PIVOT TALK BUSINESS
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2025年9月15日

多くの30代が直面する「40歳の壁」。キャリア、子育て、夫婦関係など様々な点で生き方の見直しを求められる30代において、40歳以降の人生戦略をどのように考えていけば良いのか?キャリア論に詳しい尾石晴氏に聞いた。 <ゲスト> 尾石晴|起業家 大学卒業後、外資系メーカーに16年勤務。2020年に退職し...
40歳前後になると、なんとなく人生にモヤモヤ感を覚える人は少なくない。キャリアの行き詰まり、子育ての変化、夫婦関係の見直し——さまざまな「壁」が一気に押し寄せてくる時期だ。この年代をいかに乗り越え、充実した人生を送るべきか。起業家の尾石晴さんに、自身の経験も踏まえながら「40歳の壁」の正体と乗り越え方について聞いた。

人生の分岐点、転換点だと思います。40歳前後は、これまで歩んできた道と、これから進む道の両方が見える場所にいます。
これまで積み上げてきたスキルやキャリアをこのまま続けるのか、別の道を選ぶのか。家族を持っている人は、家族との生き方についても問い直されます。パートナーがいる人は、今後もずっと一緒に歩んでいくのかということも含めて、自分の人生をどう形づくっていくのかを考え直す時期です。
心理学者エリクソンの心理発達理論によると、40歳前後は人間の発達における重要な潮目です。それまでは自分自身の成長に重点を置いてきたのが、40歳くらいからは「人に渡すことで自分が成長していく」フェーズに入ります。つまり、人生のゲームのやり方が変わる時期なのです。
大いに関係しています。以前なら70歳前後で寿命を迎え、60歳まで同じ職業人生を生きて、退職金をもらって残り10年を過ごせばよかった。しかし、今は100歳まで生きる可能性がある時代です。
そうなると、60歳や65歳で仕事を終えても、その後20〜30年をどう生きていくかという問題に直面します。そのため、40歳前後でこの先の人生設計を早めに考え直す必要が出てきました。これが「40歳の壁」として多くの人に意識されるようになった理由の一つです。
非常に関係しています。現代は初産年齢が30歳を超えることが多いため、40歳前後でちょうど子どもが保育園から小学校に上がる時期を迎える人が多いのです。
この時期は子育ての難易度が変わります。保育園の時代は基本的に「お世話」が中心でしたが、小学校に上がると「学習」や「教育」のフェーズに入ります。35人クラスの中で、先生だけでは対応しきれない部分を親がフォローする必要が出てきます。

宿題のサポートや学習面での定点観測など、外注もしにくい「責任」が増えてきます。この「小1の壁」「小4の壁」とも言われる問題が、ちょうど40歳前後のキャリアの壁と重なって、より大きな壁として感じられるのです。
「40歳の壁」をうまく乗り越えている人は、夫婦関係の壁が薄い傾向があります。夫婦関係が良好だと、子育てが「お世話」から「教育」のフェーズに変わった時も、お互いの考えをすり合わせて対応できます。
しかし、日々の生活の中では「緊急だけど重要ではないこと」に対応するばかりで、「緊急ではないが重要なこと」——例えば夫婦の理想像を合わせる、子育ての方針を話し合うなど——に時間を割けないことが多いのです。

そうした重要な話し合いができない時期は「モラトリアム(情報収集期間)」と捉え、パートナーの好みや苦手なことなどの情報を日々の中で集めておくといいでしょう。そして時間ができた時に話し合いの場を持つことで、夫婦関係の壁を低くすることができます。
私の場合は転勤問題でした。16年間同じ会社に勤め、5回ほど転勤してきましたが、子どもができると状況が変わります。保育園は4月にしか入れないので、「9月に転勤」と言われても簡単に応じられなくなります。
そこで「転勤を受け入れてキャリアを築くのか」「転勤のないポジションを社内で探すのか」「別の道を選ぶのか」という選択を迫られました。40歳という年齢と家族の存在が、キャリアの選択に大きな影響を与えたのです。
さらに本質的な問題として、朝7時に家を出て夜19時まで働く生活スタイルが、子育てや夫婦関係の壁を高くしていることに気づきました。そこで私は一度会社を辞め、2年間のサバティカル期間(長期休暇)を取って、自分の仕事を作る道を選びました。
私の場合は必要でした。退職時点では「具体的に何をしたいか」がぼんやりしていたからです。すぐに次の仕事が決まっている人なら転職でも良いのですが、私は自分が本当にやりたいことを模索する期間が欲しかった。
その期間に、文章を書いたり、女性向けの健康促進事業としてオンラインヨガやヨガスタジオを始めたりする中で、徐々に自分の道が見えてきました。40歳という年齢で人生を問い直せるのは、ある意味ラッキーなことです。まだ体力も知力もあり、うまくいかなくても次の選択肢を見つけられる年代だからです。
「自分業」とは、「健康」「お金」「つながり」の3つが重なる仕事として定義しています。「健康」は身体だけでなく、心や脳の健康も含みます。「お金」は生活に必要な収入、「つながり」は笑い合えるような人間関係のことです。

これに加えて「やりがい」と「自由」も重要です。やりがいがなければ精神的健康は保てませんし、自己決定できないと喜びを感じにくいものです。
会社員時代、私はこの5つを全て満たせていませんでした。転勤が多くて「つながり」が作りにくく、長時間のデスクワークで「健康」も損なわれていました。そこで、これらを満たせる仕事を少しずつ作っていったのです。
いきなり全ての要素を満たす仕事を見つけるのは難しいので、現在足りていない要素を副業や複業で補っていくのがおすすめです。
私の場合、最初は収入にならなくても自分の考えを発信するブログや音声配信を始めました。それが徐々につながりを生み、後に収入源になっていきました。また、趣味だったヨガを健康促進事業として展開し、現在は主な収入源になっています。
副業ができない場合でも、自分が好きなことや時間とお金をかけてきたことを掘り起こして試してみることが大切です。すぐに収入にならなくても、技能的報酬(スキルアップ)や信頼という形で貯めておくと、いずれ「自分業」の種となります。
いきなりうまくはいかなくても、何かを思ったら動いておくことで、将来の健康、つながり、お金に結びつく可能性が広がるのです。