
最新解説:海外投資家の不動産投資。東京は6年連続人気No.1
海外投資家による日本の不動産投資、その実態と未来
日本の不動産市場における海外投資家の存在感が高まっている。2024年には約5兆円の事業用不動産投資があり、そのうち約1.5兆円(3割)が海外投資家によるものだった。さらに2025年上半期だけで既に3兆円近い投資があり、そのうち1.1兆円が海外投資家による投資だという。この海外投資家による日本の不動産投資の実態はどうなっているのか?CBREリサーチヘッドの羽仁千夏氏に聞いた。

Q. 海外投資家による日本の不動産投資はどのくらいの規模になっているのでしょうか?
日本の事業用不動産市場における投資額は2024年に約5兆円まで積み上がりました。この規模は、金融危機前の2007年に次ぐ大きさです。そのうち海外投資家による投資は約1.5兆円で、全体の約3割を占めています。

2025年に入ってからも投資は順調で、上半期だけで約3兆円の投資があり、そのうち1.1兆円が海外投資家によるものです。つまり海外投資家の存在感は今年さらに高まっているといえるでしょう。
Q. 海外投資家のなかでも、主なプレイヤーはどのような投資家なのでしょうか?
ブラックストーンやKKRなど、大手の投資ファンドの存在感が大きいです。例えば2025年にはブラックストーンが東京ガーデンテラス紀尾井町を4,000億円で買収したというニュースがありました。海外投資家は幅広く存在していますが、特に運用を専門とする大手プレイヤーの存在感が強いです。
Q. よく「海外投資家が買いまくって価格が上がっている」という話を聞きますが、実態はどうなのでしょうか?
実際には「ひたすら買って釣り上げている」というわけではありません。確かに海外投資家の買い意欲が強いため競争が高まり、価格が上がっていく面はあります。しかし売却も同時に行われています。
2023年と2024年を見ると、海外投資家は買っている一方で売却もかなり行っており、実はネットでは「売り越し」の状態でした。2025年に入ってからは買う方の存在感が強くなり、「買い越し」に転じています。
海外投資家は価格が上がった不動産を売却して利益を確定させるニーズもあるので、常に一方的に買い続けているわけではないのです。
Q. 海外投資家はどのような種類の不動産に投資しているのでしょうか?
最近特に注目を集めているのはオフィスとホテルです。
オフィスについては、かつて海外ではリモートワークの普及で空室率が高騰した都市もありましたが、日本のオフィス市場はコロナ禍でも空室率があまり上がらず、現在では空室率が急速に下がっています。これは賃料の上昇につながることから、投資家は今後の成長性に注目しています。
ホテルについては、インバウンド観光客の急増がポイントです。訪日外国人観光客数は毎月過去最高を更新しており、その恩恵を直接受けるセクターとしてホテルへの投資が2024年には過去最高になりました。
その他にも商業施設もインバウンドの恩恵を受けるセクターとして注目されていますが、売り物が出てこないという状況です。
賃貸住宅については、一時期はポートフォリオ(複数の物件をまとめた)取引が多かったのが、近年は個別物件の取引に移行したため金額としては減少しましたが、2025年に入ってポートフォリオ取引が復活しています。賃貸住宅は安定して投資家の注目を集めているセクターです。
Q. 海外投資家はなぜ日本の不動産に投資するのでしょうか?
よく「日本の不動産の利回りが高い」と言われますが、実はそれほど高くありません。「イールドスプレッド」(不動産利回りと10年国債利回りの差)で見ると、東京は他のアジア主要都市と比較して特に魅力的というわけではありません。
それにもかかわらず海外投資家が投資する主な理由は次の3点です:

1. マーケットの大きさと流動性の高さ
日本の不動産市場はプレイヤーが多く、売却したい時に売りやすいという流動性の高さがあります。J-REIT、事業会社、ファンドなど様々な購入者が存在しています。
2. 資金調達のしやすさ
日本の銀行やノンバンクは積極的に不動産投資向けに融資を行っており、海外投資家も円で資金を調達しやすい環境があります。
3. キャッシュフローの成長性
日本の不動産、特にオフィスやホテルでは賃料が上昇しており、将来的なキャッシュフローの成長が期待できます。このため投資ストーリーが作りやすいというメリットがあります。
Q. 海外投資家の間で東京の人気は高いのでしょうか?
CBREが毎年行っているアンケート調査によると、東京は「投資先として最も魅力的なアジアの都市」に6年連続で選ばれています。また、海外投資家の約9割が「日本の不動産に強い関心がある」と回答しており、中国や香港などと比べても圧倒的な人気の差があります。
一般的にアジアの投資家は日本とオーストラリアの2つの市場を見ているケースが多く、最近ではシンガポールも復活してきています。
Q. 今後、海外投資家による日本への不動産投資はどうなると予想されますか?
日本の不動産に対する海外投資家の関心は引き続き高い状態が続くと思われます。金利の動向が1つの注目ポイントで、現在は緩やかな金利上昇が想定されていますが、もし予想以上に急激に上昇した場合は投資に影響が出る可能性があります。

しかし、現時点では緩やかな金利上昇にとどまるという前提で考えると、海外投資家による日本の不動産投資は好調が続くと予想されます。
特に注目されるのは、事業会社が保有する不動産の流動化です。株主からの圧力もあり、事業会社が保有する不動産が市場に出てくる可能性が高まっています。こうした流れが進めば、さらに魅力的な物件が市場に出てくることで、海外投資家の投資も増える可能性があります。
Q. 海外投資家と国内投資家には投資傾向に違いはありますか?
投資家によって戦略は様々ですが、一般的に日本の投資家の方がより積極的な価格を出しやすい傾向があります。一方、海外投資家は投資ストーリーをきちんと作り、出口戦略も含めて計画的に投資する傾向があります。
また投資戦略も、安定したキャッシュフローを重視する「コア投資」から、将来の賃料上昇などの成長を見込む「バリューアド投資」まで様々です。そのため単純に海外と国内で分けるというより、個々の投資家の戦略による違いが大きいといえるでしょう。
Q. 海外投資家の投資に対する規制強化の可能性はありますか?
個人用住宅については規制の話がありますが、事業用不動産に関しては規制が全面的にかかる可能性は低いと考えられます。日本の不動産市場では海外投資家の存在なしには成り立たない面があるため、規制するにしても影響を考慮した上で進められるでしょう。
市場へのショックについては、例えばリーマンショック後のような資金調達が難しくなる状況が起これば影響はあるかもしれません。ただ、コロナのような大きなショックでも日本の不動産市場はそれほど大きな影響を受けなかったことを考えると、急激な暴落などは想定しにくい状況です。