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【SNS利用者に求められる個人対策】偽情報拡散アカウントの識別方法
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2025年9月25日

日本の選挙に対する影響とは。参院選を巡るSNS情報工作。日本に不足する情報戦対策体制。偽情報拡散アカウントの識別方法とは。外国からの選挙介入について長迫智子氏に聞いた。 <ゲスト> 長迫智子|情報セキュリティ大学院大学 客員研究員 東京大学文学部卒業。同大学院人文社会研究科修了。情報セキュリティ...
情報戦時代の日本:巧妙化する偽情報と私たちに求められる「情報リテラシー」
国際社会で情報戦が激化する中、欧米は対策を進める。一方、日本は専用省庁の不在や「言論の自由」との兼ね合いから対応が遅れがちだ。本稿では、巧妙化する偽情報の手口にどう向き合い、身を守るべきか。日本政府の現状と課題、海外事例、SNS利用者に求められる情報リテラシーをQ&A形式で解説する。

Q. 日本政府の情報戦対策はなぜ欧州に比べて遅れているのか?
日本政府の情報戦対策は、言論の自由とのバランスが難しい局面にある。偽情報対策が国民の表現と抵触する可能性があり、国民の理解が不可欠だ。対策が政権や世論に左右される危険もある。
これまではNISCが調整役だったが、近年立ち上がった「国家サイバー統括室」により法的なバックグラウンドは強化された。しかし、情報戦全般を一度にカバーするのは困難だ。国はまず、インフラ攻撃対策など、喫緊かつ国民合意を得やすい分野から段階的に進めているのが現状だ。
Q. 日本政府はこれまでどのような情報操作に対処してきたか?
日本政府のデマや偽情報への対応は一貫しているとは言えない。JICA「ホームタウン政策」に関する「大量移民流入」誤情報には、その場しのぎの対応に終わった。これは攻撃意図より誤解の要素が強く、省庁の対応は鈍かったためである。

一方、2023年の福島第一原発処理水放出に関する大規模ディスインフォメーションキャンペーンでは、国家の信用失墜の危機に対し、外務省が迅速に反論し、成功例となった。これは、状況の深刻度によって政府の対応にばらつきがあることを示唆する。
Q. 海外における有効な偽情報対策「ファクトシート」とは何か?
欧米諸国では、偽情報対策として「ファクトシート」を事前に公開する取り組みが効果的だ。米国では、ウクライナ侵攻時など議論を呼びやすいテーマで、予想される偽情報への反論をまとめたファクトシートを公開した。
これにより、誤った言説に対し根拠に基づく反論を事前に提供する。フランスやドイツでも採用されており、イベント時に情報を収集・追加し、市民が偽情報の真偽を確認できる環境を整備する。「プレバンキング」と呼ばれる予防的対策として有効であり、日本もこうした戦略的な事前対策の導入が求められる。
Q. SNSプラットフォーマーは情報戦においてどのような役割を担い、変化しているのか?
SNSは現代の情報戦の主要な戦場であり、プラットフォーム運営企業は偽情報対策に極めて重要な役割を持つ。不審なネットワークやアカウントの特定と停止権限を持つのはプラットフォーマー自身だ。
これまで各国政府は連携し、不審な活動の凍結や排除を要請してきた。多くのプラットフォーマーも四半期ごとに不審なネットワーク停止件数などを報告し透明性を確保していた。
しかし、プラットフォーマーの方針は変化しうる。X(旧Twitter)はイーロン・マスク氏就任後、情報戦対策レポート公開を停止した。この企業方針変更は対策を複雑化させるが、極めて悪質なボットネットワークに対しては、政府からの申し入れがあれば対応するケースもある。
Q. 情報に接するユーザーは、情報戦で身を守るためどのような知識を持つべきか?
情報戦に適切に対応するためには、情報に種類があることを認識する必要がある。主な情報分類は以下だ。

誤情報(Misinformation): 意図せず誤って発信された情報。単なる手違いや誤解による間違いを指す。
悪意ある情報(Malinformation): 真実だが、相手に害を与える意図で用いられる情報。内部告発やヘイトスピーチなどが該当する。
偽情報(Disinformation): 意図的に虚偽または歪曲され、危害を加える目的で拡散される情報。虚偽の文脈や創作された内容が含まれる。
偽情報は必ずしも完全な嘘とは限らない点が重要だ。ロシアなどは「正しい情報3割、誤った情報7割」で巧妙にブレンドし扇動に用いる。米国の例では、ヒラリー・クリントン陣営からリークされた「本物のメール情報」が悪意あるキャンペーンに利用された。情報を受け取った際は、真偽だけでなく、どのような意図で発信されたのかを考える習慣が不可欠である。
Q. 情報戦に巻き込まれないために、個人が今日からできる具体的な対策は何か?
全ての情報を逐一ファクトチェックするのは現実的に不可能であり、「ファクトチェック疲れ」も生じるだろう。情報戦への加担を避けるには、以下の三点に留意する。

「怒り」の感情への注意: 研究で人の怒りを喚起する偽情報は最も拡散力が高い。SNSで強い怒りや衝動的な反応を感じたら、一旦立ち止まるべきである。それは意図的な感情操作の罠かもしれない。怒りを誘発する画像や扇動的な言葉遣いはその典型だ。
注意すべきトピックの把握: 偽情報やディスインフォメーションは社会の分断を煽るテーマを狙う傾向がある。日本では軍事・外交(米軍基地問題など)、災害・原発問題、移民問題、皇室問題といった分野が特に脆弱であり、扇動の標的となりやすい。これらの話題では、冷静さを保ち、情報の出所や意図を慎重に見極めることが重要だ。
安易な拡散を避ける: 偽情報作成者はAI生成画像や不自然な日本語を用いるが、AI品質向上で見分けは難しい。真偽不確かな情報、特に「怒り」を煽るものや「分断」を生み出しやすいトピックに出会った際は、確認できなくとも、自分自身でその情報を広めない選択をしてほしい。拡散を保留するだけで、情報戦への加担を防ぎ、社会を守ることにつながる。