健康新常識
肝臓を壊す最大の毒/3人に1人が脂肪肝/20代の健康な肝臓を取り戻す【尾形 哲】
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2025年6月22日

健康に関するこれまでの常識を疑い、健康業界のトップランナーが新たな角度から導き出した「新常識」を紹介する番組。第4回は肝臓外科医・尾形哲氏が教える「健康な肝臓を取り戻す方法」。前編では脂肪肝の意外な原因と脂肪肝にならないコツ・治す方法を解説する。 <ゲスト> 尾形 哲 肝臓外科医/医学博士/長野...
「痩せてるのに脂肪肝」の衝撃 肝臓にとって最大の毒はアレだった
成人3人に1人が「脂肪肝」と言われる時代。肝機能の数値が悪いとお酒をあまり飲まない人でも指摘される。肝臓外科医の尾形哲先生によると、肝臓に最も害を与えるのはお酒ではなく、意外にも「甘いドリンク」だという。20代の健康な肝臓を取り戻すためのポイントを紹介する。

Q. 脂肪肝はどのくらい多いの?
成人の3人に1人が脂肪肝と言われています。日本全国で2500万人から3000万人いると推定されています。世界的に見ても、2024年のレビュー論文によると、世界全体で成人の脂肪肝患者は38%に達していると報告されています。
脂肪肝全体のうち約3割は、肥満のない人、つまりBMI25以下の人です。また、お酒を飲まない「非アルコール性脂肪肝」の方も急速に増えています。
Q. 脂肪肝から肝硬変まで進行するとどうなる?
脂肪肝から肝炎を起こす状態を「脂肪肝炎」と言います。肝臓が壊れ始めている状態です。これが続くと「肝硬変」という、肝臓が硬く変化した状態になります。
特に怖いのは、この進行過程において症状がほとんど出ないことです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり悪くなるまで無症状のまま経過することがほとんどです。むくみや腹水が出るのはかなり進行してからなので、健康診断で指摘されて初めて気づく人が多いのです。
Q. 肥満でないのになぜ脂肪肝になるの?
肝臓の細胞一つ一つの中に脂肪が蓄積することで脂肪肝が起こります。肥満でない人の脂肪肝には、いくつかの特徴があります:
1. 筋肉量が少ない人が多い
2. 糖質の摂取バランスが崩れている
肝臓と筋肉には密接な関係があり、糖は体内で貯蔵できる場所が筋肉と肝臓しかありません。筋肉のない痩せた方は蓄える場所がないため、肝臓や他の場所に脂肪として蓄えられてしまいます。

また、年齢も大きく関係しています。男性は30代から脂肪肝の率が急増します。女性は40代後半まで脂肪肝になる人が少ないのですが、これは女性ホルモン(エストロゲン)の影響です。女性ホルモンが出ている間は、余分なエネルギーは皮下脂肪として蓄積されやすいのですが、40代半ばからホルモンが減少すると脂肪肝のリスクが高まります。
Q. 肝臓にとって最も有害なものは何?
肝臓にとって最大の毒は「甘いドリンク」です。特に液体状の糖分が最も悪影響を与えます。これには以下のものが含まれます:
フルーツジュース(100%果汁でも)
野菜ジュース(甘みのあるもの)
スポーツドリンク
エナジードリンク
砂糖入り飲料全般
砂糖は果糖とブドウ糖でできていますが、このうち果糖が肝臓を直接攻撃することがわかっています。重要なのは、同じ成分でも摂取方法によって肝臓への影響が大きく異なるということです。
例えば、オレンジをそのまま食べる場合とオレンジジュースとして飲む場合では、後者の方が肝臓への負担が大きくなります。これは単位時間あたりの吸収スピードの違いによるものです。
Q. なぜジュースは果物そのものより悪いの?
たとえば、コップ1杯(約200ml)のオレンジジュースは、オレンジ6〜7個分に相当します。ジュースは1分もかからずに飲めますが、オレンジ6個を皮をむいて食べるとなると相当な時間がかかります。
この時間差が重要なのです。ゆっくり摂取すると、果糖は体内の酵素によって最大9割までブドウ糖に変換されます。しかし、ドリンクとして一気に摂取すると、吸収スピードが早すぎて酵素の働きが間に合わず、果糖がそのまま肝臓を攻撃してしまうのです。

果糖は自然界にはあまり存在せず、果物と蜂蜜にしか多く含まれていません。クマが冬眠前に大量の果物を食べるのは、体を脂肪化するためのスイッチとなるからです。人間が甘い飲み物を毎日摂取することは、この「脂肪化スイッチ」を常にオンにしているようなものなのです。
Q. 脂肪肝を改善するにはどうすればいい?
脂肪肝を改善するためのポイントは以下の7つです:
1. 体重を7%減らす:これはガイドラインにも明記されている科学的に証明された方法です。例えば100kgの人なら7kg、80kgの人なら5.6kg減量するだけで肝炎が改善します。標準体重にならなくても効果があります。
2. 飲み物は水・お茶・ブラックコーヒー・無糖炭酸水に限定する:ブラックコーヒーは肝臓に良いとされるエビデンスがあります。無糖炭酸水は満腹感も得られるので、食事前に飲むとより効果的です。
3. ご飯を半分、野菜を2倍に:糖質を完全に0にするのではなく、半分に減らすことがポイントです。糖質を完全に排除すると便秘などの問題が生じやすくなります。
4. 野菜を2倍に増やす:脂肪肝の人は食物繊維の摂取量が一般の人の半分程度という傾向があります。食物繊維を増やすことで腸内環境も改善します。
5. タンパク質を1食20g摂取する:特に筋肉量の少ない人は意識して摂取しましょう。
6. 超加工食品を減らす:カップラーメンなどの加工食品には加糖ブドウ糖液糖が含まれていることが多いです。完全に避けるのは難しいので、減らす方向で調整しましょう。
7. 筋トレを1日10分以上行う:筋肉量を増やすことで、糖の貯蔵場所を増やします。
Q. うこんは肝臓に良いの?
実は、うこんは肝臓の専門医からは推奨されていません。むしろ肝障害を起こした症例が報告されています。肝臓の絵が描かれた商品などで肝臓に良いというイメージがありますが、科学的根拠は十分ではありません。
Q. お酒を飲む人はどうすればいい?
毎日お酒を飲む人の約9割が脂肪肝と言われています。「ハイボールは糖質0だから大丈夫」という考えも誤りです。アルコールそのものが肝臓に負担をかけます。
お酒を飲む人は、以下の点を意識しましょう:
連続飲酒を避け、休肝日を設ける
飲酒量を控える
飲む前に食事をとる
水分をこまめに摂る
これらの習慣をつけるだけでも肝臓へのダメージを軽減できます。最近では、お酒を減らすための薬も開発されており、1ヶ月で飲酒量が平均57%減少したという報告もあります。
Q. 20代の健康な肝臓を取り戻せるの?
肝臓は再生能力が非常に高い臓器です。正常な肝臓なら最大70%まで切除しても再生します。しかし、脂肪肝炎まで進行すると再生能力も低下してきます。
それでも、適切な生活習慣の改善によって、年齢に関わらず20代のような健康な肝臓を取り戻すことは可能です。脂肪が全くない綺麗な肝臓の50〜60代の方も実際に存在します。

肝臓の状態を改善することは、単に肝臓だけの問題ではありません。脂肪肝は糖尿病や心血管疾患、がんなどの「上流」に位置する病気なので、脂肪肝を改善することで、これらの生活習慣病のリスクも下げることができます。