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中東情勢:イランの核施設とは
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2025年6月20日

イスラエルによるイラン核施設への攻撃で、緊迫する中東情勢。イスラエル側の攻撃の焦点となっているイランの「フォルドゥ核施設」とは何か?イランの核開発の現状と、今後の展開は?アメリカ参戦の可能性は?慶應義塾大学の田中浩一郎教授と徹底深掘り。 <ゲスト> 田中浩一郎|中東研究者 慶応義塾大学大学院政策・...
緊迫する中東情勢──イランの核施設攻撃の行方と今後のシナリオ
イスラエルによるイラン攻撃が開始されて以降、中東情勢はさらに緊張を増している。特に注目されているのが、イランのフォルドゥ核施設だ。イスラエル側はこの施設の破壊が不可欠だと主張しているが、実際にはどのような選択肢があるのだろうか。中東情勢に詳しい田中浩一郎氏にイラン核施設の現状と今後の展開について聞いた。

Q. フォルドゥ核施設とは何か、なぜ重要なのか
フォルドゥ核施設はイラン中央部にある第2のウラン濃縮施設で、2009年に国際社会の注目を集めました。この施設の特徴は、山をくり抜いたトンネル内に建設されていることです。通常の地下施設とは異なり、自然の岩盤が天然の防護壁となっています。
この立地条件により、フォルドゥ施設は上空からの空爆に対して極めて高い耐性を持っています。イスラエルが「イランからウラン濃縮能力を完全に奪う」という目標を達成するためには、この施設の破壊が不可欠とされているのです。
Q. イランには他にどのような核関連施設があるのか
イランには他にもナタンズとイスファハンという重要な核関連施設があります。ナタンズはイランで最初のウラン濃縮施設で、平らな場所の地下に設置され、厚いコンクリートで覆われています。地上施設も併設されていましたが、今回の攻撃でどちらも被害を受けたことがIAEA(国際原子力機関)によって確認されています。
イスファハンには大きな都市の中にウラン転換工場があります。この施設はウランの物理的状態を変換する役割を担っています。具体的には、天然ウランからイエローケーキを作り、さらに六フッ化ウランなど様々な形態へとウランを変換する機能を持っています。もしイランが高濃縮ウランを兵器化しようとする場合、ガス状の高濃縮ウランを固体や金属状態に戻すためにもこの施設が使われることになります。
Q. フォルドゥ施設を破壊する方法はあるのか
フォルドゥ施設を完全に破壊するには、現実的に2つの方法が考えられます。

1つ目は特殊部隊を地上から侵入させ、内部で爆薬を設置して破壊する方法です。しかし、地上部隊の派遣は発見・攻撃のリスクが高く、イスラエルにとって大きな犠牲を伴う可能性があります。フォルドゥは人里離れた場所にあるため、潜入工作員が一般人を装うこともできず、目立ちやすいという問題もあります。
2つ目は空からの攻撃です。しかし、山の下にある施設を破壊するには通常の爆弾や一般的な地中貫通弾(バンカーバスター)では威力が不足します。破壊するためには、極端な話、小型核爆弾を使用するか、最大級のバンカーバスターを複数回使用する必要があります。
特に後者の場合、バンカーバスターは非常に大型で重いため、通常の戦闘機では運搬できません。アメリカのB-2ステルス戦略爆撃機のような特殊な航空機が必要になります。イスラエルはこのような戦略爆撃機を保有していないため、アメリカの協力が不可欠となります。
Q. 小型核兵器による攻撃の可能性はあるのか
小型核兵器の使用はイスラエルにとって「最後の切り札」か「アメリカを動かすための脅し」である可能性があります。イスラエルは核兵器の保有について公式には認めていませんが、保有していると広く想定されています。
しかし、核兵器を使用することは多くの問題を引き起こします。まず、イスラエルが核を保有していることを世界に公然と認めることになります。また、核使用という前例のない行動は国際社会に大きな衝撃を与えるでしょう。
そのため、イスラエルの真の狙いは、「アメリカが介入しなければ核を使わざるを得ない」と示唆することで、アメリカの軍事的介入を引き出すことかもしれません。アメリカとしても核使用は避けたいため、イスラエルの「脅し」に応じてB-2爆撃機による通常兵器での攻撃を行う可能性があります。
Q. アメリカの姿勢はどう変化しているのか
アメリカは当初、イスラエルの行動に「積極的には関与していない」という立場を取っていました。しかし、時間の経過とともにバイデン大統領の姿勢に変化が見られます。

その背景には複数の要因があります。イスラエルがイランの防空システムや核関連施設を徹底的に攻撃した結果、イランの反撃能力が著しく低下しています。そのため、アメリカがイランを攻撃した場合のリスク(米軍基地へのミサイル攻撃など)も減少しています。
また、イスラエルはアメリカに対して「今こそイランの核プログラムを完全に終わらせるチャンス」という誘いをかけていると考えられます。さらに、イランの中枢機能が破壊されたことで国内統制が難しくなっており、1979年のイスラム革命以来アメリカと敵対してきたイラン現体制の終焉を促す好機とみなされている可能性もあります。
Q. イランの核開発はどの程度進んでいたのか
イランのウラン濃縮能力は徐々に拡大してきましたが、これはアメリカが2018年にイラン核合意を一方的に破棄したことへの対抗措置でした。イランは段階的に制約を解除し、最終的に60%までウラン濃縮度を高めてきました。
IAEAは60%濃縮ウランの蓄積量増加に警鐘を鳴らしてきました。理論上、イランは60%濃縮ウランを90%(兵器級)まで高めるのに1〜2週間程度しかかからず、約400kgの60%濃縮ウランを保有していると見られていました。これを基に、イランが決断すれば半年から1年以内に核爆弾を製造できる可能性があると計算されていました。
しかし重要なのは、アメリカの情報機関は「イランが核兵器開発を再開している兆候はない」と評価していたことです。2024年3月の米議会証言でも国家情報長官はそう述べており、この見解はイスラエルのネタニヤフ首相の主張と大きく異なっていました。
Q. 今後はどのようなシナリオが考えられるか
現在、主導権はアメリカにあります。イランの反撃能力が大幅に低下したため、事実上アメリカの判断で事態が進展すると考えられます。

特に注目すべき点は2つあります。1つはフォルドゥ施設の破壊をアメリカが支援するかどうか、もう1つはイランの体制転換をどこまで目指すかです。
イスラエルの立場からすると、イスラム共和国体制が続く限り、たとえ今回フォルドゥ施設を破壊しても、将来また核開発が再開される恐れがあります。そのため、体制転換まで一気に進めたいという思惑があるでしょう。
アメリカとしても、1979年以来敵対してきたイラン体制を終わらせる絶好の機会と捉えている可能性があります。今後の展開は、バイデン政権がこれらの選択肢をどう判断するかにかかっています。