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参院選徹底分析:新興政党と伝統政党の明暗
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2025年7月21日

自公過半数割れとなった参院選。国民民主・参政党の躍進と、自民・立憲の低迷はなぜ起きたのか?今後も参政党ブームは続くのか?自民党に未来はあるのか?選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏に分析してもらった。
参院選結果から見る日本政治の歴史的転換点
参院選の結果分析から、日本政治の未来像が浮かび上がった。ネットメディアの台頭、世代交代、政党システムの再編など、多くの変化の兆しが見られる。選挙ドットコム編集長の鈴木邦和氏が語る分析から、今後の日本政治がどう変わっていくのかを探る。

Q. 今回の参院選結果をどう評価しますか?
自民党が立憲民主党のおかげで耐えたというのが今回の総括です。接戦区を立憲と自民党で最後争っていましたが、立憲が予想以上に伸びず、自民党が競り勝った選挙区がいくつもありました。その影響で自民党が意外と耐えたという印象です。
比例はほぼ予測通りでしたが、選挙区では立憲民主党の読み間違えがありました。例えば福島や岡山などの1人区で、接戦だったところで立憲が2-3%差で競り負けてしまいました。また福岡のような3人区では5番手、茨城でも3番手になって議席を獲得できませんでした。

Q. 立憲民主党の伸び悩みの原因は何だったのでしょうか?
立憲民主党の伸び悩みには大きく3つの要因があります。
1. 調査の補正値が少し足りなかった(立憲を若干強めに見積もっていた)
2. 政権批判票が思ったより立憲より参政党に流れてしまった
3. ネットの影響力が全体の4割以上に上がった
特に朝日新聞の出口調査によると、投票する際にSNSや動画サイトを重視した層は前回の4割から今回は5割まで上昇しました。立憲民主党はSNSを重視した層では9%の支持、重視しなかった層では16%の支持と大きな差があります。ネットの影響力の上昇が立憲民主党に不利に働いたと考えられます。
Q. チーム未来の議席獲得についてはどうでしょうか?
チーム未来が1議席獲得したのは素晴らしい成果です。調査の中終盤でもまだ議席獲得は見えないような状況でしたが、最終盤で伸びていった印象があります。女性の無党派層の受け皿になった可能性もあり、一定のブルーオーシャンを開拓できたのかもしれません。
参院選では新しい政党が議席を取ることが比較的起こりやすく、2022年は参政党、2019年はれいわ新選組やNHK党が新たに議席を獲得しています。参院選の仕組み上、全国で特定の得票率を取れば1議席獲得できるという制度が新興政党には向いています。チーム未来は前回のれいわ新選組などと違い、序盤から中盤では議席獲得の見込みがなかったので、最終盤での伸びは特筆すべき点です。
Q. 今回の選挙から見えてきた重要なポイントは?
最も注目すべきは立憲民主党の落ち込みが全体の政局に与える影響です。立憲民主党は選挙のたびに政党支持率が上がるという特徴がありましたが、今回はその伸びがほとんど見られませんでした。その伸びしろを国民民主党と参政党に奪われた形になっています。
また、SNSを重視した層と重視しなかった層の比較では、自民党、公明党、立憲民主党、共産党といった伝統政党はすべてSNSを重視した層での支持率が低くなっています。年代別の比例投票先を見ても、これらの政党は高齢世代に支持が偏っている一方、国民民主党や参政党、れいわ新選組などの新興政党は若い世代から支持を集めています。
選挙における世代交代がネットによって加速され、実際に起きているのが今回の選挙で明らかになりました。

Q. 参政党と国民民主党の躍進について、どのような分析をされていますか?
参政党は特徴的な躍進を見せました。選挙期間中、参政党の伸びが報道されると各政党が一斉に参政党に関するネガティブキャンペーンを始めましたが、それが逆効果になりました。通常、選挙ではネガティブキャンペーンやスキャンダルが影響を及ぼしますが、参政党に関してはアメリカのトランプ現象のように、批判すればするほど話題になり伸びていくという特徴が見られました。
国民民主党は山尾議員問題で一時支持率が下がりましたが、回復しました。硬い支持層が一部剥がれても、無党派層の受け皿として機能することで議席を確保できました。日本の政治では無党派層が約4割を占めるため、この層からある程度支持を集められれば十分に伸びることができます。
Q. ネットメディアの影響力はどのくらい大きくなっていますか?
YouTubeの再生数が桁違いになっていることに驚きました。昨年の衆院選が2億7000万回だったのに対し、今回は17億5000万回でした。
また注目すべきなのは第三者の割合が大きく増えたことです。従来は切り抜き動画が多いイメージでしたが、今回調査したところ切り抜きは3割程度しかなく、ウェブメディアやマスメディア(テレビ、新聞、雑誌)がYouTubeに投稿したコンテンツ、タレントやYouTuberの発信など、第三者の情報発信が多様化しています。
テレビとYouTubeを合算した情報量は過去最大で、質も高く、投票率向上にも貢献しました。メディアとしても社会的意義と視聴率の両面からメリットがあるため、今後もこの傾向は続くでしょう。
Q. 自民党支持率低下の根本原因は何ですか?
自民党が今回歴史的な大敗をした最大の要因は、2023年11月の政治資金問題から支持率が落ち、そこから回復していないことです。NHKの政党支持率推移を見ると、自民党は2013年に政権復帰してから35-40%の支持率を維持してきましたが、政治資金問題で急落し、その後回復していません。
物価高騰などの経済問題も影響していますが、それは限定的で、むしろ政治不信が大きな影響を与えています。政治不信が高まると既存政党への信頼が低下し、ポピュリズム的な主張が伸びやすくなります。これが新興政党の躍進を後押ししたと考えられます。
Q. 今後の政局シナリオはどうなりそうですか?
短期的には石破首相の去就が焦点です。続投意欲を示していますが、中期的に持つことは考えづらく、数ヶ月から半年程度のタイミングで立ち行かなくなる可能性があります。理由は2つあります。
1. 自民党内での党運営がうまくいかなくなる
2. 他の政党からの協力が得られない
特に衆院選前には確実に自民党は顔を変えるでしょう。次の総裁候補としては高市氏が有力ですが、高市氏でも自民党支持率を完全に回復させることは難しいと思われます。
高市氏が総裁になったタイミングでなるべく早く衆院解散・総選挙を行うと考えられますが、次の衆院選でも政権交代は起きにくく、自民党も野党も過半数を取れないような状況になる可能性が高いです。
Q. 日本の選挙制度は変わる可能性がありますか?
中期的には選挙制度の見直しが議論されるでしょう。現在の小選挙区制は2大政党制を前提とした制度ですが、実際には2大政党が弱体化し、多党化が進んでいます。この矛盾により政治が安定しません。
自民党が6月にまとめた政治改革大綱でも中選挙区制の復活が検討課題に上がっています。村上総務大臣や林官房長官も小選挙区制の問題点に言及し、中選挙区制も選択肢として挙げています。
自民党としても現状では小選挙区制では政権運営が困難になるため、中選挙区制への移行にメリットを見出す可能性があります。野党にとっても中選挙区制は有利になるため、利害が一致して選挙制度改革が進む可能性が高いです。

Q. 中選挙区制に戻ると政党システムはどう変化しますか?
中選挙区制になるとより多頭制になり、自民党の議席が減ると同時に、自民党が分裂する可能性があります。自民党がこれまで一枚岩でいられたのは、政権与党であり選挙に勝っていたからです。政治的な考え方は多様で一致していません。
中選挙区制になれば、自民党内でも複数の候補者が同じ選挙区から出馬するようになり、リベラル系と保守系など考え方の違いによって分かれていく可能性があります。自民党が弱体化すれば、同じ政党にいる必要性も薄れます。
結果として、保守合同から80年を経て、今度は保守分裂が起こり、日本政治の構造が大きく変わる可能性があります。もはや保守と革新という軸では見られなくなり、多次元的な政党マトリックスになっていくでしょう。