
中国車メーカーは世界で勝てるのか?
中国車は世界で勝てるのか?新興国市場に迫る脅威と課題
自動車市場での中国ブランドの急成長が世界的に注目されています。かつては「安かろう悪かろう」と評価されていた中国車が、技術力を向上させ世界市場に大きく進出。特に新興国市場でのシェア拡大が著しいといわれます。本当に中国車は世界市場で勝てるのでしょうか?安藤久史氏にその実態と今後の展望について聞きました。

Q. 現在の中国自動車市場はどのような状況ですか?
中国の自動車産業は2024年時点で生産台数3,128万台、国内販売2,500万台、輸出640万台、輸入70万台となっています。特徴的なのはコロナ禍以降、生産と販売にギャップが生じ、輸出が急増している点です。
パワートレイン別では、中国国内市場ではガソリン車が約50%、プラグインハイブリッド(PHEV)が20%、バッテリー電気自動車(BEV)が67%という構成になっています。一方、輸出ではガソリン車64%、PHEV 5%、BEV 25%と内燃機関車の比率が高くなっています。

輸出先としては、ロシア・CIS向けが全体の約25%と最も多く、次いで中南米(17%)、中近東(15%)、西欧(13%)となっています。ロシア向けが多い理由は、ウクライナ侵攻後に日本や欧州メーカーがロシア市場から撤退し、そこに中国メーカーが参入したためです。BEVについては西欧向けが3割、アジア向けが2割と、先進国への輸出比率が高くなっています。
Q. 世界市場における中国ブランド車のシェアはどの程度ですか?
世界全体で見ると中国ブランド車の市場シェアは22%に達していますが、中国市場を除くと4.6%にとどまります。しかし、中国を除く新興国市場では10.2%と大きなシェアを獲得している一方、先進国市場では1.3%と低い水準です。
将来的には、2035年までに中国国内では7割、ロシアでは4割、アセアン・太平洋・中東・インド・アフリカ・中南米では2割超、中東では1割超の市場シェアを獲得すると予測されています。新興国全体では現在の10%超から2035年には20%超まで拡大する見込みです。
現状、新興国市場では日系ブランドが32%と最大シェアを維持していますが、中国系は日系と欧州系からシェアを奪いつつあります。2019年比で日系は5.6ポイント、欧州系は3.6ポイント、米系は3.1ポイント下落しています。米系については中国系との競争というより、利益を優先して小型モデルから撤退する戦略の結果という側面もあります。
Q. 中国車が新興国で支持される理由は何ですか?
中国車の新興国市場での支持拡大には主に以下の理由があります:
1. 価格の安さ:同クラスの日系車や米系車に比べて約10%程度安く購入できます。
2. 充実した装備:デジタルディスプレイなど先進的な装備が標準で搭載されています。
3. 現地有力ディーラーとの提携:新規にディーラー網を構築するのではなく、現地の大手販売網と提携して展開しています。
4. SUVの強さ:世界的に人気のSUVセグメントに強いラインナップを持っています。
メキシコでは、中国系MGブランドの車が同クラスの日産やシボレーより1割程度安い価格で、充実した装備を提供しています。また、SUVが新興国で支持される理由としては、車高が高く悪路に適していることや、デザイン性の高さが挙げられます。
Q. 中国ブランド車の主要プレーヤーはどこですか?
新興国市場での主要プレーヤーはチェリー、長城汽車、吉利汽車、上海汽車、長安汽車などで、先進国市場では上海汽車、BYD、長城汽車、チェリー、吉利汽車の順になっています。各社で市場戦略は異なり、例えばロシア市場ではチェリー、吉利、長城が積極展開している一方、上海汽車やBYDは控えめです。
上海汽車はイギリス由来のMGブランドを活用して西欧や太平洋地域で展開していますが、ロシアでの積極展開が西側諸国での販売に影響する可能性を考慮しています。BYDはEVとPHEVに特化しており、インフラ整備が不十分なロシアではまだ本格展開していません。
地域別では、ロシア市場でチェリーが17%、長城が12.5%、吉利が10%のシェアを獲得しており、この3社だけで40%近くを占めています。
Q. 中国車はリセールバリューなどの課題をどう解決していくのでしょうか?
中国車の大きな課題としてリセールバリュー(残価率)の低さが挙げられます。ボリビアでは2019年に30%あった中国車のシェアが2024年には18.5%まで低下しました。これはアフターサービスや部品供給体制の不十分さ、そしてリセールバリューの低さが主な理由です。
中国メーカーは現在、市場参入の第一段階を終え、課題が明確になった次のステージに入ろうとしています。中国側の見方としては「課題が見えたら解決すればいい」という考え方で、例えばリセールバリューの低さを補填する制度の導入などを検討しています。

2000年代の二輪車市場では、安い中国製二輪車が東南アジアで一時的に普及したものの、品質問題で日系が盛り返した歴史がありますが、今の中国の技術力は当時とは比較にならないほど向上しています。中国メーカーの課題解決力が試されるフェーズに入っているといえるでしょう。
Q. 日本メーカーは中国車の脅威にどう対応すべきでしょうか?
日本メーカーが中国車との競争で勝ち抜くためには、内装のデジタル化や近代的なデザインの強化が必要です。中国車が若者向けに近代的なデジタルディスプレイを採用しているのに対し、日本車は乗り心地の良さを追求してきた傾向があります。中国車のように内装を近代的にすることで対抗できる可能性がありますが、開発コストと製品単価のバランスが課題となります。

また、モンゴルの例のように、右ハンドルの日本中古車と左ハンドルの中国新車の戦いも注目すべき点です。モンゴルは右側通行国であるため、右ハンドル車は運転しにくく、中国の左ハンドル新車がその点で優位性を持っています。日本の中古車輸出と中国の新車との競争は、自動車産業全体に影響を与える可能性があります。
特に注目すべき市場はASEANと中南米で、トランプ関税の影響で日本メーカーが収益源を探る中、中国メーカーが積極攻勢をかけている地域です。
Q. 結論として、中国車は世界で勝てるのでしょうか?
中国車は特に新興国市場では今後も勝ち続け、2035年には新興国市場の20%超のシェアを獲得する可能性が高いです。一方、先進国市場では電気自動車の普及スピードが不透明なこともあり、成長は緩やかになる見込みです。
日本の自動車産業にとって特に注視すべきはASEANでの中国車の躍進と、トランプ関税の影響で注目が集まる中南米市場での競争です。これらの市場で中国車がどのように展開していくかが、今後の世界自動車市場の勢力図を左右する重要な要素となるでしょう。