PIVOT TALK BUSINESS
欧州の投資戦略 日本との協力体制
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2025年8月21日

昨今、ユーロ高や関税の動き、政治不安など欧州経済の動きが注目されている。ユーロ離脱国の可能性は?米関税15%が与える変化とは?日本への影響はあるのか? 第一生命経済研究所 首席エコノミストの田中理氏に、欧州経済の現状と今後の見通しを聞いた。
EUの産業戦略と日本の立ち位置:田中理氏に聞く
EU経済の現状と今後の展望について、第一生命経済研究所首席エコノミスト・田中理氏に聞いた。EUが抱える競争力の課題、グリーン政策の修正、投資戦略の方向性、そして日本との関係性について詳しく解説する。
EUの産業構造は今どうなっている?
Q. EUの産業の柱は現在どのようになっていますか?
ドイツを中心とした製造業が非常に強く、競争力を持つ産業が多い。それに加えて観光業を含めたサービス業もヨーロッパは強みを持っている。

しかし現状はドイツの製造業中心の経済が軌道修正を迫られている一方で、スペインやポルトガルといった国々は比較的経済が好調だ。特にスペインなどは、コロナ後に観光客が戻ってきたことが影響している。
グリーン政策は転換期?
Q. EUといえばグリーン政策というイメージがありますが、何か転換は起きていますか?
グリーンへの取り組みは今後も基本方針として推進していくが、機動的な修正が必要だという認識が広がっている。ドイツがその象徴的な例で、脱炭素とロシアからのエネルギー依存脱却を急速に進めた結果、エネルギー価格が高騰し、産業競争力の弱体化や国民生活への打撃となった。
そのため、より持続可能な形でグリーンへの転換を進める必要性が認識されている。現在のEUでは「脱炭素と競争力をどう両立させるか」が重要な政策の柱となっている。
計画倒れになりやすいEU
Q. こうした政策のマイルストーンは見えていますか?
ヨーロッパは青写真を描いたり、ビジョンを構想したり、計画を立てるのは非常に上手だが、実際にはなかなか実行が伴わないという課題がある。競争力回復についても長年議論されてきたが、実際には効果的な成果が出ていない現実もある。
投資戦略はどうなる?
Q. EUの投資戦略について教えてください。
元々はグリーンとデジタルに力を入れる方針だったが、そこに防衛分野が加わったことで資金不足が課題となっている。欧州各国の財政状況はあまり良くないため、十分な資金を投入できない状況だ。

この問題への対応策として、欧州全体に散在する資金をより効率的に回す方法が模索されている。海外に流出している資金を域内に留める施策や、資本市場・金融市場の統合も検討されているが、実現には相当の時間がかかる見込みだ。
また、民間資金の活用も進められており、政府が保証を付けることで安心して投資できる仕組みを作り、財政資金の代わりに使う取り組みも始まっている。約10年前から開始されたこの取り組みは、一定の効果を上げつつあり、民間投資も回復の兆しを見せている。
日本とEUの協力関係
Q. 日本とEUはどのような協力関係を構築できるでしょうか?
すでに日本とEUの間では、経済連携協定が結ばれており、安全保障分野での連携も進んでいる。最近では競争力確保のための連携も進められている。中国への過度な依存がサプライチェーンにとってのリスク要因となる中、トランプ政権誕生でアメリカとの経済関係維持も難しくなる可能性がある。このような状況下で、共通の価値観を持つ日本とEUの協力関係強化が進められている。

世界のブロック化と日本の立ち位置
Q. 世界がブロック化した場合、日本はどう立ち回るべきでしょうか?
世界は①アメリカ中心、②中国中心、③ヨーロッパ中心の3つのブロックに分かれる可能性がある。日本としては、安全保障の観点からアメリカとの関係は絶対に切れない一方、アジア太平洋地域との関係も最重要だ。さらに、多国間主義や民主主義、自由主義の推進という点でヨーロッパとも共通の立場を持っている。

日本は3つのブロックすべてと一定の関係を保ち、橋渡しの役割を果たせる貴重な存在となり得る。クラスの中のいろんなグループすべてに所属できるような立場だと言える。
今後注目すべき欧州の政治動向
Q. EUの政治で今後より注視していくべき分野は何ですか?
2023年後半にはオランダやチェコの選挙が予定されているが、EU全体の政策を大きく揺るがすほどのインパクトはない。むしろ核となるのはドイツ、イタリア、スペイン、フランスといった国々の選挙だ。中でも目先はフランスの政治展開が特に注目される。
日本とEUから学び合うべきこと
Q. 日本とドイツは似ていると言われますが、EU全体から学べることはありますか?
ドイツと日本の経済構造は確かに似ているので、ドイツが成功している分野から学ぶ視点は重要だ。EUも日本と同様に長年低成長で苦しんでいるが、アジェンダ設定は非常に上手い。競争力とグリーンをセットにして取り組もうとしている点は、日本にとっても参考になる。
日本はグリーン分野での経済の脱炭素化や社会の脱炭素化、システム構築に優れているが、それを競争力と結びつけて議論することはあまり行われていない。この点は日本が学べる部分だろう。
一方、ヨーロッパも日本の事情に意外と関心を持っており、日本を参考にしている分野もある。相互に学び合い、協力しながら、複雑化する国際社会の状況に対応していくことが重要だ。