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日中関係悪化の核心
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2025年11月19日

日中関係悪化の真の理由を探る。高市氏の「台湾有事」答弁の後、中国駐大阪総領事のSNS投稿が対立を過熱させた背景を深掘り。関係修復の鍵はどこにあるのか、今後の収束シナリオを専門家が分析する。 ▼プロフィール 興梠一郎|神田外語大学教授 82年九州大学経済学部卒業、三菱商事入社。UCバークレー校、東京...
深まる日中関係の溝:高市答弁と中国総領事SNS問題の真相を探る
高市総理の「台湾有事」に関する国会答弁、そして中国の駐大阪総領事の過激なSNS投稿。これらの出来事をきっかけに、日中両国間に大きな亀裂が生じている。
中国側は日本への旅行自粛を呼びかけ、一部フライトがキャンセルされるなど、すでに経済的な影響も現れ始めた状況である。
一体なぜ今回の騒動はここまで深刻化したのか。そしてこの先、日中関係はどこに向かうのか。中国外交の専門家が、複雑な背景と今後の展開を深く分析した。

Q. 今回の騒動はどのような経緯でここまで深刻化したのか?
日中関係の緊張は、国会における高市総理の台湾有事に関する答弁と、それに対する中国の駐大阪総領事によるSNSへの過激な投稿が発端となった。
高市総理は台湾有事が武力行使を伴うものであれば、自衛隊が出動できる「存立危機事態」になりうると答弁した。これを受け、中国総領事が自身のSNSアカウントで日本政府や高市氏を批判する内容を投稿したのだ。

日本の外務省はすぐに中国大使館に抗議し、問題の投稿は削除された。中国側はこの時点で事態を収束させたい意向であったと見られる。しかし、この投稿内容が日本国内のメディアで報道されると、与野党の区別なく「けしからん」という猛烈な反発が起きた。この日本の強い態度を見て、中国は守勢から攻勢へと戦略を転換したと指摘される。
中国がこの時始めたのは、それまで要求していなかった高市総理への「発言撤回」の要求である。両国の主張は完全にすれ違い、中国側は「発言撤回」、日本側は「総領事の投稿問題」をそれぞれ相手に要求する状況が続いている。中国が日本への旅行や留学への「注意喚起」に留め、全面的な禁止に至っていない点は、交渉の余地を残し、日本側の出方を見ている姿勢の現れだろう。
Q. 中国が日中対立の深刻化を図る上で用いる「世論戦術」とはどのようなものか?
中国が今回のような国際的な問題でよく用いるのが、他国の国内世論を分断させる「世論戦」だ。一党独裁体制で世論がコントロールされている中国に対し、日本では民主主義ゆえに多様な意見が存在する。中国はその多様性を巧妙に突くことで、自国の主張を有利に進めようとする。
具体的には、中国メディアが、高市総理を批判する日本の野党やメディアの声を大々的に報じ、「日本国内でも意見が割れている」という印象を国際社会に与えようとする。これは日本の世論を分断し、政府に対し内側から圧力をかけさせようとする狙いがある。つまり、日本が自滅するように仕向けるわけだ。
また、中国は旅行自粛などの措置によって、日本の民間経済にダメージを与えようとも画策する。これにより、経済界などから「中国との関係を安定させるべきだ」という声が上がり、日本政府への圧力を増す狙いがある。日本国民はこのような中国の戦略を見抜き、国内の分断に乗せられないことが重要である。
Q. 高市氏の台湾有事答弁は問題であったのか?中国が本当に警戒していることは何か?
高市総理の答弁自体は、野党議員による「台湾が武力封鎖された場合」という具体的な仮定の質問に対し、正直に答えたものであった。外交上、このような仮定の質問に対しては「仮説には答えない」と返答するのが常套手段とされる。高市氏が率直に答弁したことで、中国側に利用される隙を与えた側面はある。
当初、中国側の反応は「内政干渉だ」「強烈な不満と断固たる反対だ」という定型的な表現に留まり、高市氏への「撤回」要求はなかった。日本での総領事の投稿問題がこれほど大問題にならなければ、ここまでのエスカレーションは起きなかった可能性が高いのだ。

しかし、今回の騒動の根底には、中国が「日米同盟」の強化と、それに伴う台湾有事への日本の介入を強く警戒している現実がある。高市答弁は、台湾が封鎖された際に米国を日本が支援するかという、集団的自衛権や日米同盟の根幹に関わる問題に踏み込んだ。これは、中国から見れば日本が戦後からの脱却をはかり、再び軍事力を持つことを試みていると映る可能性がある。中国は、日本が「弱い」存在であり続けるよう、日本の国内世論に揺さぶりをかけていると考えられる。
Q. 今後、日中関係はどのように展開し、両国はどのような落としどころを探っているのか?
この状況の最も現実的な落としどころは、日本が問題を起こした総領事を強制退去させるのではなく、中国側が自らの意思でその総領事を交代させることだろう。いわゆる「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)としての指定を避ける形で、中国の体面を保ちつつ、事態の収拾を図る狙いである。
過去の例を見ると、米国でも同様のケースで、問題を起こした中国外交官を強制退去させるのではなく、中国側が「任期満了」や「配置替え」という形で自主的に交代させた「リンダ・サン事件」がある。日本もこの「アメリカ式」解決策を模索している可能性は高い。
このような間接的な解決を目指す場合、事態収拾にはおよそ1ヶ月程度の時間を要すると考えられる。その間、日本側は問題の総領事に関連するイベントへの出席を拒否するなど、静かに圧力をかけ続けることで、中国の自主的な行動を促すだろう。日中双方ともに「どこかでこの対立を終わらせなければならない」という認識は共有しているため、今後、実務レベルでの話し合いは続くと思われる。
今回の外交官問題が仮に解決しても、根底に残る「台湾有事への日本の関与」というテーマが払拭されるわけではない。したがって、日中政府間の冷え込んだ関係はしばらく続く可能性が高い。ただし、民間交流まで全面的に停止する事態には至らず、全面的な経済制裁もまだ「高くない」レベルに留まるだろう。中国側も自国経済への影響を避けたい意向があるため、ここから大きくエスカレートするとは考えにくい。
Q. 対立の激化を防ぎ、最悪のシナリオを回避するために日本がとるべき現実的な対応とは何か?
日本政府が対立の激化を避けようと慎重な姿勢を見せる背景には、2012年の尖閣諸島問題を巡る衝突の苦い経験がある。
当時、中国国内では反日デモが激化し、日本企業や商店が破壊された。さらに深刻な事態として、出張中の日本人ビジネスマンが中国当局に不当に拘束されるという事件も発生している。

中国の政治体制は体面を非常に重んじるため、「弱みを見せる」ことを極度に嫌う。追い詰められると、予測不能な強硬手段に出る可能性があり、再び在留邦人が危険に晒されることは何としても避けなければならない。日本政府は、感情的に「勝つ」ことよりも、中国に多数在住する日本人や日系企業の安全確保を最優先課題として捉え、最悪のシナリオを回避するための現実的な判断が求められているのだ。