ECONOMICS101
【田中渓vs永濱利廣】年末マーケット大予測
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2025年9月30日

日経・東証IRフェア2025で開催された注目対談「2025年年末マーケット予測」を大公開。永濱利廣氏と田中渓氏が語る今後の経済とは。 <ゲスト> 永濱利廣|第一生命経済研究所 首席エコノミスト 早稲田大学卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。第一生命保険入社後、日本経済研究センターを経て、...
2025年末マーケット大予測:総裁選から金融政策まで経済を読み解く鍵
日本経済は今、日経平均株価が過去最高値を更新するなど好調な動きを見せているが、その背景には国内外の複雑な要因が絡み合う。アメリカの金融政策、日本の自民党総裁選の行方、そして不動産市場や為替動向が2025年末にかけてどのように推移するのか、エコノミストの長濱氏と不動産投資家の田中氏の洞察に基づき、主要なマーケット予測をQ&A形式で深く掘り下げていく。目の前の経済事象が我々の生活に与える影響と、それにどう向き合うべきかを探る必要があった。

Q. なぜ今、日本株はこれほど強い動きを見せるのか?
現在の日本株高を牽引する主な要因は三つあると専門家は指摘する。一つはアメリカにおける利下げ観測の強まりである。二つ目に、AI技術の発展とそれに伴う半導体関連銘柄のブームが市場を活気づけている点が挙げられる。そして三つ目が、自民党総裁選に対する市場の期待だ。「誰が総裁になってもこれまでの政権よりはマシになる」という漠然とした楽観論に加え、過去の経験則(アノマリー)として総裁選前は株価が上昇しやすい傾向も作用している。しかし、田中氏はアメリカ市場に追随する日本の動きに言及し、通貨安が伴う株高に複雑な感情を抱く旨を述べている。

Q. 次期総理大臣は誰になり、日本のマーケットにどのような影響を与えるのか?
長濱氏の自民党総裁選の勝利予測は、小泉氏50%、林氏30%、高市氏20%である。候補者乱立により票が割れ、決選投票にもつれ込む可能性が高いが、その場合、主流派が保守積極財政を掲げる高市氏以外の候補を推す傾向がある。政策がマーケットに与える影響を候補者別に考察すると、金融緩和に前向きな高市氏は株価・不動産市場にとって最もポジティブな要因となるが、財政リスクは指摘される。林氏は緊縮財政寄りであり株価には厳しい影響を与える可能性があり、最有力とされる小泉氏は、改革意欲が見えにくいため株価への影響は限定的だろう。なお、ネット民の声と党員の投票行動には乖離が見られる点も注目すべきである。

Q. 不動産市場に潜む大きなリスク要因とは何だろうか?
不動産市場は金融政策(金利動向)と密接に連動しており、金融緩和的な政策が続けば価格は維持または上昇しやすい。しかし、市場を揺るがす二つの大きなリスクが指摘されている。一つは、外国人による住宅購入規制の強化である。都心部では外国人の購入による価格高騰で日本人が住めなくなる問題が深刻化しており、規制を求める声が高まっている。だが、経済全体への影響が大きく、政策決定者は慎重な姿勢を見せる「チキンレース」状態にある。もう一つは国籍を問わない「短期転売規制」である。こちらは投機的行動を抑制する狙いがあるが、プロの機関投資家は通常、中長期保有を前提としており、規制が導入されるとしても投機筋に限定された措置となる可能性が高いだろう。政策的な規制は経済に予期せぬ影響をもたらすため、その動向が注目される。
Q. 米国の利下げ観測と現実にはどの程度の乖離があるのか?
現在の市場は年内に2回の米国利下げを織り込んでいるが、長濱氏の見通しでは1回に留まる可能性が高いとされている。これはインフレが根強く高止まりしているためである。米連邦準備制度理事会(FRB)は雇用の最大化と物価の安定という「デュアルマンデート」の下で金融政策を決定している。雇用の悪化を重視して早期利下げを主張する声もあるが、自動車輸出における価格転嫁の遅れなどを考慮すると、インフレは依然として収まりきっていない状況にある。来年になればトランプ関税の影響などでインフレが緩やかに減速し、利下げペースが加速する可能性も示唆される。しかし、年末にかけては利下げ観測の後退が株価の調整を招く可能性が高いと見られる。
Q. 円安基調は構造的なものとして今後も継続するのか?
現在の円安は一過性のものではなく、構造的な要因が強く作用しており今後も継続する可能性が高い。貿易赤字や日本企業の旺盛な対外直接投資による「実需の円売り」が増大している状況である。かつてのような1ドル110円台への円高水準は、リーマンショックやコロナショックといった100年に一度級の危機が再来し、米国がゼロ金利政策を採る事態にでもならない限り望めないだろう。仮に日米間の金利差が縮小したとしても、中立金利レベルでの新たな為替の均衡点は130円台となる可能性が高いと専門家は見ている。これは、ドルで給料を受け取っていた者にとって円安が有利に働くという逆説的な現実を突きつけるものであった。
Q. 日本経済は景気後退に陥るとしても、生活への影響は軽減されるのだろうか?
トランプ関税の影響により世界経済が減速し、直接関税を課されていなくとも日本経済は軽微な景気後退(テクニカル・リセッション)に陥る可能性が高い。これは2018年の前回関税発動時にも見られた現象であり、今年7月以降、日本の景気動向指数CIも下落傾向にあるため、既に景気後退局面に入っているとの見方もある。ただし、リーマンショック級の深刻な不況とは異なり、欧州債務危機時のように生活への実感が乏しいレベルに留まるだろう。逆説的に、世界経済の減速は輸入インフレの鈍化をもたらす。同時に国内では賃金上昇、特に春闘における賃上げ効果が継続するため、来年度には「実質賃金」がプラスに転じ、人々の生活の苦しさは緩和されると期待される。景気は後退しても、人々の懐は相対的に温かくなる見込みである。

Q. 金融政策の決定要因として注目すべき要素は何か?
米国の金融政策の決定には、経済を過熱も冷やしもしない理想的な「中立金利」が重要な指針となるが、その水準については学者の間でも意見が二分している。脱グローバル化によるインフレ圧力を重視し「中立金利は高め」と見る意見がある一方、格差拡大や少子高齢化といった構造的デフレ要因を重視し「低め」と見る意見がある。この理論的論争以上に現実の金融政策を左右する決定要因となるのが「原油価格」である。地政学リスクの勃発などで原油価格が高騰すれば、インフレが再燃し利下げが困難となることがマーケット最大のリスクシナリオとなる。一方で、日銀のETF売却方針は売却完了まで100年以上を要する極めて長期的な計画であり、市場への実質的な影響はほとんどない。日銀の次の一手については、やはり為替動向が大きな判断材料となると言えるだろう。