
【投手・大谷翔平】奪三振ショー復活
進化するパワーピッチャーの新常識 ―大谷翔平が示すMLBの最新トレンド

Q. 大谷翔平投手が749日ぶりの勝利を挙げました。この試合のピッチングをデータから見るとどのような評価になりますか?
大谷翔平投手が久しぶりに先発投手として勝利を収めた試合は、データ的に見ると非常に高く評価できる内容だった。投手の評価において「勝利」という指標はあまり重視されなくなっているが、5回を投げ切り、三振を多く奪えたことが重要だ。特に、カーブを多用した点が特徴的で、これまでとは異なる投球パターンを見せた。

FIP(Fielding Independent Pitching:野手の守備力を排除した投手の本質的評価)を見ると、8月の登板ではスーパーエース級の数値を残している。また、三振割合も順調に上昇し、四球も少なく安定した投球を見せている。さらに空振りを取る割合も高まっており、先発投手としてイニングも長くなっている。全体的に見て、ボールの質が非常に良くなっていると評価できる。
Q. 大谷投手の投球スタイルに変化はありましたか?
これまでの大谷投手は、フォーシーム(ストレート)が中心で、変化球は縦のスライダーやスイーパーを軸にしていた。しかし、今回の登板では驚くべき変化があった。最も多く投げた球種がカーブとなり、フォーシームの割合は17%にまで下がった。これまでのシーズンではストレートが40%、変化球が40%で、カーブは3%程度しか使っていなかったのに対し、今回はカーブを多投し、それで三振も取れていた。
また、右打者に対して内角に進化球(シンカー)を投げるという新たな攻め方も見せた。これで右打者からファウルを打たせてカウントを稼ぐなど、効果的に使っていた。さらに、一度姿を消したと思われたスプリットも1球だけ投げており、様々な球種を試行錯誤している様子が伺える。
Q. なぜ大谷投手はこのように球種構成を変えているのでしょうか?
大谷投手がこのように球種構成を変えている理由として、考えられるのは以下の2点だ。

1つ目は、トミージョン手術後のリハビリ過程での試行錯誤である可能性。ドクターやトレーナーが、肘への負担を考慮して様々な球種の投げ方をテストしている段階かもしれない。
2つ目は、大谷投手自身が投手としての戦略を練っている可能性。彼は打者としても一流であるため、打者の視点から投手をどう攻略するかを熟知している。この知識を活かし、相手チームの分析担当を惑わせるような戦略的な球種構成の変更を行っている可能性がある。
スプリングキャンプでは様々な変化球を試し、シーズンが進むにつれてそれを絞り込み、そして今回また異なる構成に変えるという流れは、9月からのポストシーズンに向けた準備とも考えられる。
Q. 現代のMLBにおける「パワーピッチャー」とはどのようなピッチャーを指すのでしょうか?
従来のパワーピッチャーは、強烈なストレートを中心に、バッターが球種を予測できる状況でもそれを投げ込んで空振りを奪えるピッチャーを指していた。例えば、ヤコブ・デグロム(健康時)のように、ストレートとスライダーの2球種だけで圧倒的な投球をするタイプだ。
しかし、現代のMLBにおけるパワーピッチャーの定義は変化している。例えば、現在最も注目されているポール・スキンズ(23歳)は、98マイル(約158km/h)の速球を持ちながら、ツーシーム、チェンジアップ、シンカー、スライダー、カーブなど多彩な球種を投げ分ける。
大谷翔平投手も同様に、速球の質の高さに加え、多彩な変化球を効果的に使い分ける「新しいタイプのパワーピッチャー」と言える。彼のフォーシーム、シンカー、スライダー、スイーパーなどはいずれもリーグ上位レベルの質を持ち、それを制御する能力も高まっている。
Q. 大谷投手の球質はMLBの中でどのように評価されていますか?
大谷投手の球質はMLBの中でも非常に高く評価されている。彼のフォーシーム(ストレート)の平均球速は98.1マイル(約158km/h)で、これはポール・スキンズのストレートとほぼ同等の速さだ。

また、球種ごとの質を示すデータでは、フォーシームだけでなく、シンカー、スライダー、スイーパーなどの変化球も、リーグの上位クラスの評価を得ている。日本人投手は一般的にコントロールの良さが特徴だが、大谷投手は「ボールの質×コントロール」という両面で高いレベルを持っており、特殊な存在だと言える。
このような質の高いボールを多種類持ち、それを試合ごとに使い分けられることが、大谷投手の最大の強みとなっている。
Q. ドジャースとパドレスの優勝争いはどのような状況ですか?
現在、ナショナルリーグ西地区ではドジャースがトップを走っているが、パドレスとは2ゲーム差の接戦となっている。ファングラフスの予測によると、地区優勝の確率はドジャースが81.4%、パドレスが18.6%となっている。
両チームはスタイルが対照的だ。ドジャースはDH(大谷選手)、キャッチャー、ファースト、サードなどの強力な打線が強みである一方、先発投手やリリーフ投手には故障者が多いという弱点がある。対するパドレスは、リリーフ投手、サード、ライトなどが強みで、キャッチャーやDHが課題とされてきた。
パドレスは7月のトレード期限に若手有望株を大量放出して弱点を補強する「今年に勝負をかける」姿勢を示した。一方、ドジャースはトレード期限であまり動かず、ファームシステムを守る選択をした。ただし、ドジャースも故障していた先発投手が徐々に復帰してきており、戦力は充実しつつある。
Q. MLBのポストシーズンに向けて、何に注目すべきでしょうか?
9月に入るとMLBではセプテンバーコールアップ(マイナーリーグの選手を追加で招集できる制度)が始まり、チームの戦力が変わってくる。特に注目すべきは、ブルペンを強化したパドレスがその優位性を生かせるかという点と、怪我人が戻ってくるドジャースがチームとして調和するかという点だ。
パドレスは5回までシーソーゲームにして、6回以降に1点でも取れば勝ち抜けるチーム作りをしており、ブルペンの安定感が勝負どころとなる。一方、ドジャースはこれまで不足していたピースが揃ってくるが、それが必ずしもスムーズな強化につながるとは限らない。
また、9月はベテラン選手が「いよいよこの時期」と気持ちを高める時期でもある。特にドジャースとパドレスの直接対決は、チーム状況だけでなく、選手の気持ちの面でも熱い戦いになるだろう。
