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“とりあえずコンサル”は悪か?
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2025年7月14日

『新版コンサル業界大研究』が今、東大で最も売れている。「とりあえずコンサル(とりコン)」の時代にコンサルを目指す意味とは?著者の一人、渡辺秀和氏に業界の最前線を聞いた。 <ゲスト> 渡辺秀和|コンコードエグゼクティブグループ 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(旧・三和総研)にて最年少プロジェク...
「とりコン」時代のキャリア戦略とその先の選択肢
「とりあえずコンサル」という"とりコン"現象が広がる一方で、コンサルタントキャリアの実態と将来性はどうなっているのか。東大生に人気の高いコンサル業界の魅力から、出口戦略までを専門家が解説する。

Q. 東大生をはじめとするトップ層の学生がコンサルに魅力を感じる理由は何ですか?
学生がコンサル業界に注目する理由は大きく3つあります。
1つ目は仕事内容そのものです。経営課題を解決したり、経営戦略やマーケティング戦略を立てたりする仕事は非常に面白そうに映ります。会社を良くすることで、その会社に勤める人々だけでなく、顧客にも良い影響を与えられるというやりがいがあります。
2つ目は、コンサルを経験することで将来のキャリアの選択肢が広がることです。トップ層の学生は、コンサル経験が次のキャリアへの強力なパスになると認識しています。
3つ目は高い報酬水準です。特に戦略ファームなどでは新卒でも600万円台、700万円近い年収が得られることもあり、一般の日本の大手企業の初任給とは大きく異なります。

この中で最も魅力的に感じているのはおそらく2つ目の「将来のキャリアへの可能性」でしょう。これは軽い気持ちでトレンドに流されているわけではなく、深い考えに基づいた選択です。日本の大企業の総合職採用では何の仕事をするか分からないまま採用されることが多いですが、学生たちはそれを避け、自分で仕事内容を決めたいと考えています。また、将来何をしたいかを見据えてキャリアを選んでいる点も重要です。
Q. 女性がコンサル業界に興味を持つ理由は何ですか?
女性のビジネスパーソンからもコンサル業界への関心が高まっています。20年前と比べると、コンサルファームへの女性の応募者の割合は5%から40%近くまで増加しました。
この背景には「キャリアの自由度」という考え方があります。女性の場合、ライフイベントとキャリアの両立が課題になることが多いものです。子どもが生まれた時、パートナーが海外転勤する時、あるいは介護の問題が生じた時など、様々なライフイベントがあります。
20代の女性たちは、30代・40代の先輩女性を見て、一つの会社でキャリアを続けることの困難さに気づいています。制度上は育休や産休が整っていても、復職後のポジションや居心地の悪さなど、現実的な課題があります。
そこで気づくのが「キャリアの自由度」の重要性です。一つの会社に縛られず働く場所を選べる状態、つまり人材市場で高い評価を受け、転職する自由を持っていれば、ライフイベントに合わせて柔軟に働き方を変えられます。この自由度を得るために若いうちからキャリア構築を考える女性が増えているのです。
また、市場価値が高ければ条件交渉もしやすくなります。例えば、子どもが小さいから「5時には必ず帰りたい」といった条件でも、スキルが高ければ企業は柔軟に対応してくれることが多いのです。
Q. コンサル業界で評価されるスキルとは何ですか?
人材市場で評価されるのは「明確な強み」を持っていることです。例えば、経理の募集なら、人事2年・経理2年・営業2年・総務2年と各分野を浅く経験した人より、経理8年の経験がある人の方が採用されやすいでしょう。

いわゆる「丸いキャリア」(様々な分野を万遍なく経験しているが特に秀でたものがない状態)より、「尖ったキャリア」(特定分野に強みがある状態)の方が市場価値は高いのです。
コンサル業界では、戦略コンサルなら経営企画やマーケティングのスキル、人事コンサルなら組織人事系のプロジェクト経験など、専門性を身につけることができます。さらに、様々な企業の改革に携わることで、「汎用的な問題解決能力」も身につきます。
これはプロフェッショナルファームの大きな特徴で、多くのクライアント企業を見ることで共通する課題や解決策のパターンを学べるのです。このような能力は、業界を問わず活用できるため、キャリアの幅を広げることにつながります。
Q. コンサル業界の未経験者採用の現状はどうなっていますか?
コンサル業界は未経験者の採用に積極的な業界です。これは他の業界と比べても珍しい特徴です。一般的な中途採用では、経験者を求めるのが普通ですが、コンサル業界は文字通りの「門戸の広さ」があります。
特に20代から30代半ばまでの未経験者は積極的に採用され、育成する姿勢が長く続いています。最近では30代後半から40代の高い専門性や豊富な経験を持つ未経験者の採用も増えています。
外資系の戦略ファームは引き続き未経験者の採用に積極的ですし、総合系ファームでは30代後半から40代の専門性の高い人材をピンポイントで採用するケースも増えています。
例えば、人工知能や先端技術など、今後コンサルファームが力を入れたい分野の専門家であれば、50歳前後でもコンサル未経験でも採用される可能性があります。そのような人材は複数のファームから争奪戦になることもあるのです。
Q. 「ハブキャリア」とはどういう概念ですか?
「ハブキャリア」とは、ハブ空港のように様々な場所から人が集まり、そこからまた多様な場所へ飛び立っていくようなキャリアを指します。コンサル業界、特に戦略コンサルはこのハブキャリアの代表例です。

戦略コンサルは意外に知られていませんが、様々な業界・職種の人材をポテンシャルで採用する特徴があります。製造業のエンジニアや研究開発者、ポーカーやチェスなどの知的ゲームのプロなど、ビジネス経験がなくても採用されることがあります。有名な大前研一氏も元々は原子力発電所のエンジニアでした。
このように入口が広いのと同時に、出口も広いのがハブキャリアの特徴です。コンサルで身につけた汎用的な問題解決スキルを活かして、様々な業界の幹部候補として転出できるのです。例えば、メーカーのエンジニアがコンサルを経て、全く関係ない教育サービス業の幹部になるといったキャリアも可能です。
Q. コンサルタントの出口戦略にはどのような選択肢がありますか?
ポストコンサルのキャリアとして主に7つの選択肢があります:
1. ベンチャー・スタートアップ企業の経営幹部
2. PEファンド・ハンズオンVC
3. 外資系企業
4. 大手日系企業
5. 中堅企業・オーナー企業
6. 他のコンサルファーム
7. 起業
以前は外資系企業への転出が多かったのですが、ここ5年ほどはベンチャー・スタートアップ企業の経営幹部に転職するケースが急増しています。
なぜこの変化が起きているかというと、優秀なビジネスリーダーほど社会的意義のある仕事や社会をより良くする仕事に就きたいと考える傾向があるからです。現代のスタートアップは単に利益を追求するだけでなく、社会的意義のある課題に最新テクノロジーで取り組むところが多く、そういった志を持つ人材とマッチしやすいのです。
また、若いうちからリーダーシップを発揮できる立場に就きたいという思いもあり、組織規模が小さいベンチャー企業の方が適していると考える人も多いようです。
PEファンドやハンズオンベンチャーキャピタルも人気のキャリアパスです。プロジェクト単位でクライアントの変化をサポートするのではなく、株主という責任ある立場で企業の変革を長期的に伴走できるやりがいがあります。特にハンズオン型のベンチャーキャピタルは、投資先企業に入り込んで支援するスタイルのため、コンサル経験者の専門性が活かせる場となっています。
Q. AIの発展はコンサル業界にどのような影響を与えていますか?
AIの発展により、アナリストやアソシエイトといった若手層の仕事がAIに代替される現象がすでに起きています。多くのファームのパートナーは「新卒や若手層の採用はそれほど必要ないのでは」と考え始めています。
AIを使いこなすスキルは、プログラミングとは全く異なります。むしろ上司が部下に適切に指示を出す能力に近く、社会人経験やクライアントへの接し方といったスキルが重要になります。
ただし、これはベテラン社会人には有利に働く可能性があります。経験を持つ人ほどAIに適切な指示を出せるからです。一方で、若手の価値がなくなるわけではありません。AIを使いこなす能力を身につけた若手は、これまで以上に活躍できる可能性があります。
コンサル業界全体としては、AIをはじめとする最先端テクノロジーの活用方法について各社が模索している状況です。そのため、テクノロジー活用のコンサルティングニーズは今後さらに高まると予想されます。
Q. 「とりあえずコンサル」=「とりコン」現象をどう評価しますか?
「とりあえずコンサル」という考え方は推奨できません。新卒の3年以内離職率が3割という「七五三問題」は長く続いており、「とりコン」世代特有の問題ではありません。
早期離職の理由としては、「仕事内容が思っていたものと違った」「人間関係が厳しかった」などが挙げられますが、これらは学生時代にキャリアをしっかり考えていないことが原因です。とりあえず何も考えずにコンサルを選ぶと、同じ問題が起きる可能性が高いでしょう。
大学1年生の頃から「自分は何をしたいのか」「世の中にどんな仕事があるのか」をじっくり考え、準備することが重要です。また、基本的なビジネススキルを身につけておくと、入社後の人間関係も円滑になります。
答えだけを覚えて「コンサルがいい」と言っているだけでは、本当の意味でのキャリア形成はできません。自分のキャリアをしっかり考えた上で、コンサル以外の選択肢も含めて何が自分に合っているかを検討することが大切です。