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トランプ関税15%の大恩恵。自動車メーカーの利益はいくら増えるか?
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2025年7月25日

15%で決着した自動車関税。この大きなポジティブサプライズによって、日系自動車メーカーの利益はどれだけ増えるのか?今後の競争にどんな影響を及ぼすのか?フォーインの安藤久史アナリストに分析してもらった。 <ゲスト> 安藤久史|フォーイン アナリスト ソウル大学大学院(修士課程、国際協力学)修了後、共...
トランプの自動車関税15%への引き下げは日本にとって「グッドサプライズ」
安藤久史氏(フォーイン アナリスト)に、米国による自動車関税の引き下げとその影響について聞いた。トランプ政権による日本車への関税が当初予定の25%から15%に引き下げられることが決まり、日本の自動車業界に大きな安堵をもたらした。

Q. 自動車関税が15%に引き下げられたことは業界にとってどれほどのサプライズだったのか?
日本の自動車業界関係者にとって非常に大きなグッドサプライズだった。当初はアメリカとイギリスとの関税交渉でイギリスは自動車関税の完全引き下げを獲得したが、これはアメリカ市場におけるイギリス車の影響が小さいためと考えられていた。
トランプ大統領はこれまで自動車や鉄鋼・アルミニウムの関税については交渉とは別だと明言していた。日本からアメリカへの自動車輸出は対米貿易赤字の大部分を占めており、これを除外することはないだろうという見立てが一般的だった。
そのため、MFN(最恵国待遇)を含めると27.5%だった関税が15%に引き下げられることは、業界内で非常に好意的に受け止められている。
Q. 日本はなぜこのような好条件を引き出せたのか?
詳細は不明だが、日米間の交渉の結果として実現した。ただし、アメリカ側は米国産農産物の日本市場解放と、アメリカ車の日本への輸出促進を求めている点には注意が必要だ。
特に重要なのは「市販機(6ヶ月)に一度見直し」という条件だ。これはトランプ大統領が合意内容に満足しなければ、関税を25%に戻す可能性があることを意味している。アメリカ車が日本で売れない場合、「なぜ日本でアメリカ車が売れないのか」という議論になる可能性があり、今後も油断はできない状況だ。
Q. 自動車関税引き下げの影響をどう分析しているか?

完成車輸出分のみで試算すると、2024年のトヨタの日本製車のアメリカ販売台数は55.5万台、スバルが29.3万台、日産が15.3万台、ホンダが6,000台(アメリカでの現地生産が多いため少ない)、マツダが22.3万台、三菱が11万台となっている。
関税27.5%がかかった場合の支払額は、トヨタが6,748億円、15%では3,681億円となり、その差額は約3,000億円のプラス効果がある。
2025年3月期の営業利益を見ると、トヨタは4兆7,955億円で、27.5%の関税がかかっても4兆円超の営業利益を確保できる。一方、マツダは2024年度の営業利益が1,861億円で、27.5%の関税では201億円の赤字に転落するが、15%なら830億円の黒字を維持できる。このように、特に中堅メーカーにとっては生死を分ける重要な意味を持つ。
Q. 部品輸出やメキシコからの輸出についてはどうなるのか?
今回の合意では、総合関税を25%から12.5%に引き下げることが基本で、それにMFN関税が加わる形になる。部品については品目によって異なるが、12.5%プラスMFN関税という計算になると予想される。
マツダのような企業では、部品やメキシコからアメリカへの輸出に関わる関税まで含めると、依然として厳しい状況が続く可能性がある。完成車の関税だけを見れば黒字確保できるように見えても、全体としては赤字リスクが残っている。
Q. 米国自動車メーカー(ビッグ3)はこの決定をどう受け止めているのか?
日本とは真逆の反応で、非常に否定的だ。25%の高関税があれば価格面でアメリカ車が有利だが、15%に引き下げられることで価格競争において日本車が有利になる。
さらに複雑な問題として、GMは韓国で生産してアメリカに輸入している車種がある。もし韓国からの輸入に25%の関税が維持される一方で、日本からは15%になると、GMにとって不利な状況になる可能性がある。
トランプ大統領はビッグ3も重視しているが、自動車産業だけでなく全体のバランスを考慮した決断と思われる。
Q. 日本の自動車メーカーは既に何か対応を始めているのか?

関税引き下げ前から、各社は対応策を講じていた。日本からアメリカへの自動車輸出額のデータを見ると、トランプ政権発足後の2025年1月から6月にかけて1台あたりの輸出額が急激に下がっている。
これは関税対策として、同じ製品でもアメリカに輸出する際の価格を下げる手法を取っているためだ。製造元で価格を抑え、アメリカの販売店に渡す際に手数料などを上乗せすることで、消費者価格を変えずに関税負担を減らす「裏技」を使っている。
ただし、アメリカ政府もこうした対応を把握しており、あまり極端なことをすれば問題になる。今回15%で決着したことで、こうした異例の対応は通常に戻ると予想される。
Q. 今後の米国戦略はどう変わるか?
現地生産を増やしたいという思いは各社にあるが、アメリカでは労働力確保が最大の問題となっている。工場を作っても働き手がおらず、賃上げを続けないと人材確保ができない状況だ。
15%の関税が続くのであれば、アメリカに生産を移す合理性は必ずしも高くない。しかし、トランプ政権がそれを良しとするかどうかは別問題であり、政治的な要素も大きい。
最も重要なのは、既存のサプライチェーンを使った従来型のビジネスモデルでは成り立たなくなっている企業があるという点だ。トヨタのような大企業は4兆円の黒字を確保できているが、他の企業はサプライチェーンを含めた根本的な見直しが必要になっている。
Q. トヨタはアメリカでGMを抜く可能性があるが、それは政治的に問題にならないか?
1度抜くことはあっても、圧倒的に勝ち続けることは政治的に慎重になる必要がある。トヨタが圧倒的な差をつけそうになった場合は、小型車の販売を減らし、より利益率の高い大型車や高級トリムモデルに注力することで、販売台数を意図的に抑制する戦略を取る可能性がある。
これはトランプ政権だけでなく、アメリカという市場での長期的なビジネス展開を考えると、常に配慮すべき点だ。
Q. 今後の注目点は何か?
韓国とEUの対米関税交渉の行方が重要だ。韓国は従来、米韓FTAにより基本的に0関税で輸出できていたが、今回の変更で日本と同様に関税がかかることになった。
もしEUと韓国が25%の関税を課される一方で日本が15%であれば、日本車の価格優位性が高まる。逆に全て同じ15%になれば、その優位性は薄れる。
また、為替の動向も重要だ。現在の円安は自動車メーカーにとって追い風だが、もし大幅な円高になれば、関税引き下げの効果が相殺されてしまう可能性がある。今回の関税引き下げで得た「アディショナルタイム」の間に、各社は戦略の見直しを進める必要がある。
北米市場の重要性はメーカーによって異なるが、トヨタは売上高の31%、ホンダは50%、日産は42%、マツダは39%、スバルに至っては77%が北米市場に依存している。こうした状況を考えると、今回の関税引き下げは日本の自動車産業と経済全体にとって極めて重要な意味を持っている。