政策超分析
中国EV大倒産時代へ?/補助金頼みの”大躍進”の終焉/反日感情が高まる懸念
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2025年8月29日

「政策超分析」では、専門家が政策や国際情勢を徹底解説。今回のテーマは「中国経済」。前編では、EV産業の現状を取り上げる。 <ゲスト> 峯村健司|キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 https://x.com/kenji_minemura 柯隆|東京財団 主席研究員 https://www.y...
中国EV大倒産時代へ?/補助金頼みの”大躍進”の終焉
中国経済はなぜ急速に減速しているのか?失われた30年の日本と似た状況に

Q. 中国経済は近年急速に減速していますが、その原因は何でしょうか?
中国経済の減速は、「三重苦」とも呼べる三つの要因が複合的に影響しています。第一に2020年から3年間続いたコロナ禍とロックダウンの影響です。中国では徹底した都市封鎖が行われた結果、約400万社の中小零細企業が倒産し、経済が大きなダメージを受けました。
第二に不動産バブルの崩壊があります。2021年に不動産大手の恒大集団がデフォルト(債務不履行)を起こし、今年8月25日にはついに上場廃止になりました。その後も複数の大手デベロッパーがデフォルトに陥り、不動産不況が長期化しています。

第三の要因がトランプ前大統領の関税政策です。中国は輸出製造業への打撃により苦境に立たされています。
これらの要因が重なり、若者の失業率が上昇し、将来への不安から消費が伸び悩み、企業の設備投資も停滞するという悪循環に陥っています。日本の「失われた30年」と似た状況ですが、中国の場合はさらに深刻な面があります。
中国と日本の経済停滞の違いは?中国では「社会不安」が大きな懸念材料に
Q. 日本の「失われた30年」と中国の経済停滞には、どのような違いがありますか?
一見似ているように見える両国の経済停滞ですが、社会への影響の面で大きな違いがあります。日本では30年の経済停滞があっても大きな社会不安は起きませんでした。しかし中国では、経済減速に伴い社会不安が急速に高まっています。
また、地方政府の財政問題も深刻です。中国の地方政府は不動産バブル時代に土地売却収入に依存していましたが、バブル崩壊後は収入が激減。これにより年金基金への資金投入が困難になり、一部地域では年金支給に支障が出る恐れもあります。
さらに、地方政府が整備したインフラのメンテナンス費用も捻出できなくなっており、安全面での懸念も生じています。中国社会には「想像以上にガスが溜まっている」状況で、経済問題が社会不安に直結しやすい構造になっています。
中国で高まる「反日ムード」の真相は?SNSだけに限定された限定的な反日感情
Q. 最近中国で反日ムードが高まっていると言われますが、実態はどうなっているのでしょうか?
現在の中国での反日ムードは「限定的な反日」「制限された反日」と言えます。9月3日の戦勝記念日に向けて政府が盛り上げている面はありますが、かつてのような大規模な反日デモは起きていません。

現在の反日表現はSNS上での書き込みに限定されており、それも社会の不満のはけ口として機能している側面があります。実際には、日中戦争を題材にした映画が上映されていても、実際に観ている人は少ないという現実があります。
中国では「反日は仕事、生活は親日」というブラックユーモアがあるように、表向きは反日的な発言をしていても、実際には日本製品を使用したり、日本への旅行を望んだりする人が多くいます。特に日本を訪れた経験のある人は反日感情が薄い傾向にあります。
なぜ中国では以前のような大規模な反日デモが起きなくなったのか?
Q. 以前は大規模な反日デモが中国各地で行われていましたが、最近見られなくなった理由は何ですか?
以前のような大規模な反日デモが行われなくなった最大の理由は、当局の懸念にあります。過去の反日デモでは最終的に一部の参加者が共産党に対する不満を表明するケースもあり、政府にとって制御不能になるリスクがあります。
現在の中国社会には不満が蓄積されており、もしデモを許可すれば、それがすぐに反政府デモに転換する可能性があるため、当局は大規模な集会を許可しなくなりました。2022年のゼロコロナ政策に対する「白紙革命」でも、一部で「打倒共産党」「習近平退陣」といったスローガンが見られました。
中国政府は社会不安のはけ口として、限定的に反日感情をSNS上で発散させることを許容していますが、それ以上の動きは厳しく制限しています。
中国EV産業の過剰生産と補助金政策の問題点
Q. 中国の電気自動車(EV)産業は急成長していますが、どのような課題があるのでしょうか?
中国ではEV産業を経済の新たな牽引役として位置づけていますが、政府の補助金政策により深刻な過剰生産状態に陥っています。2018年頃には400社以上のEVメーカーが存在していましたが、現在は40社以下に減少。それでも依然として供給過剰の状態が続いています。

中国のEV産業の問題点として、以下の点が挙げられます:
1. 不適切な補助金政策:中国では消費者ではなくメーカーに補助金を出す仕組みになっており、これが過剰生産を促進
2. 補助金詐欺:ディーラーに車を登録させて補助金を受け取り、実際には使われない「0km中古車」として廃棄するケースも
3. 価格競争の激化:BYDなどの大手メーカーが価格を34%も引き下げるなど、採算を度外視した競争が行われている
4. サプライチェーンの問題:完成車メーカーが部品メーカーへの支払いを1年以上遅らせるケースがあり、部品メーカーの経営を圧迫
専門家の予測では、最終的には3社程度しか生き残れないとされており、EV産業の大淘汰時代が到来しています。
中国の補助金政策はなぜ問題なのか?民主主義国との根本的な違い
Q. 中国の補助金政策はどのような点で問題があるのでしょうか?
中国の補助金政策の最大の問題点は、消費者ではなく生産者(メーカー)を支援する仕組みになっていることです。民主主義国では個人(消費者)を助け、消費者がどの製品を選ぶかを決めるのが一般的ですが、中国では企業を直接支援する形をとっています。
この違いは政治体制に起因しており、選挙のない一党独裁体制では個人の選択よりも国家戦略や産業政策が優先されます。その結果、メーカーは補助金を獲得するために過剰生産に走り、市場メカニズムが正常に機能しなくなります。
この過剰生産は「デフレの輸出」につながり、中国と競合する国々の産業にも悪影響を及ぼします。中国政府が特定産業を支援すると、まず多数の企業が参入し、その後大手企業が価格を大幅に引き下げて競合を駆逐するというサイクルが繰り返されています。
中国の若年失業率悪化の背景とサービス産業育成の必要性
Q. 中国の若者の失業率が悪化していると言われますが、その背景は何でしょうか?
中国の若年失業率は17.8%(2023年7月時点)に達しており、深刻な社会問題となっています。この背景には産業構造の変化があります。以前は製造業が多くの雇用を創出していましたが、人件費上昇により労働集約型産業は他国に移転。新たな雇用の受け皿となるべきサービス産業の発展が十分でないことが問題です。
中国で今後必要なのはサービス産業の強化ですが、それには政府主導ではなく、より自由な経済環境が必要です。しかし現状では自由度が低く、サービス産業が十分に発展していません。現在は食品配達サービスなどが若者の雇用先となっていますが、14億人の人口を抱える中国には、介護など多様なサービス業が必要です。
若者の失業率上昇は将来への不安を増大させ、消費が伸びない一因となっています。かつては中国人観光客が日本で大量の買い物をしていましたが、最近では慎重な消費行動が目立つようになっています。
中国経済の今後の見通しは?改善のために必要な政策は何か
Q. 中国経済は今後どうなるのでしょうか?改善のためには何が必要でしょうか?
中国経済は短期的には厳しい状況が続くと予想されます。特に不動産バブル崩壊の影響は長期化する見込みで、地方政府の財政問題や年金問題など新たな課題も浮上しています。
改善のためには、まず適切な経済政策の実施が不可欠です。また、サービス産業の育成のため、経済の自由度を高め、若者の雇用創出につなげる必要があります。特に介護など高齢化社会に対応したサービス業の発展が重要です。
さらに、補助金政策の見直しも必要です。現在の生産者優先の補助金ではなく、消費者を支援する政策に転換することで、市場メカニズムを正常化させる必要があります。
中国社会には現状に対する不満が蓄積されており、経済問題の解決は社会の安定のためにも重要な課題となっています。しかし、経済政策の転換だけでなく、政治的・社会的な改革も必要とされています。