PIVOT TALK HEALTH
妊娠・出産の“誤解” Q&A
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2025年7月2日

2025年5月、厚生労働省は出産費用の無償化方針を発表した。しかしその内実は?医療保険適用か一時金増額か?出産にまつわるお金と誤解を、重見大介医師に聞いた。
妊娠・出産の本当の話:産婦人科医が教える誤解と現実
妊娠や出産に関する情報は溢れているが、実際に正しく理解している人はどれくらいいるだろうか。「帝王切開は楽」という誤解や「卵子凍結すれば高齢でも簡単に妊娠できる」といった思い込みが広がっている。産婦人科医の重見大介氏に、妊娠・出産にまつわる誤解と現実について聞いた。

Q. 妊娠から出産までのサイクルはどのように進むの?
妊娠が成立すると、予定日は妊娠40週を基準に決められる。この期間は大きく3つに分けられる。
妊娠初期(約15~16週まで)は、体調の変化やつわりが現れる時期。多くの人が気持ち悪さを感じたり、食べられるものが限られたりする。また、お腹の痛みなどから流産の心配が常につきまとう時期でもある。
妊娠中期(16週~28週頃)は「安定期」と呼ばれ、ホルモンバランスが安定し流産率が大幅に下がる。しかし、赤ちゃんの発育が加速するため子宮が大きくなり、胃腸が圧迫されて食事が大変になったり、手足のむくみが出たりすることもある。妊娠糖尿病や妊娠高血圧が見つかることもあるため、完全に安心はできない。
妊娠後期(28週以降)になると、お腹がさらに大きくなり、むくみもひどくなってくる。出産に向けた検診も増え、赤ちゃんの状態を超音波などでより詳しく評価する。37週を超えると正常な出産の時期に入り、いつ陣痛が来てもおかしくない状態になる。
Q. 妊婦健診ではどんな検査を受けるの?
厚生労働省が最低限必要な検査項目を定めており、全国どの病院でも実施している。

妊娠初期には子宮頸がん検査、血液検査(血糖値や貧血の有無、甲状腺機能など)、超音波検査、血圧・体重測定、尿検査などを行う。
妊娠中期には感染症検査や血糖値の再検査を行い、妊娠糖尿病がないかを確認する。もちろん赤ちゃんの発育状態も継続的に評価する。
妊娠後期には、出産時にリスクとなる特定の細菌(GBS)の検査などを行う。37週を過ぎると、子宮口の開き具合や柔らかさを内診で確認し、出産の準備状況を評価する。
Q. 羊水検査とは何?
羊水検査は出生前診断の一種で、妊娠初期に母体のお腹に針を刺して羊水を採取し、赤ちゃんの染色体異常などを検査するものだ。
最近では、新型出生前診断として母体の血液検査である程度の異常の有無を確認できるようになった。現在は一般的に、まず血液検査を行い、異常の可能性がある場合に羊水検査で確定診断するというステップを踏むことが多い。
通常の妊婦健診の検査はほぼ100%の妊婦が受けるが、出生前診断は完全に妊婦の希望によるもので、認証施設と非認証施設の両方で実施されているため、正確な受診率は把握されていない。
Q. つわりの時、パートナーはどうサポートすればいい?
妊婦の約7~8割がつわりを経験する。症状には個人差があり、軽度のムカムカ程度から、極端な場合は生きているのが辛いと感じるほどの重症なケースまで様々だ。
特に匂いや食の好みが劇的に変化することが特徴で、これまで好きだったものが突然受け付けなくなることもある。これは日常生活のあらゆる場面に影響する。
パートナーは以下のような点に注意するとよい:
妊婦に確認しながら、コーヒーなどの匂いが大丈夫かどうか配慮する
食事内容を妊婦の好みに合わせて調整する
タバコの匂いや柔軟剤などの生活用品の匂いにも気を配る
体調が悪化した場合は入院が必要なケースもあるため、様子を見守る
Q. 妊娠中の体重管理はどうすればいい?
妊娠中の体重管理は重要だが、日本ではやや厳しすぎる傾向があった。現在は少し緩和され、妊娠前の体型にもよるが、出産までに約10~12kg程度の増加におさまるよう調整することが一般的だ。
ただし、1週間単位や妊娠初期の数週間だけで判断する必要はなく、長い目で見て調整していくことが大切。妊婦健診でも毎回体重をチェックしているので、医師に相談しながら管理するとよい。
Q. 卵子凍結すれば高齢でも子どもを持てる?
卵子凍結は、若いうちに卵子を採取して冷凍保存し、将来妊娠したい時に使用する方法だ。
女性の卵子は生まれた時点で全て形成されており、新たに作られることはない。年齢とともに卵子の質が低下し数も減少するため、若いうちの卵子を保存する意義はある。

しかし、凍結した卵子を将来使用する際の成功率は必ずしも高くない。卵子が無事に使用できる確率は約6割程度で、最終的に出産に至る確率は全体の1割程度というデータもある。
また、卵子は若くても体自体は年を取るため、妊娠・出産に関するリスクは年齢とともに高まる。卵子凍結の成功率を左右する最大の要素は凍結時の年齢で、35歳以下での凍結が推奨されている。
Q. 男性も産後うつになるの?
最近の研究では、男性も女性とほぼ同じ割合で産後うつになることがわかっている。日本の調査では、母親も父親も約11%が産後うつを経験するという結果が出ている。

男性の産後うつの要因としては、睡眠不足、仕事との両立の難しさ、孤独感などがある。特に男性特有の問題として、悩みを相談できるコミュニティが少ないこと、経済的責任感の増大、職場での理解の少なさなどが挙げられる。
社会全体として「男性の産後うつはおかしい」という認識を改め、男女ともにサポートする環境づくりが重要だ。
Q. 帝王切開は楽だという話は本当?
これは完全な誤解だ。帝王切開は決して「楽」ではない。
帝王切開では赤ちゃんへの影響を避けるため全身麻酔ができず、背中からの麻酔だけで手術を行う。そのため母親は手術中も意識があり、お腹を切られる感覚も分かる状態だ。
子宮は妊娠中、血液の循環が通常の何倍にもなっているため、出血量が非常に多く、1リットル以上の出血もある。手術後の傷の痛みも強いが、赤ちゃんの世話は出産直後から始まる。
「陣痛を経験していないから楽」という誤解があるが、実際は全く異なる大変さがある。
Q. 逆子体操や鍼灸で逆子は治る?
逆子とは、赤ちゃんのお尻や足が下に来てしまう状態で、このまま出産すると赤ちゃんの頭が引っかかるリスクがあるため、帝王切開が勧められることが多い。
最終的に逆子のまま出産を迎えるのは全体の5%程度で、多くの場合は自然に向きが変わる。逆子体操(四つんばいになる、横向きになる、ブリッジをするなど)は従来行われてきたが、研究では有効性が明確に示されておらず、かえって母体に負担をかけることもある。同様に、ツボ押しや鍼灸も科学的には効果が証明されていない。
専門家の意見を聞きながら、エビデンスに基づいた対応を選ぶことが大切だ。
Q. 妊娠前から知っておくべきことは?
プレコンセプションケア(妊娠前ケア)は日本ではまだ認知度が低いが重要な概念だ。将来の妊娠・出産に備えて、体重管理、食生活の改善、禁煙・禁酒、葉酸摂取、運動習慣の確立などを行うことを指す。
現在の性教育は避妊や性感染症予防が中心で、将来妊娠を希望する際の準備については教えられていないことが多い。若いうちからプレコンセプションケアについて知っておくことが理想的だ。
また、出産後のケアも重要で、産後ケアサービスや施設が全国的に増えている。身体のケアや育児の習得、睡眠確保などのために、こうしたサポートを積極的に活用するとよい。