PIVOT TALK BUSINESS
【遺伝だけでは決まらない】子どもの身長を伸ばす食事
(1157)
1.6万回視聴
2025年8月23日

遺伝で決まると思われがちな「身長」。実は子どもの頃の食事や栄養が伸び幅に大きく影響することがわかってきた。身長の伸びるメカニズムや子どもの身長を伸ばすために必要な栄養素について、医師の田邊雄氏に聞いた。 <ゲスト> 田邊雄|医師 金沢医科大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科へ...
遺伝だけでは決まらない!子供の身長を伸ばす食事とは?
身長は遺伝だけで決まるものではなく、食事によって大きく影響を受ける——。「身長先生」こと東京神田整形外科クリニック院長の田邊雄先生によれば、理論的には適切な食事管理によって最大18cmもの差が生まれる可能性があるという。今回は、田邊氏が4月に出版した「身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30」を基に、身長の伸びるメカニズムと効果的な栄養摂取について紹介する。

Q. 身長は本当に遺伝だけで決まるの?
身長は遺伝だけで決まるという考えは誤解です。確かに遺伝的要素は重要ですが、(理論上は)適切な食事管理によって最大18cmもの差が生じる可能性があります。
遺伝身長の計算式では、男子の場合は「(父親の身長+母親の身長+13)÷2±9cm」、女子の場合は「(父親の身長+母親の身長−13)÷2±8cm」となります。例えば、父親が171cm、母親が158cmの場合、男子の期待される身長は171cmですが、遺伝的な変動幅を考慮すると162〜180cmまでの範囲に収まると考えられます。

これは同じ親から生まれた兄弟でも、18cmもの身長差が生じる可能性があることを示しています。重要なのは、この差をどのように考えるかということです。
Q. 子どもの身長が伸びるメカニズムとは?
身長は「伸びるスピード」と「伸びる時間」の掛け合わせで決まります。車の走行距離に例えると、時速30kmで1時間走れば30km進むのと同じように、伸びるスピードと伸びる時間の積で最終的な身長が決まるのです。
身長を伸ばすには、この2つの要素を最適化する必要があります。食事によって栄養を十分に摂取することで伸びるスピードを上げることができます。一方、伸びる時間はコントロールが難しい面もありますが、早熟を避けることで伸びる時間を確保できます。

特に重要なのは思春期の時期です。思春期が早く訪れると「早熟」となり、伸びる時間が短くなるため最終身長が低くなりがちです。逆に思春期が遅い「晩熟」タイプの子どもは、伸びる時間が長くなるため最終身長が高くなる傾向があります。
Q. 子どもの早熟・晩熟はどうやって判断する?
自分の子どもが早熟か晩熟かを判断することは重要です。医療機関で検査を受けるほか、男子であれば陰毛が生えてくるタイミングや声変わりの時期、女子であれば胸の発達が始まる時期などから判断できます。
早熟を避けるためには、肥満に注意することが大切です。肥満度が高いと早熟傾向が強くなることが知られています。子どもの体型を把握するには、まずはお腹を触って確認してみることから始めましょう。さらに科学的な方法としては、カウプ指数やローレル指数、BMIなどの計算式を活用できます。
体脂肪率の測定も有効です。思春期には急激な身長の伸びに伴い体脂肪が減少するため、適切なカロリー摂取が必要になります。肥満にも痩せすぎにも注意しながら、適正な体型を維持することが大切です。
Q. 子どもの身長を伸ばすために必要な栄養素は?
子どもの身長を伸ばすために特に重要な栄養素は以下の5つです:
1. タンパク質
2. 亜鉛
3. ビタミンD
4. カルシウム
5. ???(後編で紹介)
タンパク質は身長の伸びに最も重要な栄養素の一つです。国際的なデータを見ると、アメリカやオランダなどタンパク質摂取量の多い国は、カンボジアやタイなど摂取量の少ない国と比べて平均身長が高い傾向があります。
特に動物性タンパク質(肉、魚、卵、乳製品など)の摂取が効果的です。穀物などに含まれる植物性タンパク質だけでは不十分とされています。
Q. タンパク質を効果的に摂取するには?
牛乳は手軽にタンパク質を摂取できる優れた食品です。研究によると、1日3杯の牛乳を飲んだ子どもは、0〜1杯の子どもに比べて約2.5cm身長が高くなったというデータがあります。
卵も優れたタンパク質源です。1日2個の卵を摂取することで身長の伸びに良い効果が期待できます。
タンパク質は一度に大量に摂取しても吸収に限界があるため、朝・昼・晩に分けて摂取するのが効果的です。1回の摂取量は20〜40g程度が目安になります。例えば、朝と晩に牛乳を1杯ずつ飲み、昼は給食で提供される牛乳を飲むという方法が実践的です。
脂質やコレステロールについては、子どもの体型によって調整が必要です。痩せ型の子どもであれば脂肪分も積極的に摂取し、肥満傾向がある場合は低脂肪乳を選ぶなど工夫しましょう。
Q. 食事改善はいつから始めるべき?
子どもの食事改善はいつからでも始められます。ただし、思春期前後の時期は特に重要です。10歳前後から中学生にかけての時期は、思春期の訪れによって身長の伸びが大きく左右されるため、この時期の栄養管理が特に重要になります。
また、子どもの体型や成長段階によって必要な栄養は変化します。例えば、急成長期には体脂肪が急激に減少するため、十分なカロリー摂取が必要になります。子どもの状態を定期的に確認しながら、必要な栄養素を適切に調整していくことが大切です。
Q. 身長に関する医療はどう変わってきた?
医療の歴史の中で、身長に関する医療はあまり重視されてきませんでした。初期の医療は生死に関わる問題や感染症、そしてがん治療などに焦点が当てられてきました。しかし、現代では寿命が延び、より良く生きるための医療へとシフトしています。

その中で、身長に関する医療も注目されるようになってきました。身長は高くなければいけないわけではありませんが、社会の中で一定の役割を持っています。子どもがより良い人生を送るための選択肢として、身長治療が考えられるようになってきたのです。
特に「体質性低身長症」という、病気ではないが身長が低いために悩む子どもたちへの治療が注目されています。これまで医学的に解明されてきた知見を活かし、子どもたちの成長をサポートすることが可能になってきました。
身長は遺伝だけでなく、適切な栄養摂取と生活習慣の改善によって大きく影響を受けます。子どもの成長を見守りながら、バランスの取れた食事を提供し、健やかな成長をサポートしていきましょう。