
【大川智宏×児玉一希】日経平均5万円超はいつまで?/来年夏の暴落リスクに要警戒
日経平均5万円超は長続きしない?/半導体バブルの寿命はあと2年半
現在の株式市場はかつてない高揚感に包まれている。日経平均株価は史上初めて5万円台を突破し、多くの投資家が日本の経済成長への期待を膨らませているだろう。しかし、この株高の裏側には何が隠されているのか。そして、このお祭り騒ぎはいつまで続くのか。
本稿では、智剣・Oskarグループの大川智博氏と、YouTubeチャンネル登録者数28万人を誇る個人投資家の児玉一希氏の分析を基に、目覚ましい株高の真の理由、潜在するリスク、そして個人投資家がとるべき戦略をQ&A形式で深掘りする。表面的な数字に惑わされず、市場の本質を理解し、次の打ち手を考える上で貴重な視点を提供する。

Q. 日経平均株価5万円超えは日本経済好調の証なのか?
現在の株高は、日本経済の好転をそのまま反映するものではなく、米国市場のハイテク株高と円安に牽引されている側面が強い。日経平均は5万円を超えたが、この背景を理解せずに日本経済全体の好調だと捉えるのは危険だ。
円安の進行は、輸入品の価格上昇(輸入物価高)を引き起こし、国内企業のインフレを加速させるだろう。企業はコスト増加に苦しみ、消費者物価も上昇する。この状況はやがて日本銀行による利上げ圧力を高めることになる。

高市政権の誕生も株式市場にはポジティブな影響を与えた。積極財政、金融緩和、減税を掲げる経済政策は株式市場にとって好都合であり、政府が金融政策に積極的に関与するという姿勢は円安と株高をさらに推し進める要因となった。しかし、これは国際的な保護主義や自国第一主義の流れに乗じた側面もあり、日本の実体経済とは異なる文脈で市場が動いていると考えるべきである。
Q. 高値が続く株式市場で、個人投資家はどう動くべきか?
現在の相場は高値圏にあるため、新規の買いは慎重に行うべきだ。利上げは株式市場にとって引き締め策であり、株価は一旦調整される見込みだ。日経平均が5万円を割り込み、4万円台前半まで下落する可能性も十分に視野に入れる必要がある。
一方で、一部の強いセクターや、これまで出遅れてきたセクターには投資妙味がある。半導体関連銘柄はもちろんのこと、インフレに強い金属系の会社や建設関連は注目に値する。インフレ局面では通貨価値が下がるため、コモディティ(商品)への信認が高まりやすいからだ。
すでに多くの株式を保有している投資家の場合、下落時の精神的ダメージを和らげ、次の機会に備えるため、ポートフォリオの1割程度でも利益を確定し、現金比率を高めておくことが有効な戦略となる。全体が増えていても含み益の減少は心理的負担となるため、一部利確は精神的安定にも繋がるだろう。
Q. 米国株のハイテクブームはどこまで続くのか、来年半ばに暴落リスクがあるのはなぜか?
現在のハイテク株高、特にAIやデータセンター関連のブームはまだ道半ばに過ぎず、専門家の見方では「5合目」程度の段階である。業績的成長は今後数年間継続すると予測されているため、中長期的なトレンドは依然として強いままだ。
しかし、現在のハイテク株高は、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ方針が強い追い風となっている事実がある。過去のデータを見ても、政策金利の低下はナスダック指数の上昇と相関関係を示してきた。利下げが継続されるとの前提で株価は高騰している状況である。
問題は、米国の景気自体は依然として弱くない点にある。このような状況で利下げを続けると、景気が過熱しインフレが再燃する危険性が高まる。もしインフレが再燃すれば、FRBは利下げを停止、あるいは再び利上げに踏み切らざるを得なくなるだろう。この転換点が来年半ば頃に訪れる可能性があり、その際には利下げを前提に買われてきたハイテク株が暴落し、日経平均を含む市場全体も急落するリスクを孕む。2022年のように大幅な市場調整が起こる可能性もテールリスクとしては存在している。
Q. 米国の景気が弱くないのに利下げが行われている背景に何があるのか?
現在の米国経済には「雇用が悪化しているのに消費が強い」という歪んだ構図が存在する。雇用統計が悪化しているのは、AIに代替されやすい若年層や移民の失業率が上昇していることが主な要因である。Amazonのような大企業でも、好業績の中でも人員削減を前向きに進める動きが見られる。
しかし、こうした層は相対的に資産が少ないため、彼らの失業は全体の個人消費に大きな影響を与えない。一方で、株高で資産を増やした富裕層の消費は引き続き旺盛だ。この富裕層が景気を下支えしており、雇用全体の悪化にもかかわらず小売や外食産業が強く伸びている背景にある。

FRBは、この歪んだ雇用統計のデータのみを見て利下げを続けているため、実体経済の過熱とインフレ再燃のリスクをはらんでいる。利下げが止まればインフレになる可能性が高まり、その結果としてより強力な金融引き締め(利上げ停止、あるいは再利上げ)を強いられる事態になれば、市場は壊滅的なダメージを受けるかもしれない。
Q. 米国株でハイテク以外に注目すべきセクターはあるか?
米国株投資の鉄則は「順張り」である。弱い銘柄の逆張りは機能しにくく、業績が良い銘柄が素直に評価され株価も上昇する。この点、実は米国株は日本株よりもシンプルで、勝ちやすい市場だと言える。
ハイテク株に関しては、金融政策起因で一時的な暴落が訪れても、数年間続くであろう業績的な成長を考えると絶好の「押し目買い」の機会となるだろう。NVIDIAのような半導体だけでなく、AI投資に伴う電力インフラ企業、さらにはAI活用サービスを提供する企業へと恩恵が波及する流れを意識した分散投資が賢明である。
ハイテク以外で目を向けると、現在の好調な米国内需を背景に「アパレル小売」と「エンタメ」セクターが驚くべき強さを見せている。具体的な企業としては、コーチを擁するタペストリーや、Netflix、Disney、スポーツエンタメのTKOホールディングス(WWEなどを傘下にもつ)などが挙げられるだろう。
例えば、Netflixは最近一時的に決算発表で純利益の悪化が報じられ株価が急落したが、これはブラジルにおける一時的な税金費用が主因であり、本業の売上は依然として強く、長期的に見れば心配はいらないと指摘されている。これらの内需関連・ディフェンシブなセクターは、ハイテク株が調整局面に入った際の資金の「逃げ道」としても機能するため、ポートフォリオに加える価値は十分にある。
Q. 日本株市場において、高騰するハイテク株以外で今注目すべきセクターはどこか?
日本株市場では、一部のハイテク株に牽引された結果、全体の株高とは裏腹に多くの銘柄が「放置」されている状況にある。日経平均を構成する225銘柄を見ても、騰落率の格差は過去最高に拡大している。そのため、日経平均がいくら上がろうとも自身の持ち株が上がらないと感じる投資家が多いのは自然な現象だ。このような状況下で投資機会を見出すには、市場の「誤解」によって割安に放置されているセクターに目を向けることが重要である。特に「銀行株」と「百貨店株」は、現在、市場で評価されていないが、本来であれば追い風を受ける要因を内包していると考えられる。
Q. 個別で「銀行株」と「百貨店株」が狙い目とされるのはなぜか?
「銀行株」は高市政権が誕生した後、市場全体が上昇する中で逆行して売られた。これは高市氏の金融緩和継続の意向から「金利が上がらず銀行の利ザヤが悪化する」と市場が短期的に誤解したためだ。しかし実際には、短期金利(銀行の調達コスト)は低く抑えられつつも、長期金利(貸出金利)は上昇しているため、銀行の収益源である長短金利差は拡大傾向にある。この市場のミスプライスは絶好の投資機会と言えるだろう。特にメガバンクは、貸出ビジネスの規模が大きく、この長短金利差改善の恩恵を最も大きく享受できるため有望である。

「百貨店株」も同様に、訪日ビザの手数料値上げ報道を受け、インバウンド需要の減少が懸念され売られた局面があった。しかし、これは市場の過剰反応である可能性が高い。百貨店で高額商品を購入するような富裕層が、わずかなビザ代の値上げで来日を取りやめるとは考えにくい。そのため、インバウンド需要への影響は限定的だろう。加えて、海外のラグジュアリーブランド(LVMH、ケリングなど)の売上が中国を含むアジア地域で底を打ち、回復基調にあることも好材料だ。インバウンドによる高額消費が引き続き期待できるため、一時的に調整している今こそ百貨店株への投資好機と捉えるべきである。
