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自動車業界最新分析:関税ショックと環境規制大転換
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2025年8月14日

自動車各社の第一四半期決算から見えてきたトランプ関税の影響とは?環境規制の大転換はどんなインパクトがあるのか?日系自動車メーカー各社の分析と合わせて、自動車アナリストの中西孝樹氏に聞いた。 <ゲスト> 中西孝樹|自動車アナリスト オレゴン大学卒。山一證券、メリルリンチ証券、JPモルガン証券株式調査...
自動車アナリストが解説、米国関税影響は「ベストシナリオに近い」
米国の追加関税問題で日本の自動車業界はどんな影響を受けているのか。自動車アナリストの中西孝樹氏が詳細に分析する。当初懸念された25%の追加関税は、交渉の結果12.5%に抑えられ、中西氏は「ベストシナリオが出た」と評価。環境規制の緩和という思わぬ追い風も加わり、各社の業績は予想以上の健闘を見せている。

Q. 米国の自動車追加関税の結果をどう評価していますか?
「正直言って、ベストのシナリオが出たと思っています。私は元々、25%の追加関税はおそらく免れないと思っていましたが、夏以降は常識的な線に落ち着くだろうと予想していました。総合関税も自動車の追加関税も15%に修練するという見方を3月頃にお話ししたときは、『甘い』とかなり言われましたが、結果として12.5%になりました。既存分と合わせて15%というのは、ベストなシナリオに近いと思います」
Q. 米国の関税の仕組みはどうなっているのですか?
「関税には3つの大きなカテゴリーがあります。全ての商品にかける総合関税、メキシコやカナダなど特定地域に絞った関税、そして鉄・アルミや自動車など製品を絞った関税です。自動車産業に最も影響があるのは、セクション232条と言われる自動車関税の部分です」

「自動車関税は車両と部品に分けて考える必要があります。日本から輸出する車両には従来2.5%の関税がかかり、そこに追加関税25%が加わると合計27.5%になるところでした。今回の交渉結果で、これが15%になりました」
「また、北米域内(USMCA)で生産された車でも、原産地規則に適合しないものには関税がかかります。アメリカの部品比率が高ければ税金が安くなる仕組みで、カナダで作ると米加の部品比率が50〜60%あるため10数%の関税で済みますが、メキシコは米国部品比率が10%もないため27.5%払わなければならず、メキシコ生産が厳しい状況になっています」
「部品の方は、従来の関税率が4〜5%で、そこに追加分25%が乗るところ、今回は一律15%に変わりました。さらにUSMCAに適合した部品は無税になるという変更があり、これはサプライチェーンを考える上で重要な変化です」
Q. 関税の影響をどう計算すればいいのでしょうか?
「関税の影響を考える際、まず理論的に支払う関税額があります。これは去年の台数と構成がそのままなら、単価と関税率をかければ計算できます」
「しかし実際には、移転価格の調整、仕向け先の変更、価格や台数の調整などの対策で、実際に支払う関税額(グロスの関税費用)を減らすことができます」
「グロスの関税費用に対して、関税に連動する価格引き上げやインセンティブ削減、変動費削減、固定費削減などの対策を講じます。ただし、価格を上げることで数量が減少するという影響も考慮する必要があります。自動車の価格弾力性は2〜3%程度なので、5%価格を上げると理論的に10%程度数量が落ちることになります」
「これら全てをネットした結果が、実際の収益へのインパクトとなります。ただし、各社の開示の仕方は見事にバラバラなので、比較が難しい状況です」
Q. 各社の対応状況はどうなっていますか?
「4〜6月の各社の対応で特徴的なのは、驚くほど値上げがないことです。特にプライスリーダーとなる大手メーカーはほとんど値上げをしていません。スバルは早々に4%の値上げを発表し、三菱も2%の値上げを発表しました。マツダは値上げはしなかったものの、インセンティブを大幅に削減しています」
「これは体力のある大手メーカーが関税の影響を受け止めながら、交渉の結果を見届け、市場が壊れないよう冷静に対応している姿勢を示しています。トランプ政権への配慮もありますが、それ以上に世界経済全体への影響を見極めながら行動を取っているのです」
Q. 関税の影響は具体的にどれくらいですか?
「4〜6月期でいくと、トヨタが4,500億円、ホンダも1,200〜1,500億円程度の影響が出ています。日本の自動車産業全体では約7,600億円の影響です。これを単純に4倍すると約3兆円になり、25%の追加関税が続けば『3兆円』という予想に沿った数字になります」
「トヨタの場合、年間1.4兆円の関税費用を前提にしており、これは多くのアナリストの予想(1兆円程度)を上回りました。この差が生まれた原因として、サプライヤー(例えば電装や愛知製鋼)が被る関税の影響が精査されていなかったことが考えられます。電装だけでも2,000億円、愛知製鋼でも1,000億円の影響があるとされています」
Q. 各社の業績への影響はどうでしょうか?
「トヨタは営業利益を3.2兆円に下方修正しました。コンセンサスは3.7兆円だったので差があり、トヨタの業績は相当圧迫されると受け止められています。しかし発表翌日に株価は上昇しました。これは悪材料出尽くしという見方からです」
「ホンダは5,000億円の営業利益を7,000億円に上方修正しました。当初から最大限の関税額を織り込んでいたため、むしろパフォーマンスが良くなっています」
「日産は第1四半期に700億円の赤字を出し、年間予想はまだ出していません。赤字は避けられないでしょう」
「マツダは赤字必至と言われていましたが、500億円の営業利益予想を出し、株価が急騰しています。これは下期に1,000億円の利益を見込んでいるためで、環境規制緩和の恩恵を正確に織り込んだ結果です」
「スバルも2,000億円の営業利益予想を出し、配当を維持できる見通しから再評価されています」
Q. 国内雇用への影響はどうですか?
「関税が上がるからアメリカに工場を移すという議論がありますが、それは全く現実的ではありません。工場を作るには4年かかりますし、アメリカで作れば関税の25%よりもっとコストが上がってしまいます」
「日本からの輸出減少は大体20万台程度と見ており、日本の生産800〜900万台に対してそれほど大きな影響ではありません。車の税金を下げて国内の買い替えを促進するような政策を取れば十分吸収できる程度です」
「関税が15%に下がったことで、構造的な直接影響はさらに小さくなっています。あとは世界経済がどうなるかが重要で、今のところ何とかソフトランディングかノーランディングに近い形で行けるのではないかと思っています」
Q. トランプ政権による環境規制の変化はどのような影響がありますか?
「非常に大きなポイントは環境政策の転換です。まず、企業平均燃費規制(CAFE)の罰金制度を廃止しました。これにより、燃費基準を満たせない場合に罰金を払ったりテスラからクレジットを買ったりする必要がなくなりました」
「また、カリフォルニア州のゼロエミッション車(ZEV)規制であるACC2も事実上撤回されることになりました。これは2035年までに100%ZEV車にしなければならないという、日本メーカーにとって厳しい規制でした」

「さらに、温室効果ガス(GHG)規制も根拠法が無効ではないかという議論が出ています。これらの環境規制緩和は、エンジン技術やハイブリッド技術に強みを持つ日本メーカーにとって追い風です」
「関税で2兆円支払うことになっても、それはそのうちアメリカのインフレ経済が吸収してくれます。一方、環境規制に対応するためのコストや潜在的な市場シェア喪失は取り戻せません。どちらが得かを天秤にかければ、圧倒的に関税コストの方が安いのです」
「このように、トランプ政権は本質的には日本の自動車産業にとって親和性が高く、日本メーカーが落ち着いて取り組み直せるゆとりとキャッシュフローを与えたという意味で、決して悪い政権ではないと思います」
Q. 今後の展望はどうでしょうか?
「今後の関税率は、自動車関税が今年は平均19.2%、来年は15%になり、下がっていく見通しです。一方、総合関税は今年は平均13%、来年は15%で上がっていくため、自動車業界と他業種で明暗が分かれることになります」

「業績については、日本の自動車セクター全体で去年7.7兆円だった営業利益が、関税影響で約2兆円下がり、対策で5,000億円程度回復し、円高の影響などで最終的に5.7兆円程度になると予想しています。前年比25%減となりますが、営業利益率は6%程度を維持でき、業界の健全性を損なうような悪い展開ではありません」
「各社とも北米生産能力の拡大を検討しています。トヨタやホンダはすでに北米工場がフル稼働状態なので、シフト変更などで生産能力を上げる方向で検討しています。マツダはメキシコから日本への生産移管、スバルはアメリカとのクロス生産など、各社それぞれの対応を進めています。