重要になるだろう。自分が本当に住みたい場所、育った環境などを理由に選択肢を限定するのではなく、通勤時間、交通利便性、街の将来性といった客観的なデータに基づいてフラットな視点でエリアを評価することで、予算内で価値ある物件を見つける可能性が広がる。例えば、都心3区(千代田、中央、港)がリセール、賃料ともに強いのは間違いないが、鉄道延伸計画などで「伸びしろ」が期待できる江東区のようなエリアにも注目する価値がある。行政の都市計画やインフラ整備の動向も常にチェックし、将来の価値を予測する材料とするべきだろう。
