ECONOMICS101
2025下半期 日本経済の最悪シナリオ
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2025年8月12日

7月の米雇用統計はなぜ市場に衝撃を与えたのか?トランプ関税は米国経済を「ハードランディング」に導くのか?エコノミストの永濱利廣氏とエミン・ユルマズ氏が、2025年後半の世界経済を徹底討論。日本の「景気後退」シナリオと、今後の円・株の行方を展望する。 <ホスト> 永濱利廣|第一生命経済研究所 首席エ...
2025年下半期経済展望:トランプ関税とその影響
「トランプ関税の影響で、日本は景気後退に突入する可能性が高い」

Q. 7月の米雇用統計について、どのような見解がありますか?
7月の米雇用統計が悪化することは予測されていました。しかし、5月と6月のデータが大幅に下方修正されたことは予想外でした。特に下方修正の規模が約25万人分に及び、市場に冷水を浴びせることになりました。

実はこの傾向は2年前から続いており、最初に発表される数字が強く、市場がそれに反応した後で下方修正されるというパターンが繰り返されています。今回は特に修正幅が大きかったため、市場に与えた衝撃も大きくなりました。
Q. 雇用統計の背景にある米国経済の実態はどうなっていますか?
米国経済においては、正規雇用が減少し、パートタイム労働が増加する傾向が見られます。高給取りの仕事が減り、Microsoft等の大手IT企業ではレイオフが進んでいます。これは雇用統計上では同じ一人のカウントでも、経済へのインパクトは全く異なります。
一方でサービス業における賃金上昇圧力は依然として強く、チップの相場も以前の10%から20%が当たり前になり、さらに上昇しています。またチップを要求する業種も拡大しており、サービス業の実質的な賃金が上昇しています。
このように米国経済は一部では強さを示す一方で、構造的な変化も進んでいます。
Q. 9月のFRBによる利下げはあるのでしょうか?
雇用統計の悪化を受けて、9月の利下げ確率は9割程度まで織り込まれていますが、実際には難しい判断になるでしょう。インフレがなかなか落ち着かない状況では、利下げが困難になります。
また米国の政策金利を引き下げても長期金利が上昇するリスクがあります。昨年、政策金利を5.5%から4.5%に引き下げた際、10年国債金利は3.6%から4.5%に上昇しました。特に住宅ローンの金利は長期金利に連動するため、政策金利の引き下げが住宅市場に必ずしもプラスに働くとは限りません。
パウエルFRB議長は、大統領の圧力に屈したという印象を避けたいという考えもあるでしょう。それでも一度は利下げする可能性が高く、そのための大義名分として、もう一度雇用統計が弱く出ることを待っているかもしれません。
Q. トランプ関税が世界経済に与える影響はどのように予測されますか?
今回のトランプ関税は前回と大きく異なり、中国だけでなく全世界を対象としています。これによりフィードバックループが形成され、世界各地で景気が悪化し、その影響が巡り巡ってアメリカに戻ってくる可能性があります。

世界的な保護貿易が最後に拡大したのは1930年代で、当時アメリカが関税率を約40%に引き上げたことに対し、フランスはアメリカ車に100%の関税をかけるなど報復措置が取られました。同様に、現在のアメリカに対しても、特にデジタルサービスやビッグテック企業に対する反撃が予想されます。
このような状況下で、アメリカ経済がハードランディング(急激な景気後退)する可能性も無視できません。
Q. 日本経済への影響はどのようになるでしょうか?
日本経済にとっての最良のシナリオは、アメリカが適度なハードランディングを経験し、関税を引き下げることです。中間的なシナリオはソフトランディング(緩やかな景気減速)で関税がそのまま維持される状況、最悪のシナリオはハードランディングが金融不安にまで発展するケースです。
過去の例を見ると、2018年のトランプ関税発動時には、アメリカが景気後退に向かう一方で、日本はマイナス成長に陥りました。日本は国内経済が脆弱なため、輸出の減少だけで景気後退に入りやすい構造になっています。
ただし、今回の景気後退は2012年の欧州債務危機の影響で起きた程度の「実感なき景気後退」になる可能性が高いと考えられます。
Q. 日本の参院選結果と自民党総裁選について、どのような見方がありますか?
参院選では、特に安倍政権時代の支持基盤だった保守層と若年層が自民党から離れ、国民民主党や維新に流れました。インフレによる生活への圧迫が若者の政治参加を促進している側面もあります。

現在の自民党内の構図としては、リベラル財政高派と保守財政拡大派の対立があります。前者は小泉進次郎氏や林芳正氏、後者は高市早苗氏や小渕優子氏などが代表的です。
石破首相の続投については意外にも可能性があるという見方もあります。自民党内では保守層が弱まり、リベラル派が強くなっている状況です。しかし、これは参院選の民意とは逆の方向性であり、長期的には厳しい状況になる可能性があります。
Q. 今後の円相場はどうなりますか?
円は少し高くなる可能性があります。その理由として、今年後半以降、インフレが急速に低下するというコンセンサスがあります。現在の円安水準は、昨年の160円と比べればまだ10円程度円高の水準です。
また、トランプ関税によってアメリカのインフレは上昇するものの、世界経済が悪化すれば商品価格が下落する可能性があります。加えて、日銀が追加利上げを行う可能性も考えられます。
こうした要因から、円は130円台まで上昇する可能性があると予測されています。
Q. 世界経済の中長期的な展望はどうでしょうか?
現在の世界経済は、過去の歴史にも見られる財政問題の臨界点に近づいています。これまで世界各国は財政拡大と金融緩和を続けてきましたが、市場はこれ以上のお金の供給に対して警告を発しています。
歴史的に見ると、このような状況は最終的に通貨価値の下落や経済の崩壊につながってきました。古代ローマでは通貨の価値が200年で1/200まで下落し、フランスやイギリスでも同様の問題が発生しています。
特に懸念されるのは、これまで世界の覇権国家としてソフトパワーを行使してきたアメリカが、トランプ政権下でハードパワーを使おうとしていることです。これは世界中で反米感情を高め、最終的にはアメリカ自身に悪影響を及ぼす可能性があります。
中国は現在、この状況からむしろ利益を得ている可能性があり、多くの国々が中国寄りになっています。アメリカの「ヤクザ的」な通商政策は、世界経済の不確実性を高めており、ビジネスの予測可能性を損なっています。