
ふるさと納税が変わる
ふるさと納税の「大転換点」 ポイント付与禁止で本当に利用者は減るのか?
2025年10月1日から、ふるさと納税の楽天などのポータルサイトでのポイント付与が禁止される。これは単なる制度変更ではなく、地方創生のあり方を問う大きな変化だ。そもそもふるさと納税の本質とは?福井を拠点に自治体支援を行う株式会社さちふる代表の笹川千尋氏が解説する。

Q. ふるさと納税のポイント付与が禁止されると聞きましたが、これはどういうことですか?
10月1日から楽天などのポータルサイトでのポイント付与が禁止されます。これは2024年に発表された制度変更で、地方創生のあり方そのものに関わる大きな変化です。
Q. そもそもふるさと納税とはどのような仕組みなのでしょうか?
ふるさと納税は、自分の住んでいる自治体以外の自治体に寄付すると、翌年の住民税や所得税から一定額が控除される制度です。例えば5万円を寄付すると、翌年の税金が4万8000円減額されます。差額の2000円は実質的な自己負担となりますが、寄付先の自治体から寄付額の最大3割(この場合約1万5000円)相当の返礼品がもらえるため、トータルではお得になる仕組みです。
Q. ふるさと納税の本来の目的は何だったのでしょうか?
この制度は2008年にスタートしましたが、もともとは「税の還流」を解消するために始まりました。福井県の西川一誠知事が2006年に提案したのがきっかけです。地方で育った子どもたちが大人になって大都市で働くようになると、地方は教育費などを負担したにもかかわらず、税収は大都市に流れてしまう。この不均衡を是正するために、「ふるさと」に寄付できる仕組みを作ったのです。

Q. 返礼品はもともと想定されていたのですか?
実は返礼品は当初の制度設計に含まれていませんでした。総務省のふるさと納税紹介ページにも、当初は返礼品については一言も触れられていませんでした。返礼品が正式に制度として認められたのは2019年(令和元年)の地方税法改正からで、「返礼品を提供する場合には」という条件付きでルールが定められました。つまり、返礼品は必ずしも提供しなければならないものではないのです。
Q. 返礼品がなければ、ふるさと納税はここまで広がっていなかったのでしょうか?
そうですね。返礼品があったからこそ、制度が広く知られ、利用者が増えたという側面は大きいです。令和6年の実績では、寄付額の約25.2%、3206億円が返礼品として地方で消費されています。これは地方の中小企業の売上になり、地域経済の活性化に貢献しています。例えば、地方の小さな肉屋さんが返礼品提供をきっかけに事業承継が実現したケースなど、地域活性化の具体例も多く見られます。

Q. 現在、ふるさと納税を利用している人はどれくらいいるのでしょう?
令和6年の総務省発表によれば、寄付控除適用者数は1080万人です。日本で税金を払っている人が6000万人から6500万人程度と考えると、その約17%がふるさと納税を利用していることになります。ただし、所得が300万円以上の人(約3500万人)を対象と考えると、約30%が利用していると推測できます。
Q. ポイント付与禁止の理由は何ですか?
総務省は「ネット通販みたいなふるさと納税があってはならない」との見解を示しています。ふるさと納税の3つの意義の一つに「自治体が国民に取り組みをアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは選んでもらうにふさわしい地域のあり方を改めて考えるきっかけと繋がる」というものがあります。しかし、現状は返礼品目的の利用が中心となり過ぎているため、制度の本来の理念に立ち返らせるための措置と考えられます。
Q. 楽天が特に名指しで批判されていますが、なぜですか?
楽天はポイント規制に対して反対署名を行い、現在は行政訴訟も起こしています。しかし実際には、大手ポータルサイトの中では手数料が比較的安いという面もあります。楽天側は「地域をエンパワーメントしていくという会社の目的のため」にポイント付与による市場拡大を重視しているとみられます。
Q. ポータルサイトの役割とは何でしょうか?
ポータルサイト(ふるさとチョイス、さとふる、楽天、Amazonなど)は、寄付者が簡単に返礼品を選び、寄付できる窓口となっています。これらのサイトのシェアは4大ポータルサイトで9割以上を占めています。これらのサイトが広告宣伝を行うことで、ふるさと納税制度の認知拡大にも貢献しています。
Q. 中間事業者とは何ですか?どんな役割を果たしていますか?
中間事業者は、自治体のふるさと納税業務をサポートする事業者です。具体的には、ポータルサイトの商品ページ作成、寄付者対応、返礼品提供事業者との連携、税金控除書類の処理など、自治体の裏方業務をサポートします。全国には200から300の中間事業者がいると推測されます。地方自治体では人手不足の中、ふるさと納税業務に多くの人員を割けないことが多いため、中間事業者の存在は重要です。

Q. ふるさと納税の現場ではどのような課題があるのでしょうか?
いくつかの課題があります。まず自治体側の問題として、担当職員の異動が頻繁(3年程度で交代)なため、ノウハウの蓄積が難しいことがあります。また、寄付額のみを目標にして「とにかく集めよう」という姿勢の自治体もあり、本来の理念から外れるケースも見られます。
中間事業者においても、大手の場合は1人の担当者が複数の自治体を担当するため、きめ細かなサポートができないことがあります。地域の小規模な事業者の返礼品を発掘・開発する余裕がなく、発信力のある大手事業者の返礼品が中心になりがちという問題もあります。
Q. 10月以降、ポイント付与禁止によってふるさと納税の利用は減るのでしょうか?
大きな影響はないと予想されます。利用者アンケートによれば、ふるさと納税を利用する主な動機は税の控除と返礼品であり、ポイント付与はあくまでもプラスアルファの要素です。ポイント付与が禁止されても、税控除と返礼品というメリットは変わらないため、利用者数は引き続き伸びていくと予測されています。

Q. ポイント付与禁止後、ふるさと納税市場はどう変わるでしょうか?
ポータルサイト間の競争軸が変わる可能性があります。今後は「いつ返礼品が届くか」といったロジスティクスの面で競争が激化するでしょう。Amazonは「翌日に届く返礼品」を売りにしていますし、楽天も「楽天最強翌日配送」の仕組みを整えています。各ポータルサイトが物流面で競争することで、利用者の利便性は高まるかもしれません。
Q. 9月中または10月以降、ふるさと納税をどのように利用すべきでしょうか?

9月中はポイント付与が受けられる最後の機会なので、まだ利用したことがない方は一度試してみてもよいでしょう。10月以降は、返礼品選びだけでなく、寄付金の使い道にも注目してみることをお勧めします。自分の寄付がどのように地域に貢献するのかを意識することで、ふるさと納税本来の意義を実感できるでしょう。また、寄付者の声(レビューなど)が集まれば、制度そのものの存続や改善にも影響を与える可能性があります。
