PIVOT GLOBAL
AI×言語学習の未来
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2025年9月17日

OpenAIが出資する米ユニコーン企業「Speak」。韓国では10人に1人が体験したアプリ、日本でも英語学習の手段として急成長している。成功を収めたのはなぜか? シリコンバレー最前線とAI投資のトレンドまで、Speak経営陣に直撃。 <ゲスト> Connor Zwick|Speak CEO 17歳...
AI×英語学習の現在地——シリコンバレーの最前線から
世界で約15億人が学ぶ英語、その学び方を根本から変えるAI。OpenAIが出資する米ユニコーン企業「Speak」は、韓国で10人に1人が体験したAI言語学習アプリを展開し、日本でも英語学習の手段として急成長している。成功を収めたのはなぜか?シリコンバレー最前線とAI投資のトレンドを、Speak経営陣に直撃。


Q. 世界の英語学習市場の現状とAIがもたらす変化について教えてください。
世界ではおよそ15億人が英語を学んでいるといわれている。その学び方を根本から変えようとしているのがAI会話だ。英語学習の歴史を振り返ると、まず第一波は古い形式のCD-ROMや初期のソフトウェアだった。セルフサービス型ではあったが、あまり魅力的な体験ではなかった。第二波はスマートフォンの普及により、ゲーミフィケーションが進んだモバイルアプリの登場。アクセスしやすくなった反面、語彙学習が中心で実際の会話力は身につかなかった。
そして現在、AIの登場により第三波が始まっている。SpeakのCEOコナー・ズウィック氏は「私たちが今、AIでできることは、実際に対話型の会話を通じて学べる環境を提供すること。これは歴史的に言語を効果的に学んだ人々が常にやってきた方法だ」と説明する。
Q. Speakはどのようなサービスで、他の英語学習アプリとどう違うのですか?
Speakは端的に言えば「世界最高のAIチューター」を目指している。従来の家庭教師サービスは、高額な費用と時間的制約があり、また他者の前で練習することに抵抗を感じる人も多かった。Speakはこれらの課題を解決し、誰もがアクセスできるAIチューターを提供している。

CTOのアンドリュー・スー氏は「泳ぎを学ぶのにモバイルゲームをプレイするだけでは不可能なように、英語を話せるようになるには実際に声に出して話す必要がある」と説明する。Speakはこれまでの英語学習アプリと異なり、最新のAIモデルを活用して実践的な会話練習を可能にした新しいカテゴリーのプロダクトだという。
Q. Speakはなぜ韓国から事業を始めたのですか?
多くのシリコンバレーの人々が「正気じゃない」と思った決断だったとズウィック氏は振り返る。しかし彼らは一つの市場に集中し、特定のユーザー層の問題を本当に解決することが重要だと考えた。複数の国で無料版をリリースし、ユーザーフィードバックを集めた結果、韓国が最適な市場だと判断した。
その理由は韓国が言語学習への情熱が高く、かつ西洋のテクノロジー企業が参入に苦戦する競争の激しい市場だったからだ。「最も難しい市場で成功できれば、他の地域への展開もうまくいくはずだ」という戦略だった。
Q. Speakが他のAI英語学習アプリと差別化されている技術的特徴は何ですか?
Speakの成功を支える技術的特徴として、スー氏は以下の点を挙げる:
非ネイティブの発音に対しても精度の高い音声認識技術
ユーザーの熟達度を理解し、流暢さを数値化する能力
個々の学習目標に合わせた効果的な学習パスの構築
リアルタイムでの低遅延・没入感のあるオーディオ体験
特に音声認識技術については、2015-2016年頃にYouTubeデータを用いて訓練したモデルが当時最先端の性能を示し、これがSpeak開発のきっかけとなった。また、単に単語を認識するだけでなく、個々の音素も認識するため、例えば日本語話者が苦手とするLとRの発音の違いも把握し、改善方法を教えることができる。

Q. AIを活用した「真の流暢さ」の測定について、どのような取り組みをしていますか?
ズウィック氏によれば、従来の流暢さの測定方法はほとんどが不完全であり、簡単に対策できるテストが多い。しかしAIを使えば、ゲーム化されていない真の流暢さの測定が可能になるという。
Speakでは「スピークスコア」というシステムを開発中で、学習者が知っていることと知らないことを正確に追跡する言語モデルを構築している。これは従来の人間の評価者では不可能だった精度で学習者の能力を把握できる。さらに各ユニットでは「Can-do statements(できるようになること)」を設定し、例えばレストランでの会話や道案内など、具体的な状況での会話能力をシミュレーションを通じて測定している。
Q. 日本市場での成長について教えてください。
ズウィック氏によれば、日本市場は急速に彼らにとって最も重要な市場の一つになりつつあるという。過去1年だけでも、すでに大きな基盤からビジネス規模が3倍以上に成長した。さらに注目すべきは、ユーザー数が増加しているにもかかわらず、日本人学習者がアプリに費やす時間が平均で約20%増加していることだ。

また、日本市場の特徴として、他のどの国よりも約60%長期的な学習習慣を形成する傾向があること、ビジネス英語への関心が韓国市場よりも顕著であること、そして観光産業の成長に伴い、職場で必要な実践的な英語への需要が高まっていることを挙げている。
Q. ChatGPTのGPT-5アップデートは、Speakのユーザー体験にどのような変化をもたらしていますか?
スー氏によれば、Speakでは様々なモデルを使用しており、GPT-5を含む多くの機能をアップグレードしているという。GPT-5は特に推論能力に優れており、ユーザーの熟達度の深い理解や、個々のユーザーの目標に合わせたパーソナライズされたレッスンプランの作成などに活用されている。
ズウィック氏は比喩を用いて、「6ヶ月前は一人のチューターとの会話だったが、今は舞台裏でチームのチューターが働いているようなもの」と説明する。ユーザーがアプリを使用していない間も、AIがユーザーについて考え、評価し、カリキュラムを計画・変更しているため、次回アプリを開いたときには、気づかないうちに15の異なる方法で改善されているという。
Q. シリコンバレーにおけるAIトレンドや、スタートアップの成功要因について教えてください。
現在のシリコンバレーでは、すべての企業がAI企業を名乗り、投資家もAIにしか投資したがらない状況だという。しかし、ChatGPTの登場から2年経った今でも、消費者向けの大ヒットAIネイティブ企業はまだ少ない。

スタートアップの成功要因については、「多くのスタートアップは資金不足ではなく、単にあきらめるから消えていく」とズウィック氏は語る。持続する企業は、うまくいくまで粘り強く改善を続ける企業だという。また、スー氏は「AIへの熱狂で、多くのユーザーが新しいAI製品を試してくれるため、創業者が真の製品市場フィットを見極めるのが難しくなっている」と指摘。Speakは製品ビジョンとユーザー問題の解決に集中し、AIモデルを目的達成の手段として扱うことで、この課題を回避できたという。
Q. 今後3〜5年のAI言語学習の未来をどう予想していますか?
ズウィック氏は「今後3〜5年で、優れた人間のチューターが持つ多くの能力を、AIが同等あるいは一部では上回るようになる」と予測する。それにより、人間のチューターがいなくなるわけではないが、より多くの人々がその質の高い対話体験にアクセスできるようになるという。
「AIの進化が速いため、英語を学ぶ必要はなくなるのでは?」という問いに対しては、スー氏は「人々が言語を学ぶ根本的な理由は、他の人間と直接コミュニケーションをとり、つながることだ」と答える。どんなに高速な翻訳ツールでも、直接会話する体験とは全く異なるため、言語学習市場はなくならないどころか、流暢さを達成する明確な道筋が示されることで、むしろ大幅に拡大すると予測している。

ズウィック氏も「自己改善したいという人間の欲求は決してなくならない」と付け加え、「誰もが日に30分Speakのようなアプリを使えば、1年後には簡単に会話ができるようになる」という認識が広まれば、言語学習に挑戦する人はむしろ増えるだろうと語った。