
AIバブルは崩壊するのか?高市ラリーが続く条件
AIバブルの行方と日本株、高市政権が握る高値ラリーの鍵
AI関連株の急速な上昇が市場を賑わせている。これは一時的なバブルに過ぎないのか、それとも長期的な成長の始まりなのか。加えて、米中関係や国内の政治情勢など、日本株を取り巻く環境は複雑だ。ピクテ・ジャパンの糸島孝俊氏の分析を基に、市場の現状と今後の行方を読み解く。

Q. AI関連市場は現在、バブル状態にあるのか?
現在のAI関連市場は、崩壊が近づいているバブルと判断するには時期尚早である。テクニカルな過熱感や著名投資家の発言によって株価が一時的に調整された面もあるが、本質的には、最終的な勝者が数社に絞られる前の「ゴールドラッシュ」段階にある。NVIDIAやOpenAI、Microsoft、Amazon、Metaといった巨大企業群は生き残りをかけて巨額の投資を継続しており、この投資が続く限り市場は持続すると考えられる。
ただし、雇用面では懸念材料がある。AIによる省力化が若者やSE、物流関係者の失業率上昇につながり、この雇用の影が消費の冷え込みを通じて経済全体に悪影響を及ぼす可能性は否定できない。AIバブル崩壊の引き金は、いずれかの企業が圧倒的な優位を確立するか、新たな強力な競合が現れる時だ。その意味で、11月中旬に発表されるNVIDIAの決算は、市場の懸念を払拭し、AIラリーの継続を確認する重要な試金石となるだろう。
Q. 米国経済の動向は、今後どのように株価に影響を与えるのか?
現在のアメリカ株高の原動力は、景気悪化なしに政策金利が引き下げられるという「予防的利下げ」への期待である。しかし、インフレが再燃し利下げが困難になれば、株価の支えは失われかねない。歴史的に、国民の不満に直結するインフレを放置した政権は倒れるため、中央銀行は株価よりもインフレ抑制を優先せざるを得ない局面が訪れる可能性が高い。これが金融政策を困難にし、市場の不安定要因となる。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が現金比率を高めているのは、市場に不確実性が高く、見極めが難しい状況にあることの現れである。彼は短期的な調整以上の大きな下落を警戒しているのかもしれない。

Q. 米中関係の緊張と日本の立ち位置は、日本株にどのような影響を及ぼすか?
日本株は「世界の景気敏感株」であり、米中関係、さらには日中関係がパフォーマンスに大きく影響を与える。トランプ大統領のディール外交は、中間選挙対策として中国からのレアアース輸出規制の1年延期や米国産農産物の購入を一時的に引き出したものだ。しかし、米議会における対中強硬姿勢や台湾問題といった根本的な火種は依然として残されている。
高市総理がAPECで台湾要人と会談し、SNSで発信したことに対し中国が猛反発するなど、日中関係は緊迫している。これにより当面の日中首脳会談は難しく、関係悪化は日本株に重しとなる。来年初めにかけて米中・日中間の地政学リスクが高まる場合、日本株は調整局面に入る可能性に注意が必要だ。
Q. 海外投資家は日本株に何を期待しているのか?
日本株のEPS(1株当たり利益)は直近高値を更新しており、業績面から株価はしっかりと裏付けられている。今後、円安維持と米中関係の安定が続けば、さらなる業績向上も期待できる。現在の日本株のPER(株価収益率)は、米S&P500と比較して著しく低い水準にあり、これは日本企業への成長期待が低いことの表れだ。この低い期待値は、成長戦略への期待が高まることで株価が大きく上昇する潜在能力を秘めていることを意味する。

これまで多くの海外投資家は日本市場を無視してきたが、ようやく日本が変わりつつあると注目し始めている。彼らが日本株に本格的に資金を投じるかの最大の条件は、高市政権が安倍政権や小泉政権のように長期安定政権となるかどうかだ。政治の安定と政策の継続性が見込めれば、これまでの無視が一転し、巨額の長期資金が日本市場に流入し、株価を大きく押し上げるだろう。この点で、高市政権の誕生や高い支持率、外交デビューの成功は、期待を高めている。
Q. 高市政権の掲げる「責任ある積極財政」は日本経済と市場にどのような影響を与えるか?
高市政権が期待されるのは、短期的な株価押し上げ効果を持つアベノミクス的なリフレ政策と、財政の健全性・効率性を両立させる「責任ある積極財政」である。リフレ派の登用が市場には好感されており、短期的には積極財政が株価を支えると考えられる。
しかし、ヨーロッパの投資家から見れば、補助金頼みの国は成長しないとの指摘がある。高市政権には、旧態依然としたバラマキ型の補助金を見直し、本当に成長分野に投資する「メリハリのある」財政支出への転換が求められる。これは、アベノミクスで未完に終わった「3本目の矢」である成長戦略を成功させるための鍵となる。財政支出が単なる延命措置で終わらず、企業利益の増加、GDP拡大、そして最終的な税収増へと繋がる好循環を生み出せるかが問われている。特にAI・半導体分野は世界の潮流であり、米国のサプライチェーンへの組み込みという地政学的な追い風が吹く今が、日本のハイテク産業復活の最後のチャンスと言えるだろう。
成長戦略の具体的な発表が来年夏に予定されている点について、気の早い投資家からは「遅すぎる」との声も出ている。しかし、メンバーを一新し、抜本的な改革を目指すなら、拙速な発表よりも内容の濃さを追求し、時間をかけることが信頼獲得につながる可能性もある。政府には民間企業が思い切って投資できるよう、明確で政権交代に左右されない長期的な戦略と、柔軟な運用が求められる。
Q. 成長戦略を踏まえた個別銘柄投資のヒント、そしてその注意点は何か?
政府が注目する17の戦略分野は、個人投資家が銘柄を選別する上での重要なヒントとなる。自身の保有銘柄や投資対象がこれらの国策に合致しているかを確認することは有効だ。国策に合致する企業にはプレミアムがつき、株価上昇が期待できるだろう。

ただし、投資で利益を上げるには、「誰もが間違いない」と確信する前に投資することが重要だ。市場に存在する全ての投資家が良いと判断した時点では、既に株価はピークに達している可能性がある。防衛関連の重工各社や、「AI三兄弟」と呼ばれるソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストなどは、既に複数のテーマ性から大きく買われ、株価が上昇している。これらの銘柄に今から投資するかは、「AIは一時的なバブルではなく、今後も継続的な成長が期待できる」と強く信じられるかどうかにかかっている。買い時は押し目買いを狙うか、さらなる成長を信じて追うか、投資家自身の冷静な判断が問われる局面だ。
Q. 解散総選挙の可能性が、今後の日本株に与える影響は大きいか?
株価にとって最も望ましいシナリオは、高市政権が早期に解散総選挙に踏み切り、勝利して盤石な政権基盤を築くことだ。これにより政治の安定と長期的な政策運営が可能となり、国内外の投資家が安心して日本株に投資できるようになる。

解散総選挙の「大義」となり得る一つが、維新の主張する議員定数削減を巡る国会の行き詰まりである。もし維新との閣外協力が解消され、政権運営が困難になれば、高市政権は国民に信を問う形で解散に踏み切る可能性がある。高市首相としては、支持率が高い今のうちに選挙をすることで、単独過半数、あるいは維新との正式な連立によって安定多数を確保し、スピード感のある改革を実行したいと考えるのが自然である。日本株の長期的な方向性は、このような政治の安定化にかかっており、解散総選挙の行方を注視する必要がある。