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ロシア・ウクライナ和平交渉の焦点
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2025年8月27日

ロシア・ウクライナの停戦・和平交渉はなぜ進まないのか?重要な焦点となっている「安全の保証」とは何か?慶應義塾大学教授・鶴岡路人氏が一から解説。ソ連崩壊以降の歴史的経緯を振り返りつつ、先日の首脳会談の意義、今後の見通しについても深掘り。 <ゲスト> 鶴岡路人|慶應義塾大学総合政策学部 教授 慶應義塾...
ロシア・ウクライナ和平交渉と安全の保障:停戦後のシナリオ
「安全の保障って何? ウクライナが求める最大の希望はNATO加盟。みんな分かっているけれども、それがなかなか実現できない」—鶴岡路人氏
ロシアによるウクライナ侵攻から3年が経過し、今なお戦闘が続く中、停戦や和平をめぐる国際交渉が活発化している。しかし、交渉の場では「安全の保障」をめぐる綱引きが続き、双方の溝は埋まっていない。ウクライナの将来的な安全保障について、ロシアの再侵攻を防ぐための具体的な方策とは何か。慶應義塾大学総合政策学部教授の鶴岡路人氏に聞いた。

Q. 停戦交渉・和平交渉の現状を整理すると、どのような状況ですか?
現在の停戦・和平交渉を理解するには、「どちらが要求し、主導権をとっているか」「ボールがどちらのコートにあるか」を見るとよい。今年1月にトランプ政権が発足して以降、まずアメリカがウクライナに停戦を求めたが、ウクライナは当初、消極的だった。

停戦は現状の前線を固定化することになり、現在ロシアが占領している領土の奪還が困難になるためだ。2月28日のホワイトハウスでの会談では、ゼレンスキー大統領が「停戦前に安全の保証が必要」と主張したことで、トランプ大統領との間で口論が発生し、決裂した。
その後、アメリカがウクライナへの支援を減らしたことで、ウクライナはアメリカとの関係維持のため停戦を受け入れる姿勢に転じた。この結果、アメリカとウクライナ、さらにヨーロッパが一体となって、ロシアに対して即時停戦を求める構図に変わった。これに対しロシアは「紛争の根本原因の除去」を主張し、時間稼ぎをしている。
Q. 8月15日のアラスカでのロシア・アメリカ首脳会談と、8月18日のゼレンスキー・トランプ会談では何が起きたのですか?
アラスカでの米露首脳会談では、アメリカが「即時停戦」要求を事実上取り下げ、ロシア側の主張である「紛争の根本原因の除去」という議論を受け入れる形となった。これにより「トランプ政権はロシアに弱腰ではないか」という批判が内外で起きた。
この動きに危機感を抱いたヨーロッパとウクライナは、8月18日にワシントンに「押しかけた」形で会談が実現した。イギリス、フランスの首脳やNATO事務総長らがゼレンスキー大統領と共にワシントンを訪れ、アメリカの立場がロシア寄りになることを阻止しようとした。
この背景には、トランプ政権が一方的に設定した停戦期限(最初は50日間、後に「あと10日か12日」と短縮)があった。アメリカが期限を切ったことで、逆にアメリカ自身が追い込まれる形となった。
Q. ウクライナが求める「安全の保障」とは具体的に何ですか?
「セキュリティ・ギャランティー」(安全の保障)とは、停戦や和平が実現しても、ロシアが再びウクライナを攻撃してくる可能性が高いという前提の下で、それをいかに阻止するかという問題だ。これには2つの要素がある。
1. 抑止:ロシアによる再侵攻を事前に防ぐこと
2. 対処:抑止が崩れた場合の効果的な対応
2022年2月の侵攻開始時、ロシアは「ウクライナは簡単に制圧できる」と考えていたが、ウクライナの抵抗とNATO諸国の支援で大誤算となった。この経験から、ロシアに「ウクライナを攻撃しても勝てない」と思わせることが重要となっている。
Q. ウクライナの安全保障のオプションとしてはどのようなものがありますか?
ウクライナにとって安全保障の最も効果的な答えはNATO加盟だ。NATO加盟国になると北大西洋条約第5条の適用を受けることができる。この条項では「一つまたは二つ以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」とされており、攻撃を受けた国を他の加盟国が援助することに同意している。

しかし、ウクライナのNATO加盟には、アメリカが特に後ろ向きだ。その理由は主に2つある:
1. ロシアとの関係悪化を避けたい
2. 有事の際の軍事的負担増加を避けたい
そのため、現在は次の2つの柱が検討されている:
1. 文言による保障:NATO第5条に準じる文言を含んだ二国間協定
2. 有志連合による部隊派遣:イギリスやフランスを中心とする国々がウクライナに部隊を派遣する案
特に後者については、8月18日のワシントンでの会談で重要な議題となった。この場でトランプ大統領がウクライナの安全保障にアメリカも関わるという意向を示したことは大きな進展だ。
Q. ウクライナのNATO加盟希望は、ロシアの侵攻を招いたのでしょうか?
この点は非常に論争的だが、歴史的経緯を見ると興味深い事実がある。ウクライナ国内でのNATO加盟支持率は、2014年のクリミア併合以前は10~20%台と低かった。つまり、国民の多くはNATO加盟を望んでいなかった。
しかし、2014年にロシアがクリミアを一方的に併合し、続いてドンバス地域に介入したことで、ウクライナ国民の意識が大きく変わった。NATO加盟への支持率は一気に過半数を超えるようになった。
本来、西側寄りのウクライナは自然に生まれたわけではなく、ロシアの行動によって形成された面が大きい。プーチン大統領からすれば「自業自得」であり、自ら作った敵と戦っている状況だ。
Q. 今後の交渉で注目すべき点は何ですか?
アメリカとロシアの認識が噛み合っていない点が大きな問題だ。トランプ大統領は三者会談(トランプ、プーチン、ゼレンスキー)の準備を開始したと言っているが、ロシア側には全くその気がない。

また、「安全の保障」についても、アメリカ・ヨーロッパが考える安全保障とロシアが考えるものは全く異なる。ロシアは「NATO諸国の部隊がウクライナに展開することは絶対に認めない」という立場で、ロシアが同意した「安全の保障」とは、ロシアも加わった(つまりロシアが拒否権を持つ)枠組みだ。
こうした根本的なギャップがある限り、現実的・具体的な前進は難しい状況が続くだろう。ギャップをどう埋めていくかが今後の焦点となる。