
パリSG、無双の秘密
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2025年7月13日
欧州チャンピオンズリーグ制覇後も勢いが止まらないパリSG。レアルにも圧勝した強さの秘密はどこにあるのか?その牙城を崩すチームは現れるのか?レオザ氏に分析してもらった。
PSGの無敵システムを解剖!「強さの秘密」と「打倒法」を戦術分析の専門家が徹底解説
Q. パリ・サンジェルマンが圧倒的な強さを見せていますが、その要因はどこにあるのでしょうか?
全員が早くて上手くて強い。これは一見当たり前のことに聞こえるかもしれないが、このような選手たちが揃っていなければ、現在のPSGのサッカーは成立しない。重要なのは、単に優れた個を集めただけではなく、チーム全体の設計者として適任者がいることだ。

ルイス・カンポスという責任者の存在が大きい。彼はかつてPSGが優勝できなかった時代に対戦相手のチームで戦略を立てていた人物で、現在はPSGの舵を取っている。組織の成長には優れた経営陣が必要だが、まさにPSGはその条件を満たしている。

以前のPSGはメッシやネイマール、エムバペといったスター選手を集めるだけだったが、モチベーションが低下したエムバペには、いくら監督がアプローチしても伝わらない状況だった。チームは一つの生き物のようなもので、一人でも別方向を向いていれば、他の選手にも影響する。現在のPSGは、技術を情熱的に出し続けられる選手たちで構成されている。
Q. 他のビッグクラブと比較して、PSGの特徴的な強みは何ですか?
最も特徴的なのは、攻撃陣の多機能性だ。多くのチームでは「この選手はボールを持つ側ではないけど、決める時に決める」といったフィニッシャー型や、「この選手は突破する」「この選手はパサーだ」というように役割が分かれている。しかしPSGの前線3人は全員が自分で仕掛けられ、周りの選手も使え、ゲームメイクとフィニッシュの両方ができる。
中盤の3人もボールを失わない。守備の約束事もきちんと実行する選手が3人揃っている。そこにデンベレなどの前線の選手が降りてくるため、相手が人を捕まえようとしても、誰かは必ず開いたスペースができる。
ポジションの流動性も高く、例えばサイドバックのハキミがほとんどウイングのポジションを取るような状況も、ボール保持能力の高いチームだからこそ可能になっている。ボール保持ができないチームでは、サイドバックがこれほど前に出ると疲弊してしまう。
Q. PSGの守備面の強さについても教えてください。
攻撃的なチームは守備の機会が少ないため、広いスペースが開いた時に対応できる個の能力が重要になる。PSGのバックラインの選手たちは、個人の判断力と体の強さ、スピードを備えている。
ポジション型サッカーを実践するバルセロナも、かつてはプジョルやダニエル・アウベスなど、広いスペースを守れる選手が揃っていた。PSGも同様に、失った時の保険をかけながら攻めている。

さらに、守備の機会が少ない中でも相手を抑え込み、それを突破されたとしても最後にはドンナルンマがいる。攻撃中心のチームでありながら、守備機会が少ない状況でも踏ん張れる選手たちと、きちんと戻ってくる前線の選手がいることが大きい。
Q. PSGはセンターフォワードがいないと言われていますが、それはどういう意味ですか?
いわゆる「ゼロトップ」という概念で語られることが多いが、これは選手のキャラクターで判断されがちだ。実際のゼロトップとは、前線の選手が中盤に降りてくることで相手のディフェンスを混乱させ、中盤で数的優位を作り出す戦術だ。
実はハリー・ケインやレヴァンドフスキのような典型的なセンターフォワードでもゼロトップの役割を果たすことがある。ただ、そういった選手はあまり「ゼロトップ」とは言われない。

ルイス・エンリケは以前バルセロナでMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)を起用していた際も、当初はメッシを中央に置いていたが、スアレスの特性を考慮して配置を変更した。各選手が最も生きる形を選んでいるのだ。
Q. PSGの得点パターンには特徴がありますか?
勝てるポゼッションと負けるポゼッションには明確な違いがある。単に繋ぐだけではなく、フィニッシュワークに繋がる繋ぎ方ができているかどうかが重要だ。負けるチームは繋ぐこと自体が目的になってしまう。
PSGの得点パターンとしては、両ウイングが相手のサイドバックに対して仕掛ける形が多い。また、後方から繋ぐことで相手を引き出し、全体のラインが上がった時に裏を狙うパターンもある。
相手が引いてくると、ウイングの位置で仕掛け、相手のラインが下がってきた時にはマイナスのスペースからのミドルシュートも得意としている。リアル・マドリード戦でもハキミが突破して、それをファビアンが決めるゴールが2回あった。
また、前線からのプレッシャーで奪ったボールからの得点も多く、その成功率が他チームより高い。デンベレなど前線の選手たちが連携してプレスをかけることで、相手の選択肢を限定させている。
Q. PSGの戦術的な約束事はありますか?
ボールを繋ぎながら相手との位置関係を考え、いかに脳の負荷を下げるかが重要だ。戦術は教え込めば洗練されると思われがちだが、実際は教えることをいかに減らすかが大切で、自動化させることが目標となる。
PSGでは「ツータッチアンダー」という約束事が重要だ。縦パスを入れて、ワンタッチ目で前を向ける場合を除き、バックパスを多用する。前を向けない時は後ろに出し、少ないタッチで前を向ける選手を使うことで、相手の守備の目線を揃わせず、守備を整理させない。
実際にクラブワールドカップでの練習映像でも、ルイス・エンリケが「早くスピーディーに、でも焦るな。後ろに、後ろに」と指示しているのが確認されている。後ろを使いながらサイド展開して逆に行くというパターンを重視している。
Q. PSGに対抗するにはどのような戦術が有効ですか?
エリア内(自陣のペナルティエリア付近)では絶対に繋がないこと。この位置で繋いでいる時に相手がプレスをかけてきても、キーパーに戻せるという逃げ道があるが、エリア内では引っかかると戻せなくなる。リスクが大きすぎるためだ。
相手がスペースを潰すために下がると、PSGのようなボール保持能力の高いチームからは奪えなくなる。しかし、エリア内でのプレスであれば奪える可能性がある。

守備の際は、ハイプレスをかける時と割り切って下がる時のメリハリが重要だ。サイドから戻す時など、プレスをかけるタイミングを決めておく必要がある。また、エリア内を全て埋めて、長いカウンターができる選手を配置するのも有効だ。
ただし、この対策を実行するには選手たちの忠誠心が必要になる。特にエリア内の守備は、全員が献身的に動く必要があり、アーセナルのような監督と選手の関係性が構築されたチームでなければ難しい。
Q. レアル・マドリードはPSG戦で何がうまくいかなかったのですか?
シャビ・アロンソ監督は、選手たちに全員で守備することを求めていたが、特にビニシウスなど前線の選手たちが戻ってこなかった。最初はプレスをかけて引っかかることもあったが、徐々に戻らなくなり、結果として対応できなくなった。
レアル・マドリードは歴史的に、個々の選手の才能を生かしたサッカーをしてきた。それは楽譜なしのセッションで、最高のギター、ベース、ドラム、ボーカルが集まって即興で演奏するようなものだ。一方でアロンソは楽譜に基づくサッカーを求めている。
この衝突は必然だったかもしれないが、PSGのような戦術的に洗練されたチームに対抗するには、レアル・マドリードも変化が必要だろう。今回の敗北は、アロンソが進める新しい時代への過程における必要なステップだったのかもしれない。
Q. 日本代表はPSGのような戦術を取り入れることは可能ですか?
デンベレの役割は久保建英選手と相性が良い可能性がある。トップ下系の選手の方が適している場合もある。しかし、代表チームでは使える時間が限られているため、スケジュール管理、練習メニューの管理、選手へのコンセプト伝達など、多くの課題がある。
ワールドカップ後のドイツ戦では、久保選手がそのような動きを見せる場面もあった。また、PSGが前線を一気に交代させる戦術は、日本代表でも実践可能だろう。
ただし、日本と欧州のトップクラブでは、ボール保持に対するアプローチが異なる。PSGのような「ボールを失わない選手を揃える」という方針と、日本の「ボールを持たないサッカーで強くなる」という方針の違いが興味深い。資金力のある欧州クラブと資金力の限られた日本の違いが、このようなアプローチの差になっている。