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【ボーナス0円、月給はアップ。得?損?】 企業が仕掛ける“月給アップ”の裏側は、採用競争だけではない
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2025年7月9日

「ボーナス0円」、「初任給30万円」の新時代が到来。新卒採用のための「見せかけの高給」は、若手社員のモチベーションをむしろ削ぐのか?中堅社員の離職、報酬制度の歪み、そして“給与の構造改革”。いま企業は、どんなロジックで報酬を設計し直しているのか?就活生・転職者・人事担当、すべてのビジネスパーソンに届...
ボーナスの給与化、なぜ大企業が次々と発表?その背景にあるものとは

日本の雇用制度が大きく変わりつつある。ソニーグループやダイワハウス工業など大企業が「ボーナスの給与化」を打ち出し、初任給を大幅に引き上げている。なぜ今、企業はこのような動きを見せているのか?労働市場のデータから見える本当の背景とは?
Q. 大企業がボーナスの給与化を進めている背景は?
日本では最近、大手企業がボーナスの一部を給与に組み込む「ボーナスの給与化」を発表しています。ソニーグループは2025年度から大卒の新入社員の初任給を10%以上増やし、約31万円に引き上げることを決定。これはボーナスを段階的になくして月給を増やす取り組みです。ダイワハウス工業でも昨年度から10万円増額し、大卒初任給を35万円にしました。
この流れは今後も続くでしょう。しかし、これを単に「初任給アップ」という表面的な現象として捉えるのは視野が狭いと言えます。背景に注目することが重要です。

Q. 初任給の推移から何が読み取れる?
初任給のデータを見ると、2017年から2022年までほぼ横ばいだったものが、2023年から2025年にかけて急激に上昇しています。2024年で前年比103%、2025年では104〜105%と強い伸びを示しています。
しかし、高度経済成長期にも新卒採用の競争は激しかったはずなのに、当時はそれほど初任給を上げる動きはありませんでした。なぜ今になって初任給が上がっているのか、この違和感を理解することが重要です。
Q. 労働市場全体ではどのような変化が起きている?
転職時に賃金が1割以上増加した人の割合を見ると、近年右肩上がりで増加しています。この指標は通常、景気動向(日銀短観の業況感)と連動しているはずですが、2013年頃から両者の間に乖離が見られるようになりました。
さらに興味深いのは、現在の景気レベルはリーマンショック直前の2007年とほぼ同じですが、賃金上昇を経験する転職者の割合はそれを大きく上回っています。これは「景気の加熱感以上に、労働市場が加熱し、人手不足が深刻化している」ことを示しています。
労働市場全体で、需要と供給のバランスが崩れ、人手不足による賃金上昇圧力が強まっているのです。

Q. 日本型雇用の特徴とその変化とは?
日本型雇用の特徴を表す「後払い賃金仮説」によれば、若手のうちは実際の生産性よりも賃金が低く抑えられ、シニア層になるにつれて生産性を上回る賃金が支払われる構造になっています。これは若い頃に会社に「暗黙の貯金」をして、それがシニア層になったときに戻ってくるという仕組みです。
しかし、この日本型雇用モデルは限界に達しつつあり、賃金と生産性の関係性を変える動きが進んでいます。つまり、若手の賃金を実際の生産性に近づけ、年功序列的な賃金カーブを緩やかにする方向へと変化しているのです。
Q. なぜ業績連動型ボーナスから固定給へのシフトが起きている?
業績連動型ボーナスには「利益コントロール」というメリットがあります。売上が下振れした時にボーナスも下げることで、利益を確保できるのです。
しかし、新規事業(特にAI関連など)を立ち上げる際には、市場価値の高い専門人材を中途採用する必要があります。このような人材は、業績が悪化してボーナスが下がると離職するリスクが高まります。
企業にとって、「利益コントロールができなくなるリスク」よりも「新規事業に必要な人材を確保できないリスク」の方が大きな問題になっているのです。そのため、市場価値に見合った固定給を約束することで、人材確保を優先する流れが生まれています。

Q. 日本型雇用はなぜ変わらざるを得ないのか?
日本型雇用(新卒一括採用、年功序列、終身雇用)は、高度経済成長期に日本の製造業を支えた重要なシステムでした。日本で製造して海外に輸出するモデルが確立していた時代には、このシステムが適していたのです。
しかし、為替レートの変動や産業構造の変化により、海外で売るものは海外で製造するという流れが進み、日本型雇用を維持することが難しくなっています。
また、個人のキャリアという観点でも、会社に所属することがゴールとなる「就社」から、仕事そのものに焦点を当てる「就職」への意識変化が求められています。自分の市場価値や成長を常に考え続けることが、現代の労働環境では重要になっているのです。
Q. ボーナスの給与化は働く人にとって良いことなのか?
労働市場において、人手不足の状況下で賃金への上昇圧力がしっかり働くようになったことは、基本的には良い変化だと言えます。労働市場本来の機能が発揮されていると考えられるからです。
一方で、景気が悪化した場合には賃金も連動して下がる可能性があるため、常に良いとは限りません。また、給与の安定性は増しても、総報酬額が必ずしも増えるわけではないことも理解しておく必要があります。
重要なのは、この変化の背景にある「日本型雇用からの脱却」という大きな流れを認識することです。初任給アップという氷山の一角だけでなく、その下に隠れている構造変化を理解することで、自分のキャリアに関する意思決定の質を高めることができるでしょう。