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原油価格 今後のシナリオ
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2025年6月19日

トランプ大統領の「無条件降伏」発言で原油市場が一変。 ホルムズ海峡の封鎖の可能性は?日本経済への影響リスクは?ガソリンはどうなる? 今後の原油価格のシナリオをマーケット・リスク・アドバイザリー共同代表の新村直弘氏に聞いた。 <ゲスト> 新村直弘|マーケット・リスク・アドバイザリー共同代表 日本興業...
原油価格が高騰する2つのシナリオとは?エネルギー専門家が解説する中東情勢の行方
世界の原油市場が不安定な状況になっている。イスラエルとイランの緊張関係が高まり、原油価格が上昇。トランプ大統領の発言も市場を動かす要因となっている。今、何が起きているのか、そして今後のシナリオはどうなるのか。エネルギー市場に詳しい専門家に聞いた。

Q. 現在の原油市場の状況をどう見ていますか?
最近の原油市場は非常に流動的だ。イスラエルの攻撃に対してイランが反撃し、その後イスラエルがイランの制空権を確保したというニュースが出てきた。G7の途中でトランプ大統領が帰国し、イランは「全面降伏すべき」という発言をしたことで市場は大きく反応した。
これは「降伏しなかった場合には何かしらの行動を取る」という含みがあるため、市場で売りポジションを取っていた投資家たちが買い戻しに走ったと考えられる。
Q. この価格変動は投機筋による「当て逃げ」という見方もありますが?
投機家たちの動きは一般に想像されているほど単純ではない。彼らは通常、売る現物を持っていないので、まず「買い」から入るのが基本だ。

今年初めからのポジションの動きを見ると、投機家たちはむしろ「売り」を入れていた。これはトランプ関税の影響で景気が悪くなるという予測と、OPECが増産する見通しから、原油が余ると考えられていたためだ。
しかし中東情勢の緊迫化という予想外の事態が発生し、売りポジションを持っていた投資家たちが買い戻しに走った。売り圧力の方が強かったため、買い戻しの力が強く働き、価格が上昇している状況だ。
Q. WTI、ブレント、ドバイ原油など、様々な原油価格の指標がありますが、どれを見るべきですか?
日本人としては本来ドバイ原油を見るべきだ。ドバイとオマーンという指標があり、地理的にも日本に近く、似たような動きをするため参考になる。ただ、これらの情報はマーケットで取得しにくいことがある。
ブレント原油はイギリス沖で採掘され、輸出を前提として生産されているため、世界の需要動向を正確に反映する指標だ。一方、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)はアメリカの原油で、最近は輸出されているものの、もともとはアメリカ国内向けだった。
メディアでWTIの話が多いのは、情報提供源が証券会社であることが多く、株式市場の中心がアメリカであるため、セットで語られることが多いからだ。中東リスクに関しては、ブレント原油価格かドバイ原油価格を見るべきだろう。
Q. 今後の原油情勢について考えられるシナリオを教えてください
まず第一のシナリオは、現状のニュース通りならば、イランは厳しい状況に置かれている。アメリカが参戦する可能性もあり、イランの核施設は一部破壊された状態だ。アメリカからの圧力もあり、イランが核放棄を合意するという希望的観測が含まれたメインシナリオがある。両国とも弾薬に限りがあり、長期戦は避けたいはずだ。

第二のシナリオは、ホルムズ海峡の封鎖または通行障害が発生するケースだ。ホルムズ海峡は1日2000万バレル、世界の石油供給の約20%が通過する重要な海峡である。原理原則から言えば、イランはホルムズ海峡を完全封鎖することはないだろう。なぜなら、それはイスラエルだけでなく、サウジアラビアやUAEなど他の中東産油国すべてを敵に回すことになるからだ。
ただし、ミサイル攻撃の危険性などから船舶の通行が減少したり、保険料や船舶チャーター料が上昇したりする可能性はある。これは実質的な封鎖と同じような効果をもたらす可能性がある。
Q. もしホルムズ海峡の通行が制限された場合、どのような影響がありますか?
影響は二段階で考える必要がある。まず価格が上昇する段階、次に物資が入手できなくなる段階だ。
ホルムズ海峡の通過量が半分になると、約1000万バレルが市場から消える計算になる。これはアメリカやサウジアラビア、ロシアなどの主要産油国の生産量に匹敵する量だ。この減少分を中東以外の地域で短期間に増産することは不可能だ。
世界の原油生産量は年間でも100万〜150万バレル程度しか増えないため、1000万バレルの減少を埋めるには6〜7年かかる計算になる。そのため、本格的な封鎖となれば深刻な事態になる。
Q. 日本の生活にはどのような影響が出るでしょうか?
ホルムズ海峡の部分的な通行障害が続いた場合、まず原油価格が上昇し、約1ヶ月後にガソリン価格などに影響が出るだろう。通常、ガソリン価格は約3週間前の原油価格に連動して決まるからだ。
もし通行がさらに制限され、原油の供給が大幅に減少した場合、戦略備蓄の放出で数ヶ月は対応できるが、それが尽きると経済活動に直接影響が出始める。電車やバスの減便、工場の操業停止などが起こり、それでも収まらなければ、過去のオイルショック時のように金利を上げて経済活動を強制的に鈍化させる必要が出てくるかもしれない。
Q. 日本のエネルギー安全保障について、今後どうあるべきでしょうか?
まず調達先の分散化が必要だ。アメリカからの調達を増やすことは当然だが、現在日本は原油の約9割を中東から輸入しており、それを短期間で切り替えるのは容易ではない。

さらに日本の製油所は中東産原油の性質に合わせて設計されているため、単に原油を他の地域からのものに置き換えるだけでは対応できない技術的課題もある。
長期的には、中東依存度の低いエネルギー源への転換も重要だ。再生可能エネルギーは安定性に課題があるため、石炭や原子力発電なども含めたエネルギーミックスを真剣に考える必要がある。
また、エネルギー供給だけでなく、需要面も見直す必要がある。人口減少社会の中で、外国からエネルギー源を購入するための資金をどう稼ぐか、また、どの産業にどれだけのエネルギーが必要かを考え直す時期に来ている。
エネルギー調達の困難さを認識し、あらゆる前提条件を取り払って柔軟に考えることが重要だ。