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トランプの後は「極左」が躍進する。10年後の日米欧
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2025年11月5日

地政学と歴史を踏まえると、「10年後の世界」をどう予測できるのか?米国、中国、欧州、日本はどう変わるか?通貨、株価、AIはどう動くのか?エコノミストのエミン・ユルマズ氏に予測してもらった。 <ゲスト> エミン・ユルマズ|エコノミスト トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界...
アメリカ・欧州・日本の未来を読み解く: 激動の時代の経済と政治の行方
世界の経済と政治は激動の時代を迎えている。かつてない速さで進む社会情勢の変化の中で、何が起こり、どのように対応すべきか、多くの人々がその羅針盤を求めている。本稿では、アメリカの政治構造の変容から、欧州が直面する移民問題と中国との関係、日本経済復活の好機、そして現代を席巻するAIバブルの真実まで、グローバルな視点から多角的に分析し、来るべき未来の展望を探る。

Q. アメリカ政治はどのように変質しているのか?
ドナルド・トランプの登場は、従来のアメリカ政治のルールと常識を破壊し、その戦い方で大統領の座を射止めた。この前例は、今後の民主党にも大きな影響を与え、「トランプ化」した民主党、すなわち逆方向の極左ポピュリズムの台頭を促す可能性が高いとみられる。政治は空白を許さないため、トランプ政権下で活力を失った民主党の支持層という空白を埋める、新たなカリスマ的リーダーが必然的に現れると予測される。

ニューヨークでは、「社会主義者である」と公言し、富裕層を攻撃する政治家がすでに支持を集めている。これは、かつて世界恐慌時代にF.D.ルーズベルトがニューディール政策で銀行や金持ちを叩き、セーフティネットを構築した歴史の再現にもなりうる。トランプが労働者層に訴えかけながらも伝統的な共和党政策を進めたことで、彼らの不満は解消されなかった。このため、「ビリオネアを潰す」と堂々と宣言するような、若いバーニー・サンダース的な極左ポピュリストが台頭する土壌は十分にあると言えよう。
Q. 欧州は移民問題と中国との関係にどう向き合っているのか?
欧州連合は単一の国家として機能するのではなく、加盟各国がそれぞれの国益を優先して動く現実がある。ドイツはドイツ中心的、フランスはフランス中心的に行動を続けるであろう。欧州における右傾化と移民問題は大きく報じられるが、移民は同時に経済的な活力を与える存在でもある。特に、トルコやシリアなどから流入する近年の移民には優秀なエリート層が多く、欧州の人的資本を強化する側面も存在する。深刻な高齢化に直面する欧州にとって、移民がいなければ経済活動は立ち行かなくなり、社会が崩壊するリスクも秘める。報道の裏側には、経済を支える移民の存在が不可欠であるという現実が存在する。
中国との関係については、アメリカとは異なり、欧州は中国を覇権を争う脅威とはみなしていない。地理的に陸続きであり、中国の高級ブランド品購入や観光客としての訪問は欧州経済にとって重要だ。中国が提唱する「一帯一路」構想、すなわちシルクロードの復活はユーラシア大陸全体の経済に恩恵をもたらし、欧州と中国の経済的な相互依存関係を深める要因となる。この状況は、太平洋を隔てたアメリカを最も不利な立場に置く可能性を秘める。ロシア問題が解決すれば、欧州と中国の関係はビジネスパートナーとしてさらに強化される可能性が高い。
Q. 日本経済の復活シナリオにおいて、何が重要なチャンスとなるのか?
米中新冷戦の時代において、アメリカは中国のサプライチェーンに依存せず、信頼できる同盟国に製造を委ねたいと強く願っている。これは、日本にとってかつて「製造大国」として繁栄した戦後の高度経済成長期と同様の絶好の機会と言える。ロボット、ドローン、半導体、造船など、アメリカは自国で製造能力を失った分野で、日本にその役割を求めている。現状の円安がアメリカに黙認されている背景には、日本に安価な製造拠点としての役割を期待する思惑があると考えられる。
この好機を最大限に生かすためには、日本の「規制を先に作る」という欧州的な悪癖を断ち切る必要がある。日本は新しい技術に対し、発展を阻害するような過剰な規制を導入しがちで、これがイノベーションを妨げている。アメリカではまず自由に発展させ、問題が生じたら後から規制を考える。日本もこの思考に転換し、ドローンやEVといった新興分野で、現状の足かせとなっている規制を大胆に撤廃すべきだ。思い切った規制緩和こそが、日本が「製造大国」としての地位を取り戻すための不可欠な要素である。思想的にトランプ政権と近いとされる政権がこの改革を推し進めれば、日米の連携は一層強まり、防衛産業を軸とした製造業強化を通じて日本経済復活の道筋が見えてくるだろう。
Q. 日本における外国人排斥感情の背景と、優秀な人材を獲得する戦略とは?
日本で近年高まる外国人に対する反発感情は、単なる移民排斥主義に起因するのではなく、むしろコロナ禍明けの急激なインバウンド観光客増加が主要因である可能性が高い。インフラ整備が追いつかない中で外国人観光客が急増したことで、多くの国民が「迷惑だ」と感じるようになり、これが外国人全般への不満につながったとみられる。新幹線の荷物棚が大型スーツケースに対応できないなど、日本のインフラが国内旅行向けに設計されていることが、許容範囲を超えた現状に対応できない一因となっている。国民の心構えも追いつかないうちに外国人人口が増えたことが、反発の根源と言えるだろう。
労働人口減少問題を抱える日本にとって、優秀な外国人材の受け入れは不可欠だが、その戦略を見直す必要がある。単純労働者を即座に受け入れるのではなく、若く優秀な留学生を奨学金制度を通じて積極的に誘致することが賢明である。科学オリンピックの優勝者など、高いポテンシャルを持つ若者を国としてスカウトし、留学期間中に日本語や日本の文化に適応させることで、摩擦の少ない形で優秀な人材を育成できる。サッカーチームが世界から才能をスカウトするのと同じように、将来を見据えた人材獲得戦略を採るべきだ。大量の移民受け入れはAI化が進む社会で必ずしも最適ではないが、技術立国を目指す日本には、優秀なエンジニアや研究者の存在がより一層求められる。少子化で定員割れに悩む大学を留学生の受け入れ先として活用し、彼らが日本に愛着を持つような環境を整備することも重要である。
Q. AI株の現状は「バブル」と呼べるのか?そのリスクと今後の見通しは?
現在のAI関連株の異常なまでの高騰は、実体経済の成長に裏打ちされたものではなく、一部企業間で行われる「循環取引」によって膨らんだ「完璧なバブル」であると断言できる。歴史上、弾けなかったバブルは存在しない。このAIバブルも、いずれ必ず崩壊する運命にあると言えよう。バブルは、不動産バブル(リーマンショック)やITバブルのように、崩壊の数年前からその兆候は認識されるが、正確な崩壊時期をピンポイントで予測することは不可能だ。株価の長期的な上昇トレンド(プロセス)は予測可能だが、バブル崩壊のような「イベント」は予測できないと理解すべきである。AI関連の熱狂が、外部からの実需であるリアルキャッシュフローを伴わない「コップの水を回しているだけ」の状態である以上、その限界はいずれ必ず来る。AIが社会を変革する可能性自体は本物だが、市場の過熱ぶりはそれとは一線を画す。最先端のAI研究者たちは、AGI(汎用人工知能)が人間のように思考することはないと認識しているが、このバブルから利益を得ている多くの関係者が熱狂を長引かせたいと考えているのが現状である。

このAIバブルが崩壊すれば、個別株において7割から8割の暴落もあり得る。2022年のコロナバブル崩壊時、ナスダックは4割、テスラやメタは75%もの株価を失った事実を忘れてはならない。多くの投資家がこの激しい下落によって市場から退場を余儀なくされた。当時の日本株はオールドエコノミー中心であり、米国のハイテク株暴落に対しては比較的軽微な影響にとどまった。この経験を踏まえると、次のAIバブル崩壊においても、日本株は相対的に強固な状況を保つ可能性があるため、資金をアメリカから日本へシフトすることも有効な戦略となり得るだろう。また、バブルから距離を置く割安な銘柄や、防衛関連株のような逆張り的な投資セクターにも目を向けることが賢明だ。
Q. 10年後の日本の経済状況と、変化の時代を生き抜くために必要な心構えとは?

現在の状況が続けば、日本の日経平均株価は10年後の2035年には12万円に達し、2050年には30万円という予測も十分に現実的な範囲にある。過去十数年で日経平均が8〜9倍に成長した事実を振り返れば、この目標は保守的とさえ言える。激しいインフレと社会構造の変革が同時に進むこの時代を生き抜くには、単なる資産運用だけでは不十分だ。AIが進化するにつれ、「知識は不要になる」といった論調が見られるが、これは誤りである。知識のある人間がAIを使いこなせば、その能力は飛躍的に増幅される。しかし、知識のない人間がAIを使っても、汎庸的なアウトプットしか得られず、AIを強力な武器として活用することはできないだろう。自分の専門分野の知識を深め、そこにAIを付加することで、これまで以上の力を発揮する道が開ける。目先の情報に惑わされず、歴史や地政学といった普遍的な知識を学び、「大局観」を持って世界が向かう方向を見極めることが、未来を賢く生き抜くための鍵となる。