
スタバ1強に変化あり。カフェ新時代の勝ち筋
カフェ業界最前線!「喫茶店は過去最悪の倒産ラッシュなのにチェーン店は好調」の謎
昨今のカフェ業界では、個人経営の喫茶店が倒産する一方で、チェーン店は絶好調という対照的な状況が生まれている。「コーヒー戦争」とも呼ばれる激しい競争の中、生き残りをかけた戦略とは?そして日本のカフェ文化はどこへ向かうのか?都市ジャーナリスト/チェーンストア研究家の谷頭和希氏に聞いた。

Q. 現在のカフェ業界はどんな状況?
カフェ業界は今、激しい競争状態にある。特に個人経営の喫茶店にとっては「過去最悪の倒産ラッシュ」と言える状況だ。2024年度の4月から2月までの倒産件数は66件と、過去最低ペースを更新した。
この背景にはいくつかの要因がある。まず、コーヒー豆価格の高騰が挙げられる。特に2022年以降、ロブスタ種とアラビカ種の価格が大幅に上昇。ウクライナ戦争をはじめとする国際的な情勢不安の中で、コーヒー豆も含め全ての品目が値上がりしている。
個人経営の喫茶店は、こうした物価高の影響を直接受ける。チェーン店と違って後ろ盾がないため、1店舗の経営が悪化すると即倒産につながりやすい。
Q. チェーン店はなぜ好調なの?
対照的に、スターバックスをはじめとするチェーン店は絶好調だ。スターバックスは2024年2月に銀座に2000店舗目をオープンし、前年度の売上は11%増、営業利益は15%増と成長を続けている。
チェーン店が好調な理由はいくつか考えられる。コロナ以降、週末には多くのカフェが満席になるほど需要が高まっている。渋谷だけでもスターバックスは約20店舗あるが、どこに行っても行列ができている状況だ。
また、街の再開発により、オフィスやホテルが中心となった新しいビルが増え、気軽に立ち寄れる場所が減少。そんな中で、カフェが「ちょっと休憩できる場所」として重要性を増している。
Q. カフェの三強とは?
日本のカフェチェーン店の三強は、スターバックス(1,991店舗)、ドトールコーヒー(1,075店舗)、コメダ珈琲(1,055店舗)だ。特にコメダ珈琲の伸びが著しく、数年以内にドトールを抜いて2位になる可能性が高い。
この三強はそれぞれ異なる特徴を持っている:
1. コメダ珈琲 - フルサービス系。店員がテーブルまでサービスを提供し、食事メニューも充実。ファミレスのような使われ方をしている。
2. ドトールコーヒー - セルフサービス系。カウンターで注文し、商品は自分で取りに行く。
3. スターバックス - シアトル系。セルフサービスではあるが、コーヒー豆へのこだわりと特別な空間づくりで差別化している。
Q. カフェの歴史的な変遷はどうなっている?
カフェの歴史は「ウェーブ」と呼ばれる流れで説明できる:

ファーストウェーブ - スターバックス以前の伝統的なコーヒーショップ。コーヒー豆へのこだわりは少なく、「とにかく飲める」ことを重視。
セカンドウェーブ - スターバックスに代表される、コーヒー豆にこだわったチェーン店。エスプレッソ系の新しいコーヒーをチェーンで提供した。
サードウェーブ - ブルーボトルコーヒーや個人経営の専門店に代表される、より高品質でオーガニックなコーヒーを提供する動き。
現在は、セカンドウェーブとサードウェーブが混在している状況だ。
Q. 「コーヒー」ではなく「珈琲」という表記が増えているのはなぜ?
近年、「コメダ珈琲」「つばき屋珈琲」「上島珈琲店」など、カタカナではなく漢字で「珈琲」と表記する店が増えている。これは単なる表記の違いではなく、ビジネスモデルの変化を反映している。
かつてのドトールコーヒーに代表されるカタカナ表記のチェーン店は、安い価格で回転率を重視する「白利多売モデル」が主流だった。しかし、コーヒー豆の価格上昇により、安価でコーヒーを提供するのが難しくなっている。
そこで、1杯の値段が高くても、ゆっくり滞在してもらい客単価を上げるビジネスモデルへとシフト。漢字の「珈琲」表記は、高級感や本格的なイメージを演出し、そうした戦略の一環となっている。
Q. 個人経営の喫茶店とチェーン店の競争はどうなっている?
日本の喫茶店の総数は1981年から減少し続けているが、その一方でチェーン店は1990年代から店舗数を増やしている。これは特に地方において顕著だ。

かつて駅前商店街に多かった個人経営の喫茶店は、自動車中心の生活スタイルへの変化とともに減少。代わりに駐車場を備えたロードサイドのチェーン店が増えてきた。個人経営の喫茶店が減る一方で、その客はチェーン店に流れているのだ。
また、2010年代からのコンビニコーヒーの台頭も、カフェ業界に大きな影響を与えた。「とりあえずコーヒーを飲みたい」という需要がコンビニに流れたことで、カフェは単にコーヒーを提供するだけでなく、「空間としての価値」や「時間の流れ方が違う場所」として差別化を図る必要が出てきている。
Q. カフェと公園の関係性は?
最近の新しい動きとして、公園のリニューアル時にスターバックスなどのカフェを併設する事例が全国的に増えている。南池袋公園や宮下パークなどがその代表例だ。
カフェと公園はどちらも「リラックスできる場所」という共通点があり、この組み合わせは双方にとってプラスになっている。公園に併設されたカフェは新しい集客スポットとなり、カフェがあることで公園の魅力も高まるという好循環が生まれている。
Q. カフェに求められているものは?
現代のカフェに求められているのは、単にコーヒーを提供する場所以上のものだ。特に注目されているのは「空間としての価値」である。

日常とは少し違う時間の流れを感じられる場所、ほっと一息つける場所、新たな発想が湧いてくるような場所として、カフェは現代の茶室のような役割を果たしている。戦国時代の武将が茶室で新たなインスピレーションを得たように、現代人もカフェで日常とは異なる価値を見出している。
チェーン店の運営会社も、この点を重視している。例えば、コーヒー缶(高級志向)、カフェドクリエ(中価格帯)、カフェベローチェ(低価格帯)といった形で、同じ運営会社が異なるブランドを展開し、様々な需要に応えている。
これからも、単にコーヒーを提供するだけでなく、独自の空間や体験を提供できるカフェが生き残っていくだろう。
