政策超分析
高市政権と台湾有事/集団的自衛権発動のタイミング/自衛隊の最新兵器を徹底分析
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2025年11月18日

「政策超分析」では、専門家が政策や国際情勢を徹底解説。今回のテーマは「日本の安全保障」。後編では、自衛隊の最新兵器を分析。台湾有事で自衛隊はどう動くのか。 <出演者> 峯村健司|キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 元朝日新聞編集委員。「LINEの個人情報管理問題」で21年度新聞協会賞受賞。中...
高市政権と台湾有事/集団的自衛権発動のタイミング/自衛隊の最新兵器を徹底分析
日本を取り巻く安全保障環境は激変している。北朝鮮によるミサイル開発の深化、中国による軍事行動の活発化、ロシアによる核兵器を用いた恫喝など、従来の想定を超えた脅威が現実味を帯びる。
このような国際情勢の中、日本はどのようにして自国の平和と安全を守っていくのか。最新の軍事技術の動向から、非核三原則の見直し、憲法改正に至るまで、タブー視されがちだった議論の必要性がかつてなく高まっている。本稿では、防衛の専門家の見解を基に、日本の安全保障が直面する課題と今後の展望をQ&A形式で解説する。

Q. 北朝鮮ミサイルの驚くべき進化とその脅威とは何か?
北朝鮮のミサイル技術はロシアからの技術供与を受け、急速な進化を遂げている。特に顕著なのが極超音速兵器の開発だ。2023年10月の軍事パレードでは新型の極超音速兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)が披露され、日本の防衛白書でさえ「かつてないほど深刻化している」と評価する。米国政府も北朝鮮の能力向上を過去数十年間で最も進んだものと認識している。

北朝鮮のミサイル開発の目的は、核兵器による金正恩体制の維持であり、その戦略は多角化している。米国向けには長射程の大型核弾頭ミサイル、日本や在日米軍基地、韓国向けには小型核弾頭を搭載可能な中短射程ミサイルを開発している。さらに、発射手段も地上だけでなく水中からの発射を可能にするなど、攻撃能力の多様化を図っているのである。
Q. 迎撃が困難な新時代のミサイルに対し、日本はいかなる防衛策を講じるべきか?
北朝鮮が開発を進める極超音速ミサイルは、その飛行特性から既存のミサイル防衛システムにとって極めて厄介な存在である。このミサイルは高度50km以下の低空をマッハ5以上の速度で不規則に飛行するため、地球の丸みの影響でレーダーによる早期探知が遅れる。また、弾道が読みにくいため、従来のイージスシステムによる迎撃は困難とされる。

このような「撃墜不可能な」ミサイルに対し、発射されてから迎撃する受け身の防衛策には限界がある。最も有効な対策は、敵のミサイルが発射される前に、その発射拠点を叩く能力、すなわち「攻撃力」を持つことだ。政府はこれを「反撃力」と呼称するが、これは国民への刺激を避けるための政治的配慮に過ぎない。しかし「反撃力」という表現は、「最初の攻撃は受ける」ことを前提とし、国民に犠牲を強いる印象を与えかねないため、より正確な「攻撃力」として認識すべきである。ミサイル飽和攻撃の脅威は現実的であり、イスラエルとイランの紛争では、攻撃を封じることの重要性が改めて示された。
Q. NPT体制の揺らぎの中、日本の核抑止はどのような変革が必要なのか?
ロシアによるウクライナへの核恫喝は、核不拡散条約(NPT)体制が実質的に機能不全に陥っている現実を浮き彫りにした。これにより、日本がこれまで全面的に依存してきた「米国による核の傘」もその有効性に疑問符が付いている。かつて核兵器の使用のハードルは高かったが、ロシアの事例のように、限定的な破壊力の戦術核兵器は恫喝の道具として実際に機能しており、その使用の現実的なハードルは下がったと考えられる。
米国の国防総省も、中国が台湾有事の際に劣勢に追い込まれれば、体制維持のために核を使用する可能性を指摘している。この厳しい国際情勢において、日本は「非核三原則」の一つである「持ち込ませず」を柔軟に見直すべき段階に来ている。米国が開発中の核弾頭搭載トマホークを搭載した艦船が、有事の際に日本の近くに展開する状況が想定される。しかし、「持ち込ませず」の原則を堅持すれば、補給のために港への寄港を拒否し、ひいては日本防衛への関与が揺らぐ可能性もある。このような国益に関わる重要事項について、法律に裏付けのない非核三原則を絶対視せず、現実的な議論を開始すべきだ。日本が米軍の核兵器を国内に「持ち込ませる」ことを容認し、さらにその使用決定に日本の意思を介入させることで、核抑止のプレイヤーとしての役割を強め、敵国の計算を複雑化させることが可能となる。
Q. 自衛隊の最新装備導入・開発が示す日本の防衛戦略の転換点とは何か?
日本は激化する脅威に対し、具体的な装備導入と開発を進めている。その一つが、米国からの「トマホーク巡航ミサイル」400発の導入である。射程1600kmのこのミサイルは、周辺国に対する日本の反撃能力を大幅に強化する。米国がトマホークを供与してきたのは世界で英国のみであった事実から、日本への売却は米国が日本を英国と同等の緊密な同盟国と位置付けている表れであり、日米同盟の深化を象徴している。ただし、トマホークの導入だけでなく、目標情報の取得、評価、運用後の効果確認まで含め、日米が一体となった体制の構築が不可欠だ。
並行して、日本は自律的な防衛力強化のため国産兵器の開発も加速させている。本来の主役と目されるのが、射程を1000km以上に延伸した「12式地対艦誘導弾能力向上型」である。これは陸上・海上・航空機から発射可能となり、トマホークが補う暫定的な反撃能力のその先を見据える。また、離島防衛の要として、上陸した敵部隊を即座に叩くための「高速滑空弾」の開発が進む。これは超音速で飛翔し、敵の対空ミサイル網を掻い潜って命中させることを目指す、まさに時間との戦いを制する切り札だ。さらに、米国が開発を断念した「レールガン」の開発にも防衛省は意欲的だ。電磁力で弾丸をマッハ6で発射するこの兵器は、火薬不要で安価な運用の可能性がある一方で、大電力や砲身の摩耗といった課題を抱える。しかし、このような革新的な挑戦自体が、日本の防衛産業と技術基盤を向上させる意味を持つ。
次期戦闘機の開発も重要な要素だ。日英伊の3カ国による共同開発は、莫大な開発コストと技術的リスクを分散し、製造数を確保することで一機あたりのコストを抑制するための合理的選択である。将来の戦闘は「全領域作戦」が前提であり、この次期戦闘機は宇宙からの情報収集や高速ネットワークと連携し、リアルタイムでの目標攻撃を可能にする必要があるだろう。
Q. 憲法9条と日本の安全保障の未来に向けた議論の焦点はどこにあるのか?
日本の安全保障議論において、憲法9条の問題は避けられない。特に、「戦力不保持」と「交戦権の否認」を定めた憲法9条2項は、自衛隊の存在やその能力に関して常に違憲論争の火種となってきた。安倍元総理が提案した「自衛隊明記」案は、公明党への配慮から9条2項を残した苦肉の策であり、自衛隊が特定の水準以上の装備を保有した場合、「違憲状態」であるとの批判が再燃する余地を残す。
本質的な解決策は、9条2項を削除し、自衛隊を「国防軍」として明確に位置づけることだ。これにより、主権国家として、各国と同様にシビリアンコントロールの下で防衛力を運用できるようになる。また、激変する国際情勢に対応するためには、集団的自衛権の全面的行使が必要不可欠だ。日本維新の会が提唱する日米豪比による「四海同盟」構想のように、価値観を共有する国々との多国間協力による集団防衛体制の構築は、中露朝といった真の脅威に対する抑止力を格段に高める。9条2項の撤廃こそが、これらの実現を可能にし、「日本の夜明け」を切り開く道筋だと言える。
Q. 日本の安全保障議論において「タブーなき対話」がいま重要であるのはなぜか?
戦後の日本の平和は、冷戦期の米国との同盟、そしてその後の米国一強という極めて特殊な国際環境の下での「奇跡」であった側面を持つ。憲法前文の「平和を愛する諸国民」を前提とした安全保障観は、もはや現実離れしている。現実は「平和を愛する諸国民」ばかりではなく、利害と力によって行動する国家が数多く存在することを我々に突きつけている。

このような現実を直視し、憲法、核抑止、専守防衛といった、これまでタブー視されてきた安全保障に関する議論をオープンに行うことが喫緊の課題である。この教訓は、福島第一原発事故から学ぶことができる。原子力政策を専門家に任せきり、国民全体がそのリスクを直視しなかった結果、未曾有の大事故発生時に政府最高レベルですら現場の状況や原子力施設の構造を把握できず、初動対応が大混乱した。これと同様に、安全保障をタブーとして直視しなければ、いざという時に国家として機能不全に陥り、国民の生命や財産を脅かす事態を招く恐れがある。感情論やイデオロギーではなく、リアリスティックな視点に立脚し、国民が主体となって議論を深めることが、現代の日本には不可欠だ。