ビジネス虎の巻
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2025年9月15日

ReHacQのプロデューサーである高橋弘樹氏がネットメディアで目指す野望を明かす。さらに、話が浅い人と深い人の違いなどのコミュニケーションスキルセットについても聞いた <ゲスト> 高橋弘樹/ReHacQ プロデューサー

小泉進次郎さんの話し方には「チャンネルを変えられない空気」がある。独特の間の取り方、ゆっくり考えながら話す姿勢に、聞き手は何を言うのか期待しながら引き込まれていく。
玉木さんは難しい言葉を使うけれど、不思議と聞いていると「分かった気になる」という特徴がある。そして親しみやすさを全開に出し、相手に圧迫感を与えない。目を見ながら話し、相手が理解しているかを常に確認する姿勢も魅力的だ。
ヒラリー・クリントンさんは、ウクライナ情勢のような複雑な話題でも、難しい言葉を使わず分かりやすく説明する能力がある。難しいことを難しく話すのは簡単だが、難しいことを平易な言葉で説明できる人は「天才的」と言える。
三浦純さんは常に脱力して、冗談めかした話し方をする。軽いトーンで話しながらも、その中に価値ある内容を織り交ぜる技術を持っている。また常に謙虚な姿勢で、「イラストレーターなどです」「私どちらかというと『など』の仕事が多いんです」といった自己紹介の仕方も特徴的だ。
東出さんは、相手を包み込むような優しい話し方をする。「覚悟した人の話し方」とも表現できる静かな説得力がある。
共通点は「自分の世界を持っている」こと。自分の好きなものや考えをしっかり持ち、人の評価に左右されず貫く人の話には説得力がある。

「浅い人」と「深い人」の違いは、その人が持っている問題意識や好奇心の深さにある。
深い人は、自分なりの興味や問題意識を持って、ある分野を掘り下げる癖がある。例えば誰でもYahoo!ニュースを読んだり日経新聞を見たりすることはできるが、そこから一歩進んで自分の興味に基づいて深く掘り下げる人が「深い人」だ。
その掘り下げによって得られる知見は、単なる知識の有無ではなく、物事の見方や考え方の根本に影響を与える。例えば、テレビとネットの違いについて語るとき、一般的な見解を述べるだけでなく、歴史的な背景や具体的な事例を交えることで、話に深みが出る。
高橋氏は例として「野球有害キャンペーン」という歴史的な出来事を挙げた。かつて朝日新聞は戦前、「野球をするとバカになる」というキャンペーンを展開し、著名な教育者にそうした発言をさせていたという。このような歴史的な事例を交えながら現代のメディア論を語ることで、話に深みと説得力が生まれる。
ただし、話を深くするためには、具体例を挙げて視聴者に映像でイメージさせることも重要だ。特に短い時間で伝える場合は、ビジュアライズできるように話すことが効果的だ。
テレビとネットの伝え方には明確な違いがある。テレビは一方通行であるのに対し、ネットはコメントなどで双方向性がある。このため、ネットではより「伝わるかどうか」が問われる。
テレビ時代は視聴率が重視されていたが、ネット時代は「共感率」がより重要になっている。ネットでは視聴者が能動的に選んで見るため、共感を得られなければ選ばれない。膨大なコンテンツの中から選んでもらうには、共感を生み出す力が必要だ。
また、テレビの良さは「偶然の接触」にある。例えば戦争関連の番組を放送した場合、もともと戦争に興味のある人だけが見るのでは意味が薄い。むしろ、本来は興味がなかった人が偶然見て、新たな知識を得られることにテレビの価値がある。

一方、ネットの世界では「フィルターバブル」という問題がある。アルゴリズムによって、自分の好きなコンテンツばかりが表示され、視野が狭まりがちだ。
高橋氏はReHacQというメディアで、このフィルターバブルを打破する試みをしている。例えば政治に関して、自民党支持者も立憲民主党支持者も交わる空間を作り、互いの主張を知る機会を提供しようとしている。
具体的には、異なるジャンルのコンテンツを横断的に提供し、例えば政治に興味を持った視聴者が物理学の内容に触れる機会を作るなど、アルゴリズムを超えた「横串」の体験を作ろうとしている。このように「ネットの中にテレビの良さを再現する」ことが高橋氏の目標だ。

伝わるコミュニケーションの本質は、「基本的には伝わらない」という前提を持つことだ。
どんなに言葉のプロ同士が話していても、完全に伝わることはない。高橋氏によれば、優秀な人同士が話していても、2〜3割は誤解や齟齬が生じる。背景の異なる人同士なら、正確に伝わるのは2割程度で、残りの8割は誤解されていると考えた方がいい。
例えば「茶色」という単純な言葉でも、肌色に近い茶色を想像する人もいれば、黒に近い茶色を想像する人もいる。「中立」や「正義」といった抽象的な概念ならなおさらだ。
だからこそ、伝えるときには相手のリアクションを常に見ることが重要だ。高橋氏は「話している最中、相手のことしか見ていない」と言う。自分の考えも大事だが、相手が今どう思っているかを読み取ることがより大切だ。
また、伝わらないからこそ「どうしたら伝わるか」を常に考え、文脈が合っているか確認しながらコミュニケーションを取ることが必要だ。何度も繰り返し伝えることも効果的だ。
「うまく伝わったらラッキー」くらいの気持ちで、伝わらないことを前提にしながらも、いかに伝わるかを工夫し続けることが、効果的なコミュニケーションの極意と言える。

限られた時間で効果的に伝えるには、以下のポイントを押さえることが重要だ。
まず、ビジュアライズできるように話すこと。聞き手が頭の中で映像として想像できるような具体的な表現を使うことで、短い時間でも印象に残りやすくなる。
次に、結論から先に伝えること。例えば15秒しかないなら、最初に伝えたいことを言い、残りの時間で肉付けしていくイメージで話す。
また、一文一文を短くして、句読点をたくさんつけること。これにより聞き手が理解しやすくなる。
さらに、「引き算」の発想も大切だ。伝えたいことがたくさんあっても、全部伝えようとすると逆に何も伝わらない。本当に伝えたいことだけを残す引き算の作業が必要になる。
ただし、短い時間で複雑な物事を伝えることには限界もある。特にテレビのような中立性が求められる媒体では、多様な意見をバランスよく伝える難しさがある。
例えば、小さな意見と大きな意見をどのような順序で、どのような分量で伝えるかによって、受け手の印象は大きく変わる。「小さいこういう声がありますが、やっぱりこうですよね」と大きい意見を後に言うか、「大きいこういう声がありますが、小さいこういう声もあるんですよ」と言うかで、全く印象が変わってくる。
限られた時間の中で何を優先して伝えるか、その取捨選択と順序にはどうしても制作者の価値観が反映されるため、完全な中立性を保つことは難しい。それでも、視聴者に伝わりやすい話し方を常に意識することが大切だ。