
TOPIXは7月初旬にピークアウト/日経平均は秋まで持つか/トランプ関税のダメージが本格化
マーケット攻略法:7月初旬まで「バリュー株」、夏以降は「AIテック株」がカギ
株式市場が重要な転換点を迎えている今、投資家たちはどのような戦略を取るべきか。大和証券のテクニカルアナリスト木野内栄治氏が、日米の相場分析と今後の見通しを語る。7月初旬以降の相場展開や、注目すべきAI・テック株の動向など、具体的な投資戦略を紹介する。

Q. 直近の日米株式市場の動向をどう見ていますか?
最近の日経平均は、じりじりと高値を更新しつつも、簡単には抜けきれない状況が続いています。当初の予想よりも上値が重く、物色がテック株に向かわない傾向がありました。さらに、足元では中東情勢の緊迫化が市場の重石となっています。
しかし重要なのは、上値が重いとはいえ、売買代金と出来高が減少している点です。これは「戻り売り」ではなく、安いところで買っていた投資家が一時的に減少していることを示しています。投資家心理としては「利食い売り」の状態であり、これは市場にとって悪い兆候ではありません。
市場では中東情勢に対する警戒感があるものの、アメリカとイランの間で実際に軍事的行動があった場合、相場格言にある「銃声が鳴ったら買え」のように、市場が一旦リバウンドすることも多いのです。特に米軍の軍事行動後は、最悪の状態が過ぎた安心感から市場が持ち直す傾向があります。
Q. 配当再投資の影響はどのように現れていますか?
5月から6月末にかけて、東証プライム市場では約11兆円の配当が支払われました。個人投資家は配当を受け取るとその資金を別の用途に回すこともありますが、ファンドは投資家から株式運用を委託されているため、受け取った配当を再び株式に投資する必要があります。
これにより約6.8兆円が市場に戻ってくると見られ、特にバリュー株に好影響を与えています。配当を多く支払う株を好むファンドマネージャーは、配当再投資の資金でさらにバリュー株を買う傾向があるためです。
さらに今年は、NTTデータのTOBが成立したことで投資家に約2.3兆円のお金が戻ってくる特別要因があります。また、NTTデータは日経平均採用銘柄でしたが、上場廃止によりロームに入れ替わります。この過程で約4000億円の資金が日経225の他の構成銘柄に流れ込むと予想されています。
Q. 都議選の結果は市場にどう影響しますか?
都議選で自民党が大きく議席を減らしたことから、今後の参議院選挙でも同様の結果になる可能性が指摘されています。過去のデータを見ると、都議選の結果は直後に行われる参議院選挙の結果とある程度連動する傾向があります。
参議院選挙で与党が苦戦するという見方は、短期的には市場にネガティブに捉えられることが多いですが、長期的には必ずしもマイナスとは限りません。選挙を意識した景気刺激策や物価対策が強化される可能性があるためです。また、選挙結果によっては政府内で景気刺激を重視する勢力が強まる可能性もあります。
Q. 関税問題が日米経済に与える影響をどう見ていますか?
トランプ政権下で導入された関税政策は、日本の自動車業界に大きな影響を与えています。日本の自動車メーカーはアメリカ向け輸出単価を下げて対応していますが、これは企業利益を圧迫する要因となっています。

今後は9月1日のモデルイヤー切り替えに合わせて値上げが行われる可能性がありますが、それにより需要が落ち込む懸念もあります。さらに関税の長期化により、円高ドル安の流れが進む可能性もあります。これは2018年の貿易戦争時に中国で起きた人民元安と同様のパターンです。
アメリカでも関税政策の副作用として、銀行の貸し出し態度が慎重になっており、これが将来的に雇用にも影響する可能性があります。週間失業保険の継続受給者数が増加するなど、雇用状況の悪化の兆候も見られます。
Q. 夏から秋にかけての市場見通しはどうですか?
7月初旬までは配当再投資などの好材料から日本株は堅調に推移すると見られます。しかし7月8日頃から出始めるETFの分配金年出のための売りが下押し圧力となる可能性があります。
この過程でバリュー株からグロース株へのシフトが起こりやすく、トピックス型株式が7月初頭でピークアウトする一方、日経225型はその後も持ちこたえる展開が予想されます。
秋以降は関税問題の影響や、アメリカの雇用環境の悪化が懸念材料となりますが、それに伴い米国の金融緩和が早まる可能性も出てきています。市場では9月の利下げが見込まれていますが、状況次第では7月末の利下げもあり得るとの見方もあります。
Q. AIやテック株の今後の見通しはどうですか?
AIテック関連株は、特にNVIDIAの動向が注目されます。NVIDIAは最新半導体「ブラックウェル」の量産に苦労していましたが、最近になって生産が軌道に乗り始めた兆候が見られます。同社の収益性を示す売上総利益率(アラリ)が改善傾向にあり、決算発表後の株価も上昇に転じています。

これは、サーバー向けGPUの量産体制が整ってきたことを示しており、台湾のサーバー製造企業の月次売上も5月から急増しています。AIブームは半導体テスト装置メーカーだけでなく、ハードディスクドライブなど周辺機器メーカーにも波及し始めています。
さらに、10月にはWindows 10やOffice 2016/2019のサポートが終了するため、企業のパソコン買い替え需要も出始めています。AIだけでなくテック株全般が好調に推移する可能性が高いでしょう。
今後1年程度はNVIDIAの「ブラックウェル」世代のGPUで収益を上げる期間となり、テック株全般にとって追い風となるでしょう。ただし来年に予定されている次世代「ルービン」の開発・生産では再び苦労する可能性があります。
