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【ビジネス・子育てに効く】俵万智の「言葉」論
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2025年9月21日

スマホで常時SNSに接続し、AIが自在に言葉を生み出す現代。私たちはどのように「言葉」に向き合えば良いのか。また「言葉」と向き合う価値とは何なのか。歌人の俵万智氏に、言葉の時代の生き方について聞いた。 ▼ゲスト 俵万智|歌人 1962年大阪府生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。1988年に現代...
今こそ言葉を磨くべし。歌人・俵万智が語る「言葉の時代」
私たちのコミュニケーションから切っても切り離せない、「言葉」。スマホ全盛の現代社会において、私たちはどのように言葉と向き合い、その力を磨いていけばいいのか。「生きる言葉」を出版し10万部を突破した歌人・俵万智さんに、SNSやAI時代の言葉の使い方から、日常生活における言葉との向き合い方まで聞いた。

Q. なぜ今は「言葉の時代」だと思いますか?
かつてのコミュニケーションは対面が中心で、言葉はコミュニケーションを助ける一部でした。表情や身振り手振り、声のトーンなど、様々な要素と一緒に意思疎通を図っていました。
しかし今はスマホを持ち、SNSなどを活用する時代。便利になった一方で、対面の要素が抜け落ち、言葉がコミュニケーションの中心になっています。

今の時代は、顔を見たことのない人とも言葉でやり取りする機会が増えました。海外にいる友達と連絡を取ったり、同じ趣味の人と繋がったりと、言葉を通じて世界が広がっています。
だからこそ言葉の力を磨くことは、生きる力を磨くことにつながるのです。うまく言葉を使って、この時代を快適に楽しく過ごせるといいですね。
Q. SNSでの言葉の使い方で注意すべき点は?
SNSの世界では、その人の全てが投稿された言葉だけで判断されがちです。顔の見えない相手とのやり取りでは、文脈や背景が伝わりにくいため誤解が生じやすくなります。
例えば「こんにちは。」と句点(マル)をつけるだけでも、世代によって受け取り方が異なります。若い世代はマルが威圧的に感じる「マルハラ」問題もありました。これは世代間のギャップであり、お互いの認識の違いを知ることが大切です。
SNSは炎上のリスクもありますが、共通の趣味で繋がれるといった良い面もあります。私も韓国ドラマが好きで、全く知らない人と感想を語り合える場として活用しています。
こうした認識の違いを知り、オープンに話し合うことで、より良いコミュニケーションが生まれるでしょう。「この表現はどう思いますか?」と最初に確認するのも一つの方法です。
Q. AIと言葉の関係についてどう考えますか?
AIはとても便利なツールで、調べものなどには活用しています。ただ、クリエイティブなことをAIに任せるのはもったいないと思います。
例えば、読書感想文。立派な文章を完成させることが目的ではなく、本を読んで自分が何を感じたかを振り返り、言葉にする過程に意味があります。その大切な過程をAIに任せてしまうのは本末転倒です。

短歌も同じです。日々の暮らしの中で心が揺れた時に、その感情を見つめ直して言葉を探し、作り上げる過程こそが短歌の醍醐味。出来上がった作品は副産物のようなものです。
ただ、AIの活用法として壁打ち相手にするのはありかもしれません。自分の考えを整理したり、アイデアを広げたりする際に活用するのは有効でしょう。また、会議の議事録作成など機械的な作業をAIに任せて、浮いた時間でクリエイティブなことをするという使い方もできます。
Q. 言葉の受信力を高めるにはどうすればいいですか?
言葉の力というと発信力に注目されがちですが、受け取る力も同じくらい大切です。同じことを言われても、背景にあることを推測したり、文脈から意味を読み取る力が人間関係をスムーズにします。
この力を養うには、歌会のような場がおすすめです。短歌を持ち寄って読み合うと、同じ歌でも人によって様々な感想が出てきます。自分の作った歌が思いがけない解釈をされたり、意図したとおりに伝わったりする体験ができます。
これは普段の会話ではなかなか得られない経験です。自分の発した言葉がどう受け取られるかを実感することで、コミュニケーション力が磨かれます。SNSでの誤解も、「そういう解釈もあるよね」と心穏やかに受け止められるようになるかもしれません。
Q. 忙しい現代人が言葉と向き合う時間を持つコツは?
短歌は短い隙間時間でもできるので、忙しい方にこそおすすめです。特に子育て中の方などに勧めると、はまる人が多いです。
言葉は使えば使うほど増える珍しいものです。時間やお金は使うほど減りますが、言葉は逆。言葉の貯金を増やすつもりで取り組むといいでしょう。
また、常時接続しているスマホから一度切れる時間を持つことも大切です。そのための一つの方法として短歌があります。若い人たちの間で短歌が流行しているのは、この「切れる時間」を求めているからかもしれません。
短歌を趣味にすれば、日常生活でも言葉に敏感になり、言葉の力が磨かれます。それはビジネスでも役立つ「言葉磨き」になるので、リターンの大きい趣味だと言えるでしょう。
Q. 短歌を作ることで得られるものは何ですか?
短歌は心が揺れた瞬間をつかまえ、言葉にする営みです。暮らしの中で「あっ」と思った時、その感情を味わい直して言葉を探し、57577のリズムに収めていく。
この過程が素晴らしいのは、例え辛い経験でも歌にすることで昇華できること。子どもがギャン泣きして大変な時も、「これが歌になる」と思えば気持ちが変わります。職場の悩みや上司への愚痴も、短歌として言語化することですっきりします。
また、短歌を作る習慣をつけると、日常の小さな感動や発見に敏感になります。「今の心の揺れは何だろう」と立ち止まり、言葉を探す時間を持つことで、忙しい日々の中でも自分と向き合う貴重な機会になるのです。

私自身、「優しさにひとつ気がつく ×でなく ⚪︎で必ず 終わる日本語」という歌を詠みました。日本語がマルで終わるという事実から、言葉の優しさを感じた瞬間を歌にしたものです。
Q. 子どもたちのコミュニケーション力について心配なことはありますか?
今の子どもたちは、実際に人とぶつかり合うチャンスが少ないように思います。同じ部屋にいても、それぞれがゲームをしていたりします。
本来なら、友達同士で遊ぶ中で喧嘩したり仲直りしたりする経験が大切です。そういった素朴な体験を通じて、コミュニケーション力が育まれます。
言葉を大事に扱うと、大人も機嫌よくなり、こちらに寄り添ってくれるようになります。言葉と仲良くなって、人生の相棒として育てていくことは、子どもにとっても大人にとっても大切なことです。
Q. 最後に、言葉との向き合い方について一言お願いします
言葉は単なるコミュニケーションツールではなく、自分自身を表現し、世界を見る窓でもあります。言葉を磨くことで、より豊かな人間関係を築き、自分の内面も整理できるようになります。
忙しい毎日だからこそ、言葉と向き合う時間を持ち、心の揺れを大切にしてください。それがあなたの言葉の力を高め、生きる力を育てることにつながります。
今はまさに「言葉の時代」。この時代を楽しく過ごすためにも、言葉の貯金を増やしていきましょう。