マーケティング新常識
【No.1ブランドを生み出すカテゴリー戦略】ビジネスで戦わずして勝つ方法
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2025年9月13日

ビジネスで戦わずして勝つ方法とは何か。コア事業ほどカテゴリーと向き合わなければならない理由とは。カテゴリー戦略4つのメリットとは。No.1ブランドを生み出すカテゴリー戦略について田岡凌氏に聞いた。 <出演者> 田岡凌|suswork 代表 京都大学卒業後、ネスレにてネスカフェ、ミロのブランド担当。...
カテゴリー戦略に学ぶ ビジネスで戦わずして勝つ方法
「戦わずして勝つ」という言葉に惹かれた方も多いのではないだろうか。今回は、マーケティングの世界で注目を集める「カテゴリー戦略」について、suswork代表の田岡凌氏が語る。企業だけでなく個人のキャリア戦略にも応用できる考え方だ。

Q. カテゴリー戦略とは何か?
カテゴリー戦略とは、「ナンバーワンになれる市場を作ること」だ。より具体的に言えば、新たな市場を作り、それを広げ、ナンバーワンブランド・ビジネスとして成長することを指す。
時代の変化が激しい現代では、カテゴリーも次々と生まれては消えていく。この中で自分たちのカテゴリーを作り、そこでナンバーワンになって成長していくことが重要だ。

従来のマーケティングでは、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(標的市場の選定)、ポジショニング(自社の位置づけ)というSTPが主流だった。しかし、カテゴリー戦略は既存市場で戦うのではなく、新しい市場そのものを作り出すアプローチなのだ。
Q. なぜ今、カテゴリー戦略が注目されているのか?
情報過多の時代では、人は「頭に思い浮かんだもの」を買う傾向がある。これは「メンタルアベイラビリティ(心理的利用可能性)」と呼ばれる。例えば、掃除機と言えば「ダイソン」、ロボット掃除機なら「ルンバ」、フードデリバリーは「UberEats」というように、カテゴリーの代表的ブランドが頭に浮かびやすい。
同時に「フィジカルアベイラビリティ(物理的利用可能性)」も重要だ。例えば、家電量販店でロボット掃除機コーナーがあり、デモが行われていることで購入のハードルが下がる。
この二つのアベイラビリティを確保し、カテゴリーのナンバーワンブランドとして認知されることが、事業成長につながるのだ。
Q. カテゴリー戦略を実践すべき企業は?
カテゴリー戦略は、主に二つのタイプの企業に有効だ。
一つ目は、スタートアップや新規事業に取り組む企業。新しい価値を持つ商品・サービスがあっても顧客に届かないケースが多い。そんな時、顧客の頭の中に早期認識を作ることが重要になる。

二つ目は、持続的成長を目指す大企業。市場がシュリンクしている中で成長するには、周辺カテゴリーを取り込んだり、新しいカテゴリーを作ったりする必要がある。例えば、インスタントコーヒー市場が縮小する中、カプセル式コーヒーマシン、カフェインレスコーヒー、オフィス向けコーヒーマシンなど様々なカテゴリーを創出することで、コーヒーを飲む人を増やす戦略が考えられる。
Q. カテゴリー戦略の主なメリットは?
カテゴリー戦略には、大きく4つのメリットがある。
1. ブランド浸透: ナンバーワンブランドとして顧客に選ばれ続ける。
2. 新成長ドライバー: 新しい成長のきっかけを見つけられる。例えば「食べるラー油」は、調味料ではなくおかずとして新カテゴリーを確立し、市場規模を10倍に拡大した(現在も4倍の規模を維持)。
3. 高単価・高収益: カテゴリーの認識が変わると価格設定も変わる。例えば「オンライン英会話」と「英語研修」では、同じようなサービスでも顧客が認識する価格帯が大きく異なる。
4. 採用・パートナーシップ強化: カテゴリーナンバーワン企業は、顧客だけでなく、求職者やパートナー企業からも選ばれやすくなる。
Q. カテゴリー戦略の成功事例は?
骨伝導イヤホン「AfterShokz」
顧客の潜在課題を的確に捉えた例だ。ランニング中に音楽を聴きたいが、周囲の音も聞こえないと危険という、一見相反する課題を解決した。「耳を塞がずに安心快適に高音質の音楽を聴ける」という価値を提供し、「骨伝導イヤホン」というカテゴリーにラベルをつけた。
技術的な仕組みは複雑だが、SNSではランナーがこれを使うイメージが定着している。実際にはオフィスやリモートワークでも使われているが、ランニングという具体的なシーンで鮮明なイメージを作ることに成功している。
ロボット掃除機「ルンバ」
子育て世帯やペットを飼っている家庭では、床が汚れても掃除する時間がない。この「諦めていた課題」に対し、自動で床を綺麗にするロボット掃除機という解決策を提示した。特に子供やペットと一緒にルンバが映るビジュアルは、瞬時に「これだ!」と思わせる力がある。
Q. カテゴリー戦略を実践するためのフレームワークは?
カテゴリー戦略を実践するための「4C」フレームワークを紹介する。
1. Customer Issue(顧客の潜在課題)
顧客が言葉にできない、諦めている課題を見極める。これには主に以下のアプローチがある:
ボトルネック: 顧客自身が気づいていない本当の課題を見つける。例えば、体調不良の症状はあるが原因が分からないとき、専門家だからこそ見つけられる本質的な問題を提示する。
時代変化: 社会構造の変化によって生じる新たな課題を捉える。例えば、単身世帯の増加により、家族で同じコーヒーを飲む習慣から、一人分ずつ手軽に淹れられるコーヒーへのニーズが生まれた。
2. Category Value(カテゴリーの価値)
顧客にとっての明確な価値を定義する。重要なのは「顧客の差し迫った課題を解決できる価値」か「明確に重要な価値」であること。例えば、インテントセールスなら「今ニーズのある顧客が分かるから商談が増え、売上が伸びる」という具体的なROIを示す。
3. Category Keyword(カテゴリーのキーワード)
独自の価値を一言で表現するキーワードを設定する。例えば「隙間バイト」「クラウド会計」「骨伝導イヤホン」など、新しさと分かりやすさを兼ね備えたキーワードが理想的だ。
これは「餃子の王将理論」にも通じる。王将は中華料理全般を提供しているが「餃子」に焦点を当てたブランディングをしている。顧客の頭の中にイメージを作るためには、できることの一部を捨てて、核となる価値に集中する必要があるのだ。
4. Category Perception(カテゴリーの知覚)
キーワードだけでなく、顧客が直感的にイメージできるビジュアルやサウンドなどを作る。「食べるラー油」ならご飯のイメージ、「ロボット掃除機」なら子供やペットと一緒に使うシーンなど、瞬時に価値が伝わる表現が重要だ。
BtoBビジネスでも、最終的に購入を決めるのは人間。データや機能を並べるより、どのような価値を得られるのかを1〜2秒で伝えるイメージが効果的なのだ。
Q. 個人のキャリアにもカテゴリー戦略は応用できるか?
カテゴリー戦略は個人のキャリア形成にも応用できる。例えば「フリーアナウンサー」と一言で言っても競争は激しい。しかし「経済アナウンサー」や「経済MC」など、特定分野に特化することで差別化できる。
キャリアにおいても「何のナンバーワンになるか」を明確にし、そこに向けて必要なスキルや経験を積んでいくことが重要だ。つまり、自分自身のカテゴリーを作り、そこでナンバーワンを目指すアプローチだ。
Q. カテゴリー戦略を実践する際の心構えは?
カテゴリー戦略の実践には、以下の点を心がけよう。
まず、顧客に会って理解を深めることが重要だ。顧客が何気なく漏らす言葉の中に「諦めていた課題」が隠れていることが多い。
次に、情報過多の時代では、シンプルに価値を伝えることが必要不可欠。5秒で伝えられなければ、そもそも予選敗退だ。
最後に、言葉だけでなくイメージで伝えることを意識しよう。人は言葉よりもビジュアルやイメージで判断する傾向がある。

カテゴリー戦略は、単なるマーケティング手法ではなく、「我々は何屋なのか」という経営哲学にも通じる。市場の中での戦いを避け、顧客の頭の中で戦いに勝つこと。それが「戦わずして勝つ方法」なのだ。