
高市トレードで年内155円へ向かう
高市新政権が牽引する「異次元の円安」とは?市場関係者が警戒するトリプルアクセルの行方
サプライズとなった高市新総裁の誕生は、日本市場、特に為替市場に大きな動揺をもたらした。市場では「円安加速」の観測が強まり、これまでの金融政策や財政政策に対する期待が大きく転換しつつある。
高市氏の掲げる政策は、日銀の金融政策とどのように絡み合い、今後の円相場、さらには日本経済全体にどのような影響を及ぼすのか。識者の見解を交えながら、そのメカニズムと潜在的なリスクをQ&A形式で深く掘り下げる。

Q. 高市新総裁の誕生は為替市場にどのような影響を与えるか?
高市新総裁は、記者会見などで日本銀行法第4条に言及し、日銀の金融政策は政府の政策と整合的であるべきとの立場を明確に示した。これは、日銀の自主性を尊重する第3条よりも政府との協調を優先する姿勢である。具体的には、利上げに対して抵抗する考えであり、これにより市場が織り込んでいた日銀の利上げ期待は大幅に後退する見通しである。

高市氏のこのスタンスは、実質金利の大幅なマイナス状態を維持、あるいはさらに拡大させる方向に作用するため、円の価値を押し下げる大きな要因となると考えられる。
Q. なぜ高市新政権では円安が加速するのか?アベノミクスとの違いは何か?
高市氏の金融緩和に対する姿勢は、安倍政権時代の政策と類似している点が多い。中央銀行に対する政治的関与の度合いは、アベノミクス期の安倍元首相や、過去に連邦準備制度理事会(FRB)に圧力をかけたトランプ前大統領とも共通する側面を持つ。
しかし、決定的な違いはアベノミクス開始当時が低インフレであったのに対し、現在は高いインフレ率が継続していることである。このような高インフレ環境下で金融引き締めを行わず、緩和的な金融政策を維持すれば、実質金利はさらにマイナス幅を広げ、アベノミクス期を上回るペースで円安が加速する可能性が高い。市場で織り込まれていた10月、さらには年度内の利上げ期待も大幅に後退しており、円売り圧力は増大するだろう。
Q. 高市総裁の財政政策は円安にどう影響するのか?
高市新総裁が推進すると見られる積極財政も円安の要因となる。インフレ対策として提示されている補助金や交付金、減税といった政策は、需要を刺激し、結果的にインフレ率をさらに高める方向へ作用する。
このような積極的な財政政策を金融引き締めで抑制しない場合、「緩和的な金融政策」と「緩和的な財政政策」のミックスにより、実質金利はさらに大幅なマイナス水準へと押し込まれる。これは極めて強い円安圧力を生み出すだけでなく、株高やさらなるインフレを招き、経済のバランスを不安定にするリスクを抱える。
Q. 投機筋はどのように反応し、円相場にどのような影響があるのか?
これまで日銀の利上げを期待して円ロング(円の買い持ち高)ポジションを積み上げてきた投機筋は、高市新総裁の誕生によってシナリオの根本的な変更を迫られるだろう。このため、まずは積み上がった円ロングポジションの巻き戻し、つまり円売りが進む可能性が高い。これが初期的な円安加速の主要な原動力となると考えられる。
さらに、円安のボラティリティが低下し、日本の低金利政策が長期化すると見れば、投機筋は円を売ってより金利の高い他通貨を購入する「円キャリートレード」を活発化させる可能性がある。この動きが、長期的な円売り圧力と円安傾向を強化することになるだろう。
Q. 今後のドル円相場の具体的な見通しは?株価への影響もどうなるか?
現在の為替水準から、年内には1ドル155円程度までの円安進行が現実味を帯びる。さらに高市政権が長期化するようなら、中長期的な円安基調は確固たるものになるだろう。同時に、株価にも追い風が吹くと見られ、名目的な企業収益の増加やインフレの進行を背景に、日経平均株価は年内に4万8000円、将来的には5万円といった水準も視野に入る。

ただし、これはあくまで「名目値」の膨張であり、実質的な国民生活の向上に直結するわけではない点に注意が必要である。高揚感とともにインフレが進めば、賃金がそれに見合わずに実質的な購買力が低下し、資産を持つ層と持たない層との間で格差が拡大するリスクも高まる。
Q. 対米投資に外貨準備を使うことにはどのようなリスクがあるのか?
日本政府が検討している対米投資の財源として外貨準備を使用する案は、極めて大きな潜在的リスクをはらむ。外貨準備は短期債で調達されており、その資金を長期の対米直接投資に充てることは、日本の財政に巨大な金利リスクを負わせることに繋がる。さらに、為替介入の「弾薬」ともいえる外貨準備が固定化されれば、いざという時にドル売り介入が困難になるという重大な問題が発生する。

市場介入の余地が低下することは、投機筋にとって円売りを仕掛ける格好の機会となりかねない。円安が進行しても効果的な介入ができない状況に陥れば、過去に例を見ないほど急速な円安の進行を招く恐れがある。
Q. 高市新政権下の今後の市場動向で注目すべき点は何か?
今後の市場動向を占う上で、以下の3点が特に重要となる。一つは「連立政権の行方」であり、これが円滑に進むか否か、高市氏が首相になるかどうかは依然として不確実な要素を持つ。二つ目は「高市総裁の日銀に対する具体的な発言」で、利上げをどの程度牽制するか、あるいは財政政策にどれほど積極的な姿勢を示すかが市場の変動に直結する。
三つ目は「10月後半に予定される日米首脳会談におけるトランプ大統領とのやり取り」である。特に、対米投資に関して日本側がどこまで主体性を発揮できるか、外貨準備の使用に関して米側との合意がどのような影響を及ぼすかは、為替市場の円安圧力を測る重要な指標となるだろう。これら注目のポイントは、今後の円相場と日本経済の命運を大きく左右する。