PIVOT TALK BUSINESS
速報解説 イスラエル・イラン紛争
(610)
1.2万回視聴
2025年6月16日

攻撃の応酬が激化するイスラエルとイラン。ネタニヤフの狙いとは何か? これから起きるであろう2つの有力シナリオを、経済アナリストのジョセフクラフト氏に聞いた。 <ゲスト> ジョセフ・クラフト|経済アナリスト/東京国際大学副学長 1986年カリフォルニア大学バークレイ校卒業後モルガン・スタンレーNYK...
イスラエル・イラン紛争、解決の行方は?専門家が読み解く中東の最新情勢
今、目まぐるしく動く国際情勢の中でも、特に注目されるのがイスラエルとイランの対立です。この数週間、両国の緊張は急速に高まり、イスラエルによるイラン攻撃が世界に衝撃を与えました。この紛争の背景には何があるのか、そして今後どう展開していくのか。経済アナリストで東京国際大学副学長のジョセフ・クラフト氏に詳しく解説してもらいました。

Q. イスラエルとイランの対立は突然始まったものなのでしょうか?
これは10数年前から警戒されていたリスクです。2012年の国連総会ですでに当時のネタニヤフ首相がイランの核兵器開発に警鐘を鳴らしていました。この時点からイスラエルは非常に警戒していたのです。
2018年のトランプ政権時代には脅威がさらに増し、イスラエルは攻撃を望んでいました。当時、トランプ政権はイランとの核兵器交渉を進めて合意するからイスラエルは攻撃するなという裏取引があったようです。しかし、その交渉が難航し、イスラエルに攻撃の口実を与えてしまいました。
Q. イスラエルはイランに対してどのような攻撃を行ったのですか?
イスラエルはまず軍の幹部や科学者の暗殺、核施設への攻撃、首都テヘランへの攻撃、そして直近ではミサイル倉庫や発射インフラを大々的に攻撃しています。

これには2つの狙いがあります。1つはイランの核兵器開発を阻止すること。もう1つは裏の目的として、現在のイラン政権の交代を促すことです。イスラエルとしては「今やらないともう2度とチャンスが来ないかもしれない」という思いで非常に前のめりになっています。
Q. アメリカはこの紛争にどう関わっているのですか?
アメリカの反応は興味深いものです。攻撃直後、ブリンケン国務長官は「アメリカは関与していない」「イスラエルの一方的な行動だった」「我々はイランへの攻撃に関与しておらず、イランは米国の利益や国民を標的にすべきでない」と声明を出しました。つまり「我々は関係ない、我々を巻き込むな」というのがアメリカの最初の反応でした。
同時にバイデン大統領もSNSで「イランに何度も取引のチャンスを与えた」「ディールをとにかくやるべきだ」「イラン合意は結ばなければならない、手遅れになる前に」と発信しています。今回の攻撃を機に、もう一度核合意の協議を再開したいという意図が見えます。
Q. 米イラン核交渉はなぜ難航したのでしょうか?
おそらくイラン側の計算が外れたのでしょう。もう少しアメリカに対して条件を出せば有利な条件を引き出せると目論んで、なかなか合意に至らなかったようです。そうしているうちにアメリカも半ば諦め気味になり、そこを「待ってました」とばかりにネタニヤフ首相が動き出したのではないでしょうか。
イランとしては「アメリカが交渉している最中はイスラエルは絶対に攻撃しない、アメリカが盾になる」と計算したのですが、それが間違っていたということになります。
Q. バイデン政権はこの中東問題にどの程度関わりたいと考えているのでしょうか?
実はバイデン政権というかバイデン大統領のイスラエルに対する影響力が弱まってきています。イスラエル国内ではネタニヤフ首相も極右派政党の支持で政権を維持している部分があり、彼らはとにかくイランを攻撃して脅威をなくしたいという圧力が高まっていました。

バイデン政権になって最初のうちはバイデンが支持してくれると期待していたものの、バイデン氏が「待て」と言い、核合意の交渉を進めようとしました。しかし、イスラエルとしては、たとえアメリカとイランが核開発合意をしても、イランのことは信用できないというスタンスです。本音としては核開発合意は望んでおらず、今回の交渉の難航を口実に、アメリカの言うことを聞かずに行動したのです。
Q. バイデンとネタニヤフの関係も冷え込んでいるのでしょうか?
確かに両者の関係は以前ほど親密ではなくなっています。実は先月バイデン大統領が中東訪問をした際、中東に行ったにもかかわらずイスラエルには寄らなかったのです。
通常なら必ずイスラエルを訪問し、ネタニヤフ氏と会談するものですが、今回はそれを避けました。これは両者の思惑の違いによって関係に亀裂が生じている証拠と言えるでしょう。
Q. 今回のイスラエルの攻撃は戦略的に合理性があるのでしょうか?
イスラエルとしては、攻撃する大義名分とチャンスを長く探っていて、今がその時だと判断したのでしょう。実際、イスラエルはモサドなどの情報機関を使って長期的に準備してきました。
特筆すべきは、イランの軍幹部や科学者が標的になったということは、彼らの居場所の情報が漏れていたことを意味します。昨年もハマスの攻撃を受けた後、イスラエルは一部のイラン軍幹部を暗殺していますが、イラン側はその教訓を今回全く活かせていないのは驚きです。

戦力や軍事力全体ではイランの方が大きいものの、テクノロジーやインテリジェンスの面ではイスラエルがはるかに優れています。軍幹部が暗殺されることでイラン側の軍の体制も揺らいでいます。
Q. この紛争の今後の展開はどうなると予想されますか?
今、イランは切羽詰まっています。彼らは大義名分としてイスラエルを攻撃したものの、これを理由にイスラエル側がさらに強力な攻撃を仕掛けてきています。このまま続くとイランは相当なダメージを受け、政権が崩壊する可能性すらあります。
そこでイラン側はカタールを通じて仲裁を求めているとの情報があります。今後の展開としては2つのシナリオが考えられます。1つは、近い将来カタールの仲介でアメリカとイランの協議が始まり、概ねアメリカ側の提案をイランが受け入れる形でイスラエルの攻撃が止まるというもの。もう1つは、これができない場合、イスラエルの攻撃が激化してイラン政権の崩壊に繋がる可能性です。
Q. イランがアメリカの提案を受け入れたとして、ネタニヤフ首相はそれで納得するのでしょうか?
おそらく納得しないでしょう。しかし、合意が成立した後も攻撃を続けるとなると、国際社会やアメリカからも批判を受け、国内の支持も失いかねません。そうなるとネタニヤフ政権自体が崩壊するリスクがあります。
そのため、ネタニヤフ首相は焦って攻撃を前倒しし、交渉合意に至る前にできるだけイランの現政権にダメージを与えたいと考えているでしょう。目先は攻撃が激化するかもしれませんが、その後に交渉合意という展開が見込まれます。
つまり、今週中にさらに状況が激化し、その後2〜3週間以内に合意してイスラエルも攻撃を引くか、あるいはイラン政権が崩壊するまで攻撃が続くか、この二択になりつつあります。
Q. イスラエルモサドの情報収集能力はどの程度のものなのでしょうか?
モサドは非常に優秀です。特に中東地域に関しては、その情報収集能力はアメリカをも上回る可能性があります。イラン国内にも多くのスパイを送り込んでいると考えられます。
モサドの戦略は長期的で、場合によっては子供の頃から育てるというアプローチも取るため、イラン側にとって見極めるのは非常に困難です。軍事力、テクノロジー、情報収集において、イスラエルはイランより「2枚も3枚も上手」と言えるでしょう。
Q. 中東地域の平和は今後期待できるのでしょうか?
現状では一時的に安定化したとしても、長期的には不安定な状況が続く可能性が高いです。ただ、もしイランの核開発協議がうまくいけば、次のステップとして中東全体の和平を担保する動きにつながるかもしれません。
皮肉なことに、イランの計算ミスによって、最終的に彼らはアメリカ側の提案を受け入れざるを得ない状況に自らを追い込んでしまったと言えます。一旦この紛争が落ち着けば、イラン国民の怒りの矛先は現政権に向けられる可能性もあり、イラン政権自体も非常に不安定な状況に置かれています。