PIVOT CAREER
【激変する新卒採用】学生と企業のAI活用対決の時代
(564)
1.2万回視聴
2025年8月28日

時代の移り変わりとともに激変する新卒採用。 学生と企業が互いにAIを駆使し、AI vs AIの構図ができ上がっているという。 そんな環境下で生き残る術とは?サイバーエージェント専務執行役員・石田裕子氏に聞いた。 <ゲスト> 石田裕子|サイバーエージェント専務執行役員 2004年新卒でサイバーエージ...
激変する採用市場、企業と学生の勝ち抜き方
採用市場は目まぐるしく変化している。いつからでも応募できる通年採用の浸透、インターンシップの登竜門化、「親学」と呼ばれる親の影響力の増大など、わずか数年でルールが一変。企業と学生の双方が戸惑う中、どうすれば理想的なマッチングができるのか。サイバーエージェント専務執行役員の石田裕子氏に、最新の採用トレンドと未来展望を聞いた。

Q. 採用市場はここ数年でどのように変化していますか?
採用市場は本当に数年単位で変わり続けている。特に近年では「親学」という言葉が流行語になるほど、就活における親の関与が高まっている。これは、内定承諾前に親の確認を取る学生が増えているという現象だ。
それを受けて企業側も「親オリ」、つまり親向けのオリエンテーションを実施するケースが増えている。親世代と現在の学生では価値観が大きく異なるため、企業としても正しく情報を伝えたいという意向がある。
また、学生のブランディング意識も高まっている。就活用にSNSアカウントを作り、自分をどう見せるかを戦略的に考える学生も少なくない。企業によってはSNSをチェックすることもあるため、学生は自分の見せ方に長けてきている。
Q. 「売り手市場」の現状とはどのようなものですか?
現在の就活市場は完全に「売り手市場」だ。学生は複数の企業から内定をもらうのが一般的で、企業間の競争が激化している。その結果、採用活動の早期化と長期化が同時に進行している。
早期化とは、採用活動が前倒しになること。長期化とは、早く内定を出しても、入社までの期間が長くなることを指す。この状況下では、企業が焦って大量採用しても後にミスマッチが生じるリスクがある。そのため、より質を重視し、自社の文化に合った人材を見極める傾向が強まっている。

初任給も上昇傾向にあり、30万円を超える企業が増えている。サイバーエージェントも初任給を引き上げたところ、採用競争力向上につながったという。ただし、初任給だけで就職先を決めるのは避けるべきだろう。
Q. 通年採用はどのように進んでいますか?
従来の「新卒一括採用」の概念は薄れつつある。今は大学1年生から応募できる企業もあり、早い段階から社会との接点を持つ機会が増えている。中には1年生の段階で内々定を持っている学生もいるほどだ。
通年採用のメリットは、学生の選択肢が広がることだ。時期を問わず応募できるため、自分のペースで就活を進められる。一方で、「いつ終わるのか見えない」という不安や、周囲と比較して焦りを感じるといったデメリットもある。
企業にとっては、高専出身者や既卒者、第二新卒など、間口を広げられるメリットがある。ただし、早期離職のリスクも高まる可能性はある。
Q. インターンシップの位置づけはどう変わっていますか?
インターンシップは単なる職業体験から、採用直結型へと変化している。政府のルール変更により、5日間以上のインターンであれば採用に直結させることが可能になった。
学生もそうした採用直結型のインターンを好む傾向にあり、通常のインターンシップと比べて参加意欲が異なる。ただし、インターンに参加するには時間的・経済的コストもかかるため、学業との両立が課題となる。

サイバーエージェントのインターンシップは、単に採用の場ではなく、学生の能力を引き出す場として位置づけている。総合職では新規事業立案やマーケティング戦略を考えるグループワークを行い、クリエイター職では実務に近い課題に取り組む。参加者の採用率は1%台と狭き門だが、それだけ学生の関心も高い。
Q. AIの採用プロセスへの影響はどのようなものですか?
近年のAI進化は採用プロセスにも大きな影響を与えている。企業側はAIを活用して採用プロセスの効率化や自動化を進めている。一方、学生側もAIを使ってエントリーシートを作成するケースが増えており、いわば「AI対AI」の状況が生まれている。
ただし、AIはあくまで初期選考や業務効率化のツールであり、最終的には面接やインターンシップを通じて、その人自身のスキルや価値観を見極める必要がある。AIのリテラシーが高い学生を採用できるというメリットもある。
新卒社員の業務も変化している。定型業務はAIに代替されつつあり、単純作業は短時間で済むようになっている。そのため、育成プログラム自体を見直す必要が出てきている。
Q. これからの採用で企業と学生に求められることは何ですか?
企業には、採用・育成・評価・定着のプロセス全体を抜本的に見直す必要がある。AIの発展に伴い、新卒に求める能力も変化している。特に重要なのは、AIを活用するための「問題設計力」や「言語化力」だ。
学生には、自ら学び、価値を生み出す姿勢が求められる。AIによって定型業務が代替される時代には、「正解のないものを正解にしていく力」が必要になる。企業から教えてもらうのではなく、自分から学び、自分の価値を考え続けることが重要だ。
採用の未来は予測困難だが、「新卒」「第二新卒」「中途」といった区分がなくなり、いつでも誰でも必要な人材を採用できる状態になっていくだろう。終身雇用の概念も薄れ、40代・50代・60代と多様なキャリア設計をする人が増えていくと予想される。
Q. 企業と学生がよりよいマッチングを実現するには?
企業も学生も焦りがあるが、互いに合わない環境では能力を活かせない。単に人数を確保するのではなく、自社の向かう方向性と学生の将来像が合致するかを見極めることが重要だ。
変化に適応し続ける企業が生き残る時代には、採用戦略も経営戦略と連動させる必要がある。市場変化に適応しながら、自社が求める人材像を明確にし、それに合った採用活動を展開することが求められる。

最終的には、企業も学生も自分の将来を見据え、互いがフィットするかどうかを様々な手段で見極める姿勢が大切だ。それこそが、ミスマッチを防ぎ、双方にとって幸せな採用を実現する道といえるだろう。