政策超分析
中国経済の三重苦/多発する凶悪犯罪と社会不安の高まり/中国が恐れるトランプの切り札とは
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2025年9月5日

「政策超分析」では、専門家が政策や国際情勢を徹底解説。今回のテーマは「中国経済」。後編では、中国経済が抱える”三重苦”を柯隆氏が徹底解説。 <ゲスト> 峯村健司|キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 https://x.com/kenji_minemura 柯隆|東京財団 主席研究員 http...
中国経済の三重苦から見える習近平政権の限界
不動産バブル崩壊と若者失業率30%超え? 中国経済の実態に迫る
中国経済の先行きに暗雲が立ち込めている。不動産不況の長期化、コロナ禍の後遺症、そして米中貿易戦争という三重苦に直面する中国。政府発表の若者失業率は17.8%だが、実際には30〜40%に達するとの見方も。東京財団主席研究員の柯隆氏とキヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏に、中国経済の実態と今後の展望を聞いた。

Q. なぜ中国で不動産バブルが起きたのか?
中国の土地は全て国有である。本来、土地が国有であればバブルは起きにくいはずだが、1990年代半ばに日本の不動産経済学の専門家が中国共産党幹部に「定期借地権」の考え方を教えたことがきっかけとなった。
この制度では、中国政府が土地をデベロッパーに一定期間貸し出す。住宅用地は70年、商業用地は50年の定期借地権が設定される。この払い下げ権は地方政府が持ち、その収入は地方政府の財源となった。

この制度には二つの大きな問題がある。一つは70年後の更新方法が明確でないこと。もう一つは、デベロッパーが図面の段階でローンの実行を受けられることだ。つまり建物が完成する前に資金を得られるため、デベロッパーが建設を完了せずに次のプロジェクトに移るケースが続出している。
Q. 中国のゴーストタウンはどれほど深刻なのか?
中国全土にゴーストタウン(建設されたが誰も住んでいない都市)があふれている。かつて国家安全局副局長を務めた人物が「中国は40億人が住めるマンションを建設している」と発言したほどだ。
中国では、マンションを購入したものの完成しない、あるいは住めない状態のまま放置されているケースが多数ある。それでも購入者はローンを返済しなければならない。
中国では信用システムが厳しく、ローンの返済を怠ると新幹線や飛行機に乗れなくなる。ホテルのチェックインもできず、社会からドロップアウトしてしまう。これは個人に付けられた信用スコア(800点満点など)が減点されるためで、一種の「ブラックリスト」として機能している。
Q. 中国人はなぜマイホーム志向が強いのか?
中国、特に女性は結婚条件としてマイホームの所有を重視する傾向がある。賃貸に対する抵抗感の背景には、中国社会がまだ「信用社会」になっていないことがある。
賃貸契約を結んでも、お互いが相手を信用していないため、トラブルが多発する。また、不動産投資目的で購入したものの、賃貸に出さず空き家のままにしておく所有者も多い。理由は「借り手が大事に使ってくれず、特に水回りが傷むと修繕コストがかかる」といったもの。
さらに、中国では一人っ子政策の影響で男性が女性より3000万人以上多く、結婚競争が激しい。その中でマイホームを持っていることは、結婚するための最低条件となっている。
Q. 中国の若者失業率はどれほど深刻なのか?
中国政府発表の若者(16〜24歳)失業率は7月時点で17.8%だったが、北京大学のチームは46%、清華大学のチームは32%という数字を発表している。
さらに、この統計には出稼ぎ労働者が含まれておらず、輸出製造業で働いていた若者の失業者を含めると、60%に達する可能性もある。2023年には大学卒業者が1220万人に達し、すでに高い失業率にさらに拍車をかけている状況だ。
このような社会不安の高まりは、まず自殺率の上昇として表れる。中国社会にはカウンセリングのような心の悩みを相談できる場がなく、追い詰められた若者が橋から身を投げるケースが増加している。
Q. コロナ禍は中国社会にどのような影響を与えたのか?
中国のゼロコロナ政策は習近平国家主席自身が決定したとされる。ウイルスの毒性が下がったにもかかわらず、政策は厳格化された。これにより、キャッシュフローに余裕のない中小零細企業が次々と倒産した。

特に打撃を受けたのはスーパーや飲食店、街のパン屋や餃子の専門店などで、これらの企業は雇用創出の中心だっただけに、その影響は深刻だ。失業者が増加することで社会全体に不安が広がり、通り魔事件などの犯罪も増加している。
さらに物価の下落も進行しており、上海ではスターバックスのコーヒーが2割、生ビールが2割5分も安くなるなど、デフレの傾向が顕著だ。しかし、習近平氏はデフレについて「まんじゅうが安く買えるのでよいこと」と発言したとされ、経済問題の深刻さを理解していないとの見方がある。
Q. 米中の関税戦争は中国経済にどのような影響を及ぼしているのか?
米中貿易戦争は輸出製造業に大きな打撃を与えている。さらに、Appleをはじめとするグローバル企業が生産拠点を中国からインドなどに移転するサプライチェーンの分散も進んでいる。
中国はこれに対抗するため、「グローバルサウス」(アフリカやASEANなど)への輸出拡大を図っているが、アメリカ市場の代替とはなりにくい。
中国の強みはレアアース(希土類)の供給力で、これを停止すると脅すことで交渉力を持っている。アメリカがレアアースの輸出規制に対してすぐに反応したことは、中国にとって「成功体験」となった。
米中対立において、習近平氏は時間を味方につけようとしている。アメリカは選挙があるため時間的制約があるが、中国にはその制約がない。しかし、トランプ前大統領は「相手の急所を握るのがうまい」とされ、中国共産党幹部のアメリカにある資産や、スイスの銀行口座情報を公開すると脅す可能性もある。
Q. 今後の日中関係はどうなるのか?
中国は日本との関係を悪化させたくないというのが本音だ。日本企業は納税や雇用創出だけでなく、技術移転においても中国にとって重要な存在である。

しかし、日本の政治的右傾化や日米同盟の強化など、新たな不安定要素も出てきている。アメリカと中国の対立が固定化する中で、日本の相対的な重要性は高まっており、この米中対立の狭間でいかに賢く立ち回るかが日本にとっての課題となる。
中国経済の三重苦は当面続くと見られ、社会不安の高まりや国際関係の変化など、今後の動向に注目が集まる。