PIVOT TALK BUSINESS
日米関税交渉の問題は、アメリカ側にあり。トランプ幹部が手柄の取り合い
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2025年7月12日

日米関税交渉はなぜ停滞しているのか?参院選の行方は、関税交渉にどう影響するのか?参院選を左右するポイントと合わせて、経済アナリストのジョセフ・クラフト氏に聞いた。 <ゲスト> ジョセフ・クラフト|経済アナリスト/東京国際大学 副学長 カリフォルニア大学バークレー校卒業後、モルガン・スタンレーNYK...
日米関税交渉と参院選の行方
「トランプの側近たちは互いに牽制し合い、本質的な交渉ができていない」

Q. 日米関税交渉の現状はどうなっていますか?日本車に25%関税を課すという話や、全ての国に15%から20%の関税という話も出ていますが、実際はどうなのでしょうか?
アメリカ側の関税に関する声明は、交渉を促したり圧力をかけたりするための措置であり、まだ決定事項ではありません。これから十分に交渉の余地があります。ただし、最近トランプ大統領の姿勢が非常に強気になっています。
その背景には、イラン攻撃の軍事的成功、NATO防衛費要請の受け入れ、減税法案の成立など、トランプ自身の自信の高まりがあります。また、当初懸念されていた関税によるインフレ圧力もまだそれほど見られておらず、カナダやベトナムとの交渉での成果もトランプの強気姿勢を助長しています。
特にベトナムの案件は日本にとってハードルを上げてしまいました。ベトナムがアメリカに輸出する製品には20%の関税、アメリカからベトナムに入る製品には0%という条件で合意したからです。これにより日本の交渉状況はより厳しくなっています。
Q. 株価の動きについてはどう考えていますか?以前は関税発表で大きく下落しましたが、今回はむしろ上昇していますね。
これは非常に不思議な現象です。4月の時点では24%の課税で6000円の株価暴落がありましたが、今回はほぼ同じ条件で8月1日に確定する可能性があるにもかかわらず、株価は最高値を更新しています。経済的なダメージは同じはずなのに、株式市場の楽観的な見通しは理解できません。
「日米交渉の本質は米米交渉と日日交渉」
Q. 日米間の交渉プロセスについて教えてください。これまでどのような交渉が行われてきたのでしょうか?
これまで赤沢大臣、ベッセント商務長官、ラトニック国務長官、グリア通商代表の間で計7回の交渉が行われてきました。一部メディアでは日本側の交渉がまずいという批判もありますが、私はむしろアメリカ側に問題があると考えています。
4月30日の2回目の交渉でベッセント長官から「大きなパッケージを持ってきてほしい」という要望がありましたが、その後アメリカ側からは具体的な要望がほとんど示されませんでした。日本側は様々なカードを用意していたものの、アメリカ側の具体的な要望がないため進展が難しい状況でした。
5月29日、30日になってようやく交渉が進み始めましたが、ここで重要なポイントがあります。日米交渉の本質は「米米交渉」と「日日交渉」なのです。「米米交渉」とは、ベッセント長官やラトニック長官、グリア通商代表などの閣僚がいかにトランプ大統領を説得できるかという内部交渉です。最終的にはトランプ大統領がイエスと言わなければ進まないからです。
一方、「日日交渉」とは、アメリカからの要望に対して、選挙前の日本がどれだけ既得権益を調整して規制緩和や農産品購入などを実行できるかという問題です。
Q. アメリカ側の交渉態勢に問題があるとのことですが、具体的にどのような問題がありますか?

最大の問題は、アメリカ側の交渉チームがバラバラで一貫性がないことです。トランプ大統領は日本に対して厳しい姿勢を示す一方、ベッセント長官は日本の参院選を理解して様子見の姿勢を示すなど、いわゆる「グッドコップ・バッドコップ」の戦術を取っています。
さらに問題なのは、日本の赤沢大臣がアメリカの閣僚と別々に会っていることです。これはアメリカ側の要望であり、彼らが個別に動いているため、日本側はその対応に苦慮しています。具体的には、ベッセント長官と自動車関税について一定の合意に達しても、次にラトニック長官と会うと異なる要求が出され、さらにグリア通商代表がそれに異議を唱えるという状況です。
閣僚間で求めるものが異なるため、日本はその狭間で振り回されています。さらに、これらの閣僚は互いに牽制し合いながら、トランプ大統領の目に自分たちが良く映るように行動しており、交渉よりも自分の立場を守ることを優先しています。
Q. この状況を打開するために日本はどうすべきでしょうか?
現状では、閣僚レベルでの交渉を続けても成果は期待できません。トランプ大統領に正確な情報が伝わっていないことが問題なので、首脳間で直接話し合う段階に来ています。石破総理が直接トランプ大統領に連絡して状況を説明し、提案する必要があります。
アメリカ側の組織的な問題が大きいため、日本側の交渉力だけの問題ではありません。問題の本質はアメリカ側のバラバラな態勢にあり、それを正すには首脳レベルでの対話が不可欠です。
「8月1日に関税が発動されても、1年以内に軽減される可能性がある」
Q. 今後の交渉スケジュールはどうなっていますか?主要な日程を教えてください。

注目すべき日程としては、7月19日にベッセント長官が来日する予定です。表向きは大阪万博のアメリカパビリオンのためですが、実質的には関税交渉が目的です。ここで日本がどれだけ状況を改善できるかが重要です。
そして8月1日が関税発動の期限とされていますが、トランプ大統領の発言は日々変わるため、これも確定的ではありません。それまでに関税交渉が進む可能性もあります。
私は自動車関税についてはクレジット方式、つまりアメリカでの生産を増やせばその分日本からの輸出の関税を減らすという方式が適用される可能性が高いと考えています。
Q. 仮に8月1日に25%の関税が発動された場合、その後の見通しはどうなりますか?
重要なのは、仮に8月1日に25%の関税が発動されたとしても、年末までか遅くとも来年初め、中間選挙までにはトランプ大統領がこの関税を引き下げてくる可能性が高いことです。
秋口から年末にかけて、関税による価格転嫁が進みインフレ圧力が高まるでしょう。そうなるとトランプ大統領の支持層、特に低所得者層から不満や批判が出始め、トランプ大統領はすぐに方針を変える可能性があります。
日本企業は、8月1日に関税が発動されても「これが永遠に続く」と諦めず、1年以内に状況が改善する可能性を見据えて、コスト効率化や生産調整などで乗り切る戦略を考えるべきです。
Q. 日本側の最良の落としどころはどのようなものになるでしょうか?
日本が当初目指していたのは一律10%の関税でしたが、現状ではそれは難しいでしょう。ベストケースが一律10%、ワーストケースが一律25%だとすると、その間の15%程度であれば、厳しいながらも全く不可能ではありません。
かつて為替レートが1ドル80円という時代もありましたが、日本の自動車産業はそれを乗り切りました。現在の140円台の為替レートで15%程度の関税なら、一部の弱い自動車企業や下請けは苦しむものの、業界全体としては何とか吸収できるのではないかと考えています。
「参院選は大連立を占う選挙」
Q. 7月の参院選の行方についてどうお考えですか?政権選択の選挙になるのでしょうか?
私は今回の選挙は政権選択の選挙ではなく、「大連立を占う選挙」だと考えています。たとえ与党が過半数を割ったとしても、石破政権は少なくとも年内は続くでしょう。
むしろこの選挙は、選挙後に自民党がどの野党と連立を組むかを決める選挙です。立憲民主党か国民民主党かは、参院選の結果によって決まってくるでしょう。
Q. 参院選の結果予測はどうなっていますか?与党は過半数を維持できるのでしょうか?
興味深いことに、各メディアの議席予測では与党が55席前後とかなり高い数字を出していますが、それでも「過半数維持は微妙」という表現を使っています。これは矛盾しているように思えます。
一方、AIに聞いてみたところ、与党が過半数を維持できる可能性は40〜45%と予測されており、過半数割れの可能性が高いとされています。従来のメディアとAIの予測が異なるのは、調査方法の違いが影響しているのかもしれません。
Q. 今回の選挙結果を左右する要因は何だと思いますか?
今回の選挙の明暗を分けるのは若年層有権者の動向です。各党の支持率を年代別に見ると、18〜39歳の若年層で支持率が特に高いのは国民民主党と参政党です。若年層の投票率が高ければ高いほど自民党に不利、低ければ低いほど自民党に有利となります。
若者の投票率に影響を与える要因としては、①3連休の中日という投票日設定(戦後初)、②気温(7月の気温予測は例年より高い)の2点が挙げられます。3連休の中日に投票が行われることで若者の投票率が下がる可能性があり、さらに暑さで投票所に足を運ぶ人が減るかもしれません。