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元自衛官現場トップが警告。自衛隊の不都合な真実
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2025年8月13日

自衛隊に告ぐ敗戦から80年が経った今も、海上自衛隊には旧海軍の文化が強く残っている。自衛隊が抱える組織としての問題点は何か?どうすれば日本を守ることができるのか?元自衛官現場トップの香田洋二氏に聞いた。 <ゲスト> 香田洋二|元自衛艦隊司令官 1949年徳島県生まれ。72年に防衛大学校を卒業し海上...
「自衛隊を目覚めさせる」元自衛艦隊司令官が明かす組織の課題
「目を覚ませ自衛隊」と警告する香田洋二元自衛艦隊司令官が語る、海上自衛隊の実態と日本の防衛が抱える問題点

Q. 香田さんは著書で「目を覚ませ自衛隊」と前代未聞の警告をしていますが、この本はどういう意図で書かれたのでしょうか?
香田洋二さんは以前「防衛省に告ぐ」という本を出版した後、自衛隊についても自己批判的に見直すべきという声があったと説明している。70年近く大きな組織改変がないまま運営されてきた自衛隊の現状について、一個人として見たところを記したものだと語っている。
Q. 海上自衛隊と旧海軍はどういう関係にあるのでしょうか?
戦後、警察予備隊(現在の陸上自衛隊の前身)は旧陸軍との縁を切り、新しい防衛力整備を進めた。一方、海上自衛隊の場合は「船」という任務達成の現場があるため、旧海軍との完全な断絶が難しかった。当時は「陸軍は悪玉、海軍は善玉」というイメージがあり、明治以来、海軍は日本の近代化を支えてきた歴史もあった。そのため海上自衛隊は意図的に海軍の良い部分を引き継ぎ、防衛力を持って国を守る組織としては相当似通ったところがあると香田さんは指摘している。
Q. 海上自衛隊の人間関係や文化はどのような特徴がありますか?
香田さんによれば、艦内での生活は長さ120m、幅10mの空間に250〜300人が住むような環境であり、短くても2週間、長い時は2ヶ月もの間、限られた空間で生活する。そのため人間関係は隠し立てができないほど密接になる。艦長は「お父さん」的な存在だが、一方で艦長の意思決定は250人の気持ちと全く違うこともある。艦長の悪口を部下同士で言うのは普通だが、他の艦の人が自分の艦長の悪口を言い出すと「お前に何がわかる」と反発するような独特の関係性があるとも語っている。
Q. 海上自衛隊には「艦乗り」以外の隊員も多いと聞きますが、実態はどうなのでしょうか?
海上自衛隊は航空機の搭乗員や整備に関わる隊員が5割強を占めている。これは海上自衛隊が発足した当初、前の戦争の経験から海上における航空戦力の重要性を認識していたためだ。

日本の旧海軍は世界で第2番目の海上航空戦力を持っていた。香田さんによれば、現在の海上自衛隊は「航空部隊が強い海軍」という特徴を持っており、これは日本とアメリカ以外にない独特の特徴だという。
Q. 自衛隊の問題点として、人事制度や文化が「戦闘組織」から「官僚組織」になっていると指摘されていますが、具体的にはどういうことでしょうか?
自衛隊の本来の任務は国を守ることであり、有事には戦うための組織だ。しかし戦後70年以上、実際に任務を達成するための戦争体験がないまま過ごしてきた。その結果、考え方から人事制度、文化まで戦闘組織から離れて官僚組織化してしまっている。例えば、約2年ごとにポストを回す人事制度は官僚組織の特徴だ。現場で国を守る戦闘組織であれば、部隊との信頼関係構築や指揮官としての経験蓄積が重要だが、短期間で交代する仕組みではチーム力が発揮できず、一致団結も難しい。
Q. 自衛隊は過去の戦争の失敗から学ぶことができていないという指摘がありますが、なぜでしょうか?
香田さんは「世界の戦闘組織の中で自国の戦史について一番教えていないのは自衛隊ではないか」と指摘している。例えば、ミッドウェー海戦について、未だに失敗の理由について議論が分かれるが、海上自衛隊や防衛省は組織として検証したことがない。アメリカでは過去の失敗から教訓を引き出し、次世代に繋げることが上手いのに対し、日本ではうまくできていない。その理由として、日露戦争以降、自分たちの失敗について真摯に向き合い、次に備えて改善するというアプローチが欠けていると香田さんは分析している。また、負けた戦争の教訓を出すと「自衛隊が侵略を狙う軍隊になる」と批判されることを恐れる風潮もあると指摘している。
Q. 自衛隊の統合運用について、問題点はありますか?
自衛隊の統合運用については、その本質的な議論がなされないまま導入されたと香田さんは指摘する。本来、日本の防衛戦略では、陸上自衛隊は本土防衛、航空自衛隊は空からの脅威対処、海上自衛隊は海上防衛だけでなく米軍の来援確保という役割があったが、このような役割分担についての議論が不十分なまま統合が進められた。

特に米軍の来援を確保するという海上自衛隊の任務は、日本の防衛の根幹にかかわる重要な役割だが、現在の防衛戦略では軽視されていると香田さんは懸念している。
Q. 日本の防衛力強化のために取り組むべき最優先課題は何でしょうか?
香田さんは最大の課題は「人」だと強調している。少子高齢化により自衛隊員の確保が難しくなっているため、政府が省庁横断的に若い世代の配分を考えるマスタープランを作る必要があると主張している。例えば東海・東南海地震が発生した場合、現状では東日本大震災のような自衛隊の派遣は人的に不可能だという。自衛隊だけでなく、医療や教育など社会全体の人材不足に対応するため、徴兵制のような制度も検討する時期に来ていると示唆している。

Q. 防衛費を増やすべきという議論がありますが、適切な水準はどの程度でしょうか?
長年1%のGDP比で抑えられてきた防衛費については、その蓄積された不足分を取り返す必要があると香田さんは指摘している。単に5%といった数字を掲げるのではなく、過去の積み残しを踏まえ、今後10年程度で必要な防衛力を整備するにはどの程度の予算が必要かを積算すべきだと述べている。また、防衛産業の基盤強化も重要で、例えばミサイル用の火薬を製造できる企業が日本に数箇所しかないといった実態も指摘している。防衛力強化は単に予算の問題だけでなく、産業基盤の再構築も含めた総合的な取り組みが必要だという。