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森保一に監督オファーを出した理由:シント=トロイデン立石CEO
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2025年10月13日

数多くの日本代表選手を輩出している、ベルギー1部リーグのシント=トロイデンVV。今、世界のクラブ経営はどう変化しているのか?Jリーグをどう進化させるべきか?日本代表をどう強化すべきか?立石敬之CEOにレギュラーメンバーがラウンドテーブル方式で聞いた。 <ゲスト> 立石敬之|シント=トロイデンVV ...
日本サッカーを次のステージへ導く:森保監督の挑戦と世界で勝つための戦略
日本サッカー界はワールドカップ優勝という壮大な目標に向け、様々な議論と変革の時期を迎えている。海外からの注目を集める森保監督のリーダーシップ、大谷翔平のようなトップアスリートをサッカーに引き込むスカウト戦略、そして若手育成におけるグラウンド不足や指導法の課題。これら多岐にわたるテーマを通じて、日本サッカーの現状と未来、そして世界で戦うための道筋を探る。
Q. 森保監督はなぜ欧州クラブから監督オファーを受けたのか?
シント=トロイデンから森保監督にオファーがあった背景には、彼がワールドカップでスペインとドイツを破ったという実績が大きく作用している。欧州において無名の日本人監督は「日本企業が呼んだ」と批判されがちだが、「強豪を破った監督」という国際的ブランドは、メディアや地元市民の受け入れを容易にする。AFCライセンスをUEFAライセンスへ書き換える際にも、その「実績」が特例を認める有力な要素となるからだ。現地で森保監督の指導力がまだ知られていない段階でも、その名前のインパクトは計り知れないマーケティング効果と対外的な信頼をもたらすだろう。

また、日本人経営陣としては日本人選手を育成するというクラブの方針と、3-4-3や4-2-3-1といった日本代表に近い戦術を用いる森保監督のスタイルが合致する点も重要視した。過去には「日本人はフットボールを語るな」と日本人経営陣を見下す欧州指導者も少なくなかった。しかし、日本人選手や文化を理解し、経営陣と密接に連携できる森保監督の存在は、クラブにとって貴重である。日本に来る外国人監督は通訳を使うのが一般的であるように、海外で日本人監督が通訳を用いることに抵抗を持つ必要はないという姿勢も、彼の挑戦を後押しするだろう。
Q. 日本サッカーが世界で戦える選手を増やすには何が求められるのか?
日本がプレミアリーグで常時活躍するような選手を増やすためには「スカウト」が極めて重要な鍵を握る。他競技で活躍する高い身体能力を持つ人材、例えば大谷翔平級の選手がもしサッカーを選んでいれば、日本サッカーのレベルは大きく変わっていたかもしれない。身体能力の高い子どもが野球やバスケットボールなど、他のスポーツに流れている現状を変え、いかにサッカー界に引き込むかが勝負の分かれ目となるだろう。これには単にスカウトを強化するだけでなく、育成年代から適切な指導環境を整備することが不可欠だ。

しかし、日本、特に都市部におけるサッカーの環境面は、深刻なグラウンド不足に直面している。スペインの指導者がグラウンド不足はありえないと語るように、練習場所の確保は日本の大きな課題だ。解決策としては、商業施設内のフロアやビルの屋上などを活用したフットサルコートの設置、あるいは地域と連携し使われていない土地にコートを整備するなど、既存のインフラを有効活用するアイデアが求められる。これはJリーグや日本サッカー協会だけでなく、スポーツ庁を含めた国家レベルでの取り組みが必要である。気軽にサッカーに触れる機会を増やすことで、将来のタレントを発掘する裾野を広げられるだろう。
Q. 部活動が変化する中で、次世代選手を育てるには何が必要か?
少子化と教員の負担増により、中学校の部活動が縮小・廃止の危機に瀕している。日本のスポーツ文化を支えてきたこの基盤が失われれば、多くの子供たちがスポーツに触れる機会を失ってしまうだろう。Jリーグや地域クラブがその受け皿となることは必須だが、それだけでは不十分だ。学校施設、例えばグラウンドを夜間や休日に有料開放し、地域クラブや民間団体に利用させる仕組みを構築すべきである。これにより学校は新たな収益源を得られ、地域クラブは活動場所を確保できる。また、子どもたちにとっても学校終わりにそのままスポーツができるため、生活リズムを効率化し、心身の成長に良い影響をもたらすだろう。これはスポーツ界全体で連携し、新たなスポーツ文化を築くための国家レベルの課題である。

育成年代の指導法の改善も不可欠だ。現在の日本には、小学校年代で身体能力が高いというだけで「裏に蹴って走らせる」指導が横行している。足が速い子や体の大きい子はそれで勝ててしまうため、技術や戦術を学ぶ機会を奪われることがある。しかし、中学生や高校生になり体格差が埋まると、そうした単純なサッカーでは通用しなくなる。結果的に才能を潰してしまうケースも少なくない。本当に必要なのは、サイズのある子ほど、幼少期からボールコントロールや判断力を徹底的に教え込む「エリートプログラム」を導入することだ。勝利至上主義ではなく、個々の成長を促す指導が日本の未来を担うタレントを育てる。
Q. 絶対的ストライカーが不在の日本代表がワールドカップで勝ち切るために何が必要か?
日本代表にとって、エムバペやハーランドのような世界トップレベルの絶対的ストライカーの育成は長年の課題である。彼らの持つ並外れた身体能力に加え、ワールドカップ決勝でPKを決めきるメンタルのタフさを、日本の社会やサッカー文化の中でどのように育むかは極めて難しい。しかし、現代サッカーにおいて絶対的ストライカーがいなくても勝てるチームは存在する。例えば、パリ・サンジェルマンのデンベレのように、ウイングの選手が得点源となったり、ジルーが献身的に動きエムバペを活かすようなチームの組み合わせと戦術構築によって、得点力は生み出せる。

重要なのは、個人の力に依存するのではなく、現有の選手たちをどのように組み合わせ、最高のパフォーマンスを引き出すかという指導者の「戦術眼」である。多くの指導者が「選手がいない」と嘆くことがあるが、それは思考停止に等しい。手持ちのカードで最適な解を導き出すことこそ、指導者の真の腕の見せ所だ。選手の特性を見抜き、効果的な戦術に落とし込む能力こそが問われる。したがって、日本人指導者の質の向上と、日本のS級ライセンスが欧州で認められるような制度の整備が、彼らが世界で経験を積み、成長するための道を拓くだろう。
Q. 森保監督のリーダーシップと采配にはどのような特徴があり、日本代表にどう影響しているか?
森保監督は、普段のトレーニングや戦術の落とし込みをコーチ陣に任せるマネジメントスタイルを取っている。一見、最終的な意思決定に迷いがあるように見えることもあるが、これは自身が監督として決めるべき場面まで、あらゆる選択肢を準備させる期間と捉えられる。彼は、多くの事柄を任せつつも、本番では勝つために「俺色」の采配を打ち出す勝負師だ。前回のワールドカップでも、大会直前でチームの軸が固まり、本番で強さを見せたことは記憶に新しい。選手選考や交代のタイミング、ゲームの運び方など、監督が直接介入できる数少ないポイントでこそ、その真価が問われるだろう。
日本代表が最近見せた戦術的な迷いは、冨安、板倉、町田、伊藤洋輝といった守備の主力選手たちの不在が大きな原因である。守備からのビルドアップを重視する森保監督の思考回路からすれば、これらの主力DF陣が揃わない現状は、理想のサッカーを展開する上で致命的だ。DFラインをわずか5メートル高く保てないだけで、三笘や堂安といった攻撃的選手が守備に戻る時間が増え、彼らの攻撃力が半減してしまう。選手の個人技量ばかりが語られがちだが、本質的にはDF主力の不在によるチーム全体の機能不全が、戦術の迷いを引き起こしているのだ。しかし、森保監督は本番では現実的な采配に切り替え、堅守速攻を徹底することで、再び結果を出す可能性を秘めている。