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イスラエル・イラン情勢:なぜ攻撃?今後の展開は?
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2025年6月17日

緊迫するイスラエルとイランの関係。なぜ核施設への攻撃が行われたのか?アメリカとイランの核交渉の行方は?すでに戦争状態と見ていいのか?地経学研究所の鈴木一人所長が、両国の現状と今後の展開、そして国際社会への影響について徹底解説。 <ゲスト> 鈴木一人|地経学研究所 所長 東京大学公共政策大学院の教授...
イスラエルによるイラン攻撃の背景と今後の展開
中東情勢が再び緊迫化している。先週、イスラエルがイランに対して軍事攻撃を実施し、イランも反撃。両国間の緊張が一気に高まった。なぜこのタイミングでイスラエルはイランを攻撃したのか?今後の展開はどうなるのか?地経学研究所の鈴木一人所長に詳しく聞いた。

Q. イスラエルはなぜこのタイミングでイランを攻撃したのですか?
いくつか理由がありますが、最も重要なのはアメリカとイランの核交渉に関係しています。日曜日(15日)にアメリカとイランの間で核交渉が進展する予定でした。おそらく核交渉の合意に向けた文書が出される見込みだったのです。

イランは制裁解除を強く望んでおり、交渉に積極的でした。一方、トランプ政権は、バイデン政権が実現できなかった核合意の再構築を自らの功績にしたいという思惑がありました。
しかし、イスラエルはイランの核能力を完全に排除したいと考えています。アメリカがイランの核能力を一部認める形で交渉を進めようとしていることに強く反発し、この交渉を妨害する意図があったと考えられます。
また、昨年4月と10月にイランとイスラエルの間でミサイル攻撃の応酬がありました。イスラエルは昨年10月の攻撃でイランの防空体制にダメージを与えており、その回復前に攻撃を実施したいという思惑もあったでしょう。
さらに、イスラエルはガザのハマスやレバノンのヒズボラとの戦闘で相手の抵抗力を弱めています。シリアのアサド政権が不安定化したことで、シリアを拠点としていたイラン部隊もイスラエルへの攻撃が難しくなりました。イスラエルにとって、イランの反撃能力が弱まった今がチャンスだと判断したと考えられます。
Q. アメリカとイランの核交渉はどのような状況だったのですか?
アメリカとイランの核交渉は進展しつつありました。トランプ大統領は2018年に前回の核合意から離脱し、イランに制裁を課しました。目的はイランのウラン濃縮能力を完全になくすことでしたが、結果は逆効果で、イランは濃縮ウランの蓄積を増やしてしまいました。
バイデン政権は交渉再開を試みましたが成果を上げられず、トランプ大統領としては、自分が種をまいた問題をバイデン政権ができなかったところを自分が実現するという功績を残したいという意図があったと思われます。
トランプ大統領は「ピースメーカー」としての評価を得たいという思いがあり、ガザでの停戦やウクライナでの停戦といった取り組みが実を結ばなかった中で、イラン問題の解決を目指していました。
交渉は4回行われ、5回目を予定していました。トランプ大統領の発言からは、核兵器保有は認めないものの、ウラン濃縮については認める可能性を示唆する内容もありました。イランも受け入れられる内容であり、合意が成立する可能性は高かったと思われます。
Q. イスラエルの攻撃はどのようなものだったのでしょうか?
イスラエルの攻撃は大きく3種類ありました。
第一波は、イランの精鋭部隊である革命防衛隊の指導部を狙ったピンポイント攻撃でした。彼らが住むマンションの居室だけを狙うような精密なミサイル攻撃が行われました。これはハマスやヒズボラのリーダーを攻撃した時と似ており、高度な情報収集力を駆使して革命防衛隊の能力を削ぐことが目的でした。

第二波は核施設への攻撃です。イランの核施設は地下深くに設置されているため、上空からの攻撃だけでは完全に破壊することは難しいとされています。しかし、この攻撃は核施設の上部を破壊することで、将来アメリカとイランの間で合意ができた場合に予定されるIAEA(国際原子力機関)の査察を困難にする効果があります。つまり、仮に合意が成立しても実質的に機能しないようにする意図があったと考えられます。
第三波はガス田や製油所などエネルギー施設への攻撃でした。これらは革命防衛隊の資金源になっていると考えられている石油・ガスの輸出を妨害するためのものです。特に中国への輸出を阻止することで、革命防衛隊の資金源を断つ目的があったと思われます。
Q. イランの反応は昨年の応酬とどう違ったのですか?
今回のイランの反応は昨年と比べて重大な違いがありました。
イランは、飛行速度の遅いドローン約100機と、12分でイスラエルに到達する弾道ミサイルを組み合わせて攻撃しました。ドローンはイスラエルの防空システム「アイアンドーム」によって迎撃されることを想定していたと思われます。
最も大きな違いは、昨年の攻撃がイスラエルの軍事基地を狙った「対基地攻撃」だったのに対し、今回はテルアビブやハイファなどの都市部を狙った「対価値攻撃」だったことです。民間人を含む人命を奪うことを目的とした攻撃に転換したと言えます。実際、イスラエルの都市部に着弾し、被害を出しています。
Q. イスラエルとイランは現在、戦争状態にあると言えますか?
イスラエルの最初の攻撃自体が交戦状態を意味しています。アメリカとイランの交渉を阻止するための攻撃であり、国際法上の合法性はほとんどないと言わざるを得ません。イランが核兵器を保有しているわけでもないので、イスラエルが主張する「自衛のため」という理由は説得力に欠けます。

ただし、一般的に想像される戦争、例えばロシアとウクライナのような地上戦とは異なります。イスラエルとイランの間には約1,000kmの距離があり、お互いの国に軍隊を派遣して地上戦を行うことは考えにくいです。今後も考えられるのは、ミサイルの応酬が続く状態です。
Q. この紛争の落とし所はどこにあるのでしょうか?
イスラエルの当面の目的はアメリカとイランの核交渉を阻止することであり、その点ではある程度成功したと言えます。
最大のポイントは、アメリカがどこまで関与するかです。アメリカが関与しなければ、ミサイルの応酬が続くことになります。イスラエルはイランの現体制の打倒を長期的な目標としていますが、単独ではそれを実現することは困難です。アメリカとの協力が必要ですが、それも現実的ではありません。
両国間で正式な停戦交渉が行われる可能性は低いでしょう。むしろ、これまでの関係性から生まれた「相場感」のようなものがあり、「これをやったら報復する」「これをやらなければ打ち止めにする」といった暗黙の了解で決まっていくと思われます。
死者が出ている状況では何もしないという選択肢はなく、イスラエルは何らかの報復を行うでしょう。それがイラン側に甚大な被害を与えなければ、イランもそこで打ち止めにする可能性があります。ただし、これは戦争状態が終わったということではなく、単に一時的に攻撃が止まっている状態であり、緊張状態は継続します。
Q. この紛争が中東地域全体に広がる可能性はありますか?
現時点では、紛争が地域全体に拡大する可能性は低いと考えられます。
湾岸諸国は、イスラエルとガザの戦いに関して比較的中立的な立場を取っています。イスラエルと国交を持つUAEやバーレーンも同様です。サウジアラビアもイスラエルの攻撃を非難しており、湾岸諸国はイスラエルの行動に対してネガティブな反応を示しています。
イスラエルとしては、ミサイル攻撃を行う際に他国の上空を通過する必要があるため、これらの国々との関係を良好に保ちたいという思惑があります。
よく話題に上るホルムズ海峡の封鎖についても、イランには現時点でそれを行う理由がありません。イランにとって、自国の味方となる可能性のある国々を敵に回すような行動は合理的ではありません。アメリカが中立的な立場を取っている状況で、アメリカや日本に影響を与えるホルムズ海峡の封鎖を行う可能性は極めて低いと考えられます。